公益社団法人 日本精神神経学会

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専攻医募集に関する緊急声明 (第3報)

更新日時:2020年3月23日

令和2年3月21日

一般社団法人 日本専門医機構  
理事長 寺本 民生殿 

公益社団法人 日本精神神経学会  
理事長 神庭 重信 

専攻医募集に関する緊急声明 (第3報)

 日本精神神経学会(以下、本学会)は、厚生労働省医師需給分科会が算出した「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数」を根拠とした都道府県別診療科ごとの2021年度シーリング案(資料1)に強く反対する。

 本学会は、これまでも一貫して、「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数」(以下、「将来必要な医師数」)を根拠として、貴機構が都道府県別診療科ごとに専攻医募集定員を決めることに反対してきた(資料2資料3)。 本学会は貴機構および厚生労働省と何度も交渉を重ね、また精神科関連七団体(精神科七者懇談会 以下、七者懇)は、必要精神科医師数の算出方法には数々の過誤が含まれており、不正確なものであることを詳細な資料としてまとめ、前厚生労働大臣宛てに提出した(資料4)。貴機構で行われた令和1年8月1日第1回 2021年度専門医養成数に関する検討協議会のヒアリングにおいて、貴機構から、公的医療を担う精神科医療の特殊性を含めた具体的な数字を提出するように要請されたため、本学会の専攻医募集定員に関する検討班では、必要精神科医師数を独自に算出し、これを提出した(資料5)。その結論は、「精神保健指定医業務等を勘案すると、『将来必要な医師数』を15%から20%増やす必要がある」というものである。

 しかるに、今回の第5回2021年度専門医養成数に関する検討協議会全体会議で提出された、2021年度の専攻医募集定員(資料1)をみると、本学会、七者懇の意見が全く取り入れられていないばかりか、東京都、福岡県の定員がさらに激減され、新たに秋田県や島根県にもシーリングがかけられている。秋田県、島根県は自殺率が高く広域の医療圏を有する県である。ここに象徴的に現れているように、地域の実情を全く考慮することとなく、シーリングをかける手法には強い憤りさえ感じる。

 ここではすでに指摘した「将来必要な医師数」が含む過ちの多くを繰り返さないが、人口あたりの精神科医の比率は、2016年にOECD36カ国中26位と低位であるにもかかわらず、「将来必要な医師数」では、現状でもすでに日本の精神科医は過剰であると算出されている。このことは精神科医療の軽視以外の何物でもない。

 また、2024年に必要とされる見込み数(資料1)は根拠の乏しいものであり、これをもって毎年のシーリング数を算出することにも強く抗議する。社会状況・経済状況・産業構造とともに疾病構造は変化する。実際に、患者調査によれば、精神疾患の患者数は、1999年には204万人であったのが、2014年には392万人と約2倍に増加している。うつ病、認知症、発達障害の増加に加え、ギャンブル依存、児童虐待、高ストレス者の面談、災害派遣精神医療、自殺予防、ひきこもりなど、精神保健福祉分野の要請は多様化し増大している。

 このように精神科医療のニーズが急増する状況が生じているにもかかわらず、良質な専門医の育成に大きくバイアスがかかれば、精神科医療とりわけ精神科救急体制の維持、さらには国民の精神保健の向上に重大な影響を与えることが危惧される。

 以上により、本学会は今回の「将来必要な医師数」を根拠とした都道府県別診療科ごとのシーリングに強く反対し、再度議論する場を設けることを要求する。

以上

過去資料

2020年度専攻医募集シーリング案(専門医機構からの提示)【精神科】(113KB)

平成31年度専門研修募集におけるシーリング数について(厚生労働省医政局医事課説明資料4月11日)(4MB)

診療科ごとの将来必要な医師数の見通し(厚生労働省医政局医事課説明資料4月11日)(7MB)

2020年度シーリング改定案(日本専門医機構提示資料4月26日)(306KB)

連携プログラムについて(日本専門医機構提示資料4月26日)(304KB)

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