日本精神神経学会は1997年5月に「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」を発表し、社会状況の変化と臨床的、科学的知見の集積に対応してこれまで3回の改訂を行いました。2011年に実施された第3回目の改訂では、思春期例に対する二次性徴抑制療法、18歳未満に対するホルモン療法について検討されました。この改訂後、若年者の受診は増え続け、身体的介入だけではなく心理社会的な対応についても追記すべきであるという機運が生じてきました。また、2013年にはアメリカ精神医学会の診断基準「精神障害の診断・統計マニュアル」が DSM-5に改訂され、2019年には世界保健機関WHOの「国際疾病分類」が第11版に改訂されています。いずれの診断基準でも性同一性障害 (gender identity disorder)という疾患名は廃止され、その概念も変化してきています。特に国際疾病分類では、所属するカテゴリーが「精神及び行動の障害」から、新たに創設された「性の健康に関する状態」に移動され、精神疾患ではなくなりました。その背景には、セクシュアリティやジェンダーの扱いについて、国際的にも様々な議論が重ねられ、医療や社会制度が刻々と変化している状況があります。我が国においても、2023年、2024年には「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」の一部が違憲状態ないし違憲の疑いがあると判断される等、社会情勢が大きく変化しています。また、2018年から性別適合手術への保険適用が認められる一方で、ホルモン療法にはいまだに保険が適応されていません。これらを念頭に、改訂第5版ガイドラインを作成するにあたって、日本精神神経学会・性別不合に関する委員会は、学際的な学会である 日本GI(性別不合)学会(旧名:GID(性同一性障害)学会)との共同作業で議論を重ねて参りました。疾患名の変更により、本ガイドラインも「性別不合に関する診断と治療のガイドライン(第5版)」と改名しています。
※ガイドラインの本文は以下よりご参照ください。
性別不合に関する診断と治療のガイドライン(第5版) (2024年8月21日)(591KB)
①診断基準の改訂(DSM-5、ICD-11)への対応
②小児期における割り当てられた性への違和感に対する評価と対応
③精神科医療の関わりに関する改訂
④ホルモン療法および二次性徴抑制療法における使用薬剤と用量用法の追加
⑤二次性徴抑制療法に関する改訂
①二次性徴抑制療法又は15歳以上18歳未満の者にホルモン療法を開始する場合、
②二次性徴抑制療法を中止する場合には、
以下に掲載する所定の報告書に必要事項を記載の上、日本精神神経学会事務局宛てにお送りください。
「①二次性徴抑制療法および18歳未満に対するホルモン療法の開始に関する報告書」(改訂版)(18KB)
「②二次性徴抑制療法の中止に関する報告書」(14KB)