
日本精神神経学会
会員各位
2023年1月26日、世界精神医学会(World Psychiatric Association、WPA)より、日本精神神経学会を含めた加盟学会に対し、DISCUSSION DOCUMENT MENTAL HEALTH AND THE DEATH PENALTY(※資料1、資料2)が送付され、見解を述べるよう求められました。
同DISCUSSION DOCUMENTにおいて、WPAはこれまで精神科医は死刑執行や死刑適応能力の鑑定に関与すべきでないとの立場をとってきましたが、今回これを発展させ、精神疾患や発達障害、知的障害のある人(以下「精神障害者等」とする)への死刑の適用とその執行に反対する立場表明を採択することを提案しています。根拠としては、死刑が多くの国で廃止されているにもかかわらず今なお執行し続けている国が少なからず存在していること、様々な専門組織が死刑に反対していること、死刑が精神障害者等に差別的に適用されていること、死刑囚の中にも精神障害者等の割合が高いこと、国際連合の関連機関でも精神障害者等への死刑適用について問題視する指摘が複数出されていること、各国の国内法でも精神障害者等への死刑の減刑や執行の制限が規定されていること、こうした規定にもかかわらず精神障害者等が死刑執行された例があること、精神科医は矛盾に立たされる可能性があること等が挙げられています。
当学会理事会は、法委員会および医療倫理委員会に検討を指示しました。両委員会はそれぞれの委員会での議論および協議を経て、返書を作成しました。理事会はこれを承認し、2024年12月24日にWPAに送付しました(※資料3、資料4)。なお、同回答書内でも言及していますが、両委員会の議論の最中の2023年9月30日、WPAはPOSITION STATEMENT を発表しました。
※
資料1:加盟学会宛てメール_WPA Background document Mental health and the death penalty
資料2:WPA Discussion Document Mental Health and the Death Penalty
資料3:WPAヘの返書_英語
資料4:WPAへの返書_英訳前の日本語
2025年6月
日本精神神経学会 法委員会・医療倫理委員会