公益社団法人 日本精神神経学会

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学会案内|About Japanese Society of Psychiatry

理事長就任に際して

更新日時:2021年7月15日New

 この度、本学会理事長に就任いたしました。本学会の長い歴史と現在直面する多くの課題を考えますと、その重責に身が引き締まる思いです。

 本学会の基本理念は、1.倫理的配慮のもと精神医学の発展に寄与する、2. 患者の人権を尊重して、精神保健・医療・福祉の質的向上に貢献する、3. 会員相互の研鑽・点検の機能を果たすことです。この背景には、精神科医療の質を向上させて、当事者・家族からの精神科医療に対する信頼を得ることが、一般社会におけるスティグマを減らし、精神科医療への早期アクセスを促進し、結果として精神保健や福祉の向上につながるという考えがあります。

 本学会は、長年にわたる会員の不断の努力によって、「精神医学の発展」では、レジストリー研究をはじめとする精神医学研究の推進やそれに伴う倫理指針の整備が、「会員相互の研鑽・点検」では、専門医制度の整備、学会の国際化、和文誌や英文誌の充実、ガイドライン事業などが着実に進められてきました。

 一方、「精神保健・医療・福祉の質的向上」については、これまでも活発に議論が行われてきましたが、まだ多くの課題が残されています。主な課題には、精神科医療の先駆的な取り組み・技法・技術の普及、精神科医を含むマンパワーの拡充、長期入院・慢性療養者の生活の質の向上、精神科救急を含めた精神科受診アクセスを向上させるための地域ネットワークの充実、隔離・身体的拘束の問題を含む人権尊重などが挙げられます。解決は容易ではありませんが、本学会がそれらに立ち向かう強い意志と道筋を示していくことが重要です。そのためには、精神科医療における当事者・家族とのパートナーシップを基本として、精神科医療の質の向上、精神的な健康推進や疾患予防などの精神保健についての取り組みを積極的に前進させるとともに、国民に向けた情報発信や専門職としてのオピニオン、国への提言なども必要と考えます。

 「精神医学の発展」では、上記のレジストリー研究やトランスレーショナル研究の推進に加えて、日本では遅れている精神保健に関する実態調査を含めた疫学研究にも着手していく必要があります。また、「会員相互の研鑽・点検」に関連して、専門医制度ではサブスペシャリティの認定、専門医試験では出題元となる精神科テキストブックの編纂、ガイドライン事業では出版事業を含めた普及啓発、学会誌では英文姉妹誌の創刊、和文誌の英文翻訳化などが今後の課題です。

 以上のように、本学会には数多くの課題が山積していますが、会員相互の十分な議論を通して、解決に向けた取り組みを少しずつでも前進させたいと考えます。今回、大幅に増えた女性代議員や若手理事が学会に新風を吹き込み、これまでの経験知とうまく融合しながら、さらなる発展につながることを期待しています。会員皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

日本精神神経学会理事長
久住一郎

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