公益社団法人 日本精神神経学会

English

学会活動|Activities

国際学会発表賞(受賞者一覧)

更新日時:2023年12月22日


2023年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】互 健二

【発表概要】
・国際学会名:Alzheimer’s Association International Conference (2023)
・発表演題名:Development and Comparison of a Novel Mid-Region Directed p-Tau 181 Assay with Tau Positron Emission Tomography in Alzheimer's Disease
・発表内容:
超高感度ELISAで測定する血中リン酸化タウ(p-tau)は、アルツハイマー病(AD)の病態を早期から検出する血液バイオマーカーとして有望視されている。一方、これらのアッセイで測定されるp-tauは、必ずしも脳内タウ病変と相関しない。そこで本研究では新規アッセイ(QSTアッセイ)を開発し、その有用性について検討した。アミロイド・タウPET検査を行った、健常者40名、ADスペクトラム48名、進行性核上性麻痺50名、その他の前頭側頭葉変性症26名の血中p-tauを、QSTアッセイと従来のアッセイでそれぞれ測定した。結果、QSTアッセイで測定した血中p-tauは従来のアッセイと比較して、脳内アミロイドの有無の弁別能は劣るものの、ADのタウPETと強い相関を示した。さらにQSTアッセイはタウPETと同様に認知機能障害との相関を認め、ADのタウ病変のサロゲートマーカーとして有望であることが示された。


【受賞者】内海 智博

【発表概要】
・国際学会名:SLEEP 2023, the 37th annual meeting of the Associated Professional Sleep Societies
・発表演題名:Association of Subjective-Objective Discrepancy in Sleep Duration with All-Cause Mortality in Community-Dwelling Older Men
・発表内容:
本研究は、不眠症で一般的であるが、健常人においても生じる主観的な睡眠時間と客観的な睡眠時間の乖離が、総死亡に与える影響を調査した。米国多機関コホート研究MrOS Studyに参加した一般高齢男性2,674人のデータを用い(平均年齢76.3歳、平均追跡期間10.8年、追跡期間中の死亡者1596人)、乖離を評価する「誤認識指数(MI)=(終夜ポリソムノグラフ検査(PSG)で測定した客観的睡眠時間-PSG翌朝に取得した主観的睡眠時間)/客観的睡眠時間」と総死亡の関連を解析した。MIは総死亡と負の関連があった。さらに主観的な睡眠時間を過大評価する群は高い死亡率を示したが、過小評価している群は総死亡に影響を与えなかった。そのため主観的に睡眠時間を過大評価することは、高齢男性における総死亡の危険因子となり、臨床上・疫学上重要な指標となる可能性がある。今後は本現象の背景となる生理学的メカニズムの研究が必要である。


【受賞者】山田 悠至

【発表概要】
・国際学会名:23rd World Psychiatric Association; World Congress of Psychiatry
・発表演題名:Electrode montage for transcranial direct current stimulation governs its effect on symptoms and functionality in schizophrenia.
・発表内容:
統合失調症における認知機能障害は、患者の社会機能に大きく影響する。その治療法として、低侵襲性脳刺激法の経頭蓋直流刺激(tDCS)が注目される。我々はこれまで、左背外側前頭前野(DLPFC)へのtDCSにより統合失調症の日常生活技能の改善効果を報告する一方、左上側頭溝(STS)を陽極部位に設定することで、同疾患の社会認知機能障害が改善することを世界に先駆けて明らかにした。本研究では、tDCSの陽極刺激部位(DLPFCとSTS)の違いにより精神症状の改善効果がどのように異なるかを検討した。その結果、日常生活技能(UPSA-Bで測定)と神経認知機能(BACSで測定)は、DLPFCへの陽極刺激でのみ有意な改善を認めた。一方、DLPFC、STSいずれの陽極刺激によっても、総合精神病理(PANSSで測定)の有意な改善効果を認めた。以上から、臨床症状の特徴に応じたtDCSの陽極刺激部位の選択が、統合失調症患者に有用と考えられた。
 

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】山室 和彦

【発表概要】
・国際学会名:The 11th Congress of The Asian Society for Child and Adolescent Psychiatry and Allied Professions
・発表演題名:Effects of child abuse on children: From basic research to functional brain imaging and clinical practice
・発表内容:
児童虐待が与える影響は、虐待による直接的な被害にとどまらず、子どもの心身の発達に大きな影響を与え、それが生涯にわたって続くことが明らかになっている。現在では、児童虐待が青年期・成人期の精神疾患の危険因子であることが知られており精神医学の病因論においても重要な課題として認識されている。本シンポジウムでは、まずマウスを用いた基礎的研究により児童虐待が脳機能に及ぼす影響を明らかにし、頭部MRI検査や事象関連電位から、児童虐待を受けた児童が成人した後も脳構造や脳機能に影響があることを示す。最後に、児童虐待における臨床と福祉の実際の取り組みを紹介する。このように、基礎研究、脳機能イメージング、臨床・福祉と異なるスタンスをとる各分野の専門家が、最先端の脳科学技術を用いて得られた児童虐待に関する最新の知見や介入方法を紹介し、臨床と基礎研究を同時に推進するために必要な考え方や環境について議論する。


【受賞者】加藤 秀一

【発表概要】
・国際学会名:The 11th Congress of The Asian Society for Child and Adolescent Psychiatry and Allied Professions
・発表演題名:Child and adolescent psychiatry training system and update situation in Asian countries
・発表内容:
アジア諸国において、児童思春期精神科医療の大きな需要に対して医療体制が十分でないという状況にはいくつかの理由があり、その一つが専門家不足である。児童精神科医の育成により、需給の差を小さくできる可能性がある。インドネシアでは、4年間の精神科研修に続いて2年間の児童精神科研修が行われる。日本では、2021年に全国で統一された児童精神科研修プログラムが始まった。小児科あるいは精神科の研修後に研修を始められる。台湾では、4年間の精神科研修に続いて、1年間の児童精神科研修が行われる。タイでは、初期研修後に直接4年間の児童精神科研修を行う方法と、小児科あるいは精神科の研修後に2年間の児童精神科研修を行う方法がある。このシンポジウムでは、インドネシア、日本、台湾、タイの4カ国における児童精神科研修制度の概要および課題について共有し、よりよい専門家育成の体制について議論を行う。

2022年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】越山 太輔

【発表概要】
・国際学会名:22nd World Psychiatric Association (WPA) World Congress of Psychiatry (WCP)
・発表演題名:Brain network alternations and clinical features in psychosis
・発表内容:
脳は、複雑な脳機能を維持するために重層的なネットワークシステムで構成されており、精神疾患と脳内ネットワークの変化との関係を示す報告が近年多く見られる。統合失調症と双極性障害では、神経伝達機構の乱れにより、脳内ネットワークが障害されている。さらに、双極性障害では、躁病エピソードとうつ病エピソードにおけるネットワークの障害パターンは異なっている。また、これらの疾患では、臨床的特徴も脳内ネットワークの変化と関連していることが明らかになった。例えば、幻聴は聴覚ネットワークと関連し、気分症状は前部大脳辺縁系ネットワークと関連している。したがって、統合失調症や双極性障害において、脳内ネットワークの変化が治療のターゲットになる可能性がある。本シンポジウムでは、統合失調症や双極性障害における脳内ネットワークの変化の現状と今後の展望を議論することを目的とする。


【受賞者】水井 亮

【発表概要】
・国際学会名:The 9th Mismatch Negativity conference
・発表演題名:Mismatch Negativity in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder
・発表内容:
注意欠如・多動症(ADHD)は、年齢不相応な不注意、多動性、衝動性、および1つ以上の認知過程の異常によって特徴づけられる。事象関連電位は、測定が容易で非侵襲的であるため、認知機能の生理学的指標として一般的に使用されている。ミスマッチ陰性電位(MMN)は、聴覚環境の変化の前注意的処理過程に関連する指標と推定される事象関連電位成分である。過去の我々の研究では、小児期および青年期ADHDでMMN振幅の低下を認め、症状の重症度を反映することが示唆された。さらに、小児期ADHDにおけるメチルフェニデートを用いた薬物治療前後のMMNを測定した結果、頭頂部と右中心部における振幅の増大を認め、またアトモキセチンが小児期ADHDのMMN振幅を正常レベルまで増大させることも報告されている。これらの知見から、小児期ADHDにおける抗ADHD薬による薬物治療の効果判定にMMNが有用である可能性が考えられる。

シンポジウム組織発表部門

該当者無し
 

2021年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】市倉 加奈子

【発表概要】
・国際学会名:The 22nd World Congress of Psycho-Oncology & Psychosocial Academy
・発表演題名:Difficulty in providing psychological care in terminal phase between oncological and cardiovascular clinicians: Japanese nationwide questionnaire survey
・発表内容:
終末期心不全患者において精神症状は重篤な問題であるが、がんと比較すると精神的支援の提供は不十分と言える。本研究では、日本全国のがん診療連携拠点病院およびICD認定施設の医師・看護師にアンケート調査を配布し、循環器領域の医療者が終末期の精神的支援に対して感じる困難感を明らかにすることを目的とした。医療者の自由記述から内容分析を用いて回答を分類したところ、患者の問題、家族の問題、医療者の問題、医療者―患者コミュニケーションの問題、終末期の問題、精神的支援の問題、環境・システムの問題、疾患特有の問題の8カテゴリが抽出された。医療者が終末期の精神的支援に対して感じている困難度や困難な理由のほとんどはがんと循環器で領域による差がなかったが、疾患特有の問題については循環器の医療者のみ困難を抱えていることが分かった。今後、心不全に特化した精神的支援のガイドラインや研修が整備されていくことが期待される。


【受賞者】江崎 悠一

【発表概要】
・国際学会名:The 23rd Annual Conference of the International Society for Bipolar Disorders
・発表演題名:Preventive effect of morning light exposure on relapse of depressive episode in bipolar disorder: results from a prospective cohort study
・発表内容:
目的:光療法は双極性うつ病に対して治療効果を持つことが報告されているが、うつ病エピソードに対する予防効果は明らかではない。本研究の目的は、双極性障害患者の日常生活における日中光曝露とうつ病エピソード再発との関連を調査することである。
方法:外来通院中の双極性障害患者は、ベーライン評価で連続7日間、周囲光を測定することができるアクチグラフを使用して日中光曝露を客観的に評価された。その後、12か月間気分エピソード再発に対して追跡調査された。
結果:潜在的交絡因子を調整したコックス比例ハザードモデルでは、日中光曝露1000lux以上時間の長さがうつ病エピソード再発の減少と有意に関連した。さらに、午前中の平均照度の高さと1000lux以上時間の長さがうつ病エピソード再発の減少と有意に関連した。
結論:我々は日中光曝露、主に午前中の光曝露の増加とうつ病エピソード再発の減少との明らかな関連を発見した。


【受賞者】澤頭 亮

【発表概要】
・国際学会名:アジア神経精神薬理学会(Asian College of Neuropsychopharmacology, AsCNP2021)
・発表演題名:The oculomotor foraging task: a novel behavioral paradigm to evaluate multiple components of working memory
・発表内容:
作業記憶は、私たちの日常生活に欠かせない認知機能であり、その障害は様々な精神神経疾患でみられる。本研究では、新たな採餌行動課題を開発し、サルに適用することで作業記憶の定量化を試みた。また、統合失調症の疾患モデルとして用いられる低用量のケタミン(NMDA受容体拮抗薬)をサルに投与し、その影響を調べた。
採餌行動課題では、15個の均一な視覚刺激がランダムな配置に呈示される。そのうち一つのみが報酬と結びついた標的であり、サルは眼球運動を行うことで、6秒以内にそれを見つけなければならない。この時の行動は記憶容量(memory capacity)、利用率(utility rate)、忘却率(memory decay)といった3つのパラメータで定義されるモデルでよく説明できた。次に、低用量のケタミンをサルに全身投与し、上述のパラメータの変化を調べたところ、作業記憶の容量(capacity)の軽度の低下と、利用率(utility rate)の顕著な低下が見られた。


【受賞者】村山 友規

【発表概要】
・国際学会名:Regional IPA/JPS Meeting
・発表演題名:Correlations between regional cerebral blood flow and psychiatric symptoms in dementia with Lewy bodies without parkinsonism
・発表内容:
背景:レビー小体型認知症(DLB)は、認知機能変動、幻視、妄想、抑うつ、特発性パーキンソニズムなどさまざまな臨床的症状を呈する。早期診断は困難で、特にパーキンソン症状のない患者は、精神疾患と誤診される可能性が高く、精神症状の病理や、生物学的マーカーとの関連性もよくわかっていない。本研究の目的は、パーキンソン症状のないDLB患者の精神症状と、脳の各部位の血流との相関関係を明らかにすることである。
方法:対象はパーキンソン症状はないがDLBと診断された95人の日本人患者である。脳血流SPECTで得られた各部位の脳血流を、解剖学的に標準化された3D定位関心領域(ROI)テンプレートを使用し、FineSRTという解析プログラムを用いて定量化した。精神症状の有無で2群に分け脳血流を比較し、統計分析を行った。
結果:幻視を伴う群では、両側下頭頂小葉、楔部、一次視覚野、左上側頭回、楔前上部に有意な脳血流の減少が見られた。抑うつを示す群では、両側角回および楔前上部で有意な脳血流の増加が、両側淡蒼球で血流低下が見られた。幻聴を伴うDLB患者では、両側の中後頭回、下後頭回で有意な脳血流増加が、両側の島、一次聴覚野で血流低下がみられた。
結論:本研究の結果は、精神症状の病態を解明し、将来的に適切な診断と治療を可能にするための手がかりを提供する。市立砂川病院の倫理委員会の承認を得た。


【受賞者】彌富 泰佑

【発表概要】
・国際学会名:アジア神経精神薬理学会(Asian College of Neuropsychopharmacology, AsCNP2021)
・発表演題名:Prescription of unfavorable combinations of drugs for mood disorders and physical conditions: a cross-sectional national database survey
・発表内容:
背景:気分障害に対する薬剤と身体疾患に対する薬剤との不適切な併用を調査することを目的とした。
方法:レセプト情報・特定健診等情報データベースから抽出した581,990名の外来患者(2015年1月)について、炭酸リチウム服用患者、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)/ セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)服用患者、ミルタザピン服用患者、について各々非服用者を対象に身体疾患薬の処方率の比較を行った。
結果:炭酸リチウム服用患者におけるNSAIDs・ループ利尿薬/サイアザイド系利尿薬・ACE阻害薬、ARBの処方率、或いはミルタザピン服用患者におけるワーファリン処方率は、炭酸リチウム・ミルタザピンの非服用者に比べて有意に低かった。SSRI/SNRI服用患者におけるNSAIDs、抗血小板薬、抗凝固薬の処方率は、非服用者と同等であった。
結論:炭酸リチウム、SSRI/SNRI、ミルタザピン服用中の相当の患者が不適切な身体疾患の薬剤併用を受けていることが明らかとなった。

 

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】河上 緒

【発表概要】
・国際学会名:Regional IPA/JPS Meeting
・発表演題名:Diagnosis and treatment of late-life depression: a consideration of age-related neurodegeneration
・発表内容:
高齢期のうつ病は、慢性の経過を辿りやすく自殺のリスクが高いことで知られる。病因には、生物学的・社会的・心理的要因など多因子の関与が示唆されるが、生物学的因子に関して、高齢者のうつ病と認知症は鑑別の対象であるだけでなく、うつ病は認知症のリスクファクターであることが判明している。本シンポジウムでは、高齢者のうつ病の器質的背景に焦点を当て、同疾病の病態・診断・治療を、最新の知見を交えて包括的に捉えることを目指した。最初に器質的背景と関連した高齢者うつ病の病態を総論的に紹介し、つづいて高頻度にうつ病の合併を伴うアルツハイマー病やレビー小体型認知症などの変性性認知症の神経病理像や精神症候の詳細を解説した。さらに、身体的・環境的因子として、今日のトピックであるCOVID-19感染と高齢者うつ病との関連を考察し、最後に器質的背景を伴う高齢者のうつ病の治療戦略を包括的に考える構成とした。


【受賞者】曾根 大地

【発表概要】
・国際学会名:The 54th Annual Meeting of Japan Epilepsy Society
・発表演題名:Crosstalk discussion on clinical and basic epileptology: International symposium by Asia-Oceanian young epileptologists
・発表内容:
この国際シンポジウムは、日本若手てんかん従事者部門(Japan Young Epilepsy Section: YES-Japan)によって提案され、アジア・オセアニアのさまざまな国の若手てんかん研究者や臨床医による演題が発表される。演者はこの地域の多様な地理的背景を代表する優れた若い研究者と臨床家で、トピックは、ゼブラフィッシュモデル、先端的イメージング遺伝学、発作性てんかんおよび非てんかんイベント、人工知能の応用、定位脳波、睡眠関連てんかんに関する臨床的洞察など、基礎的および臨床的てんかん学の両方をカバーする。この地域の将来のリーダーによる本シンポジウムにより、セッション参加者の学習が強化されることも期待される。

 

 

2020年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】磯部 昌憲

【発表概要】
・国際学会名:International Conference on Eating Disorders (ICED) 2020
・発表演題名:Effect of mindfulness intervention on weight recognition among patients with anorexia nervosa and its underlying neural basis
・発表内容:
神経性やせ症(AN)患者の体重の認識について、健常被験者(HC)と比較するとともに、AN患者に対してマインドフルネス介入を実施し、介入前後の変化について検討した。また介入前後にMRIで安静時脳活動を測定、その変化についても検討した。対象はAN群21人およびHC群29人であった。AN群では、自身が健康だと考える体重や理想体重について、HC群より有意に低く回答した。またAN群ではマインドフルネス介入後に自身の体重の認識と実際に計測された体重のずれが有意に改善された。自己認識に関わるdefault mode networkおよび内受容感覚に関わる salience networkの解析では、介入前後でネットワーク間結合性が変化し、さらにその結合強度と体重認識との相関が指摘された。本結果よりマインドフルネス介入による内受容感覚や情動調節機能の改善が、体重認知に対しても影響を与える可能性が示唆された。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】青木 悠太

【発表概要】
・国際学会名:The 43rd Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society
・発表演題名:Frontiers of neuroimaging research addressing within-diagnosis heterogeneity and deconstruction of diagnostic boundaries
・発表内容:
自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)を対象に数多くの生物学的研究が行われている。その中で、脳画像はその客観性と中間表現型という点が特徴である。
脳画像研究は蓄積しているが、結果は一貫しない。その理由の一つは、臨床診断内での異種性と診断間に重複して見られる特徴の組み合わせにある。これらを克服するため、RDoCして知られる動きが生物学的に妥当な枠組みを精神疾患に提供しようとしている。
このシンポジウムでは、RDoC的脳画像研究を行う4名の研究者が自身の最近の研究結果と将来の展望を紹介する。2名はASD診断内の異種性をターゲットに、残り2名の研究はASDと他の診断に共通する特徴をターゲットにしている。本シンポジウムの目的は、RDoCの枠組みを利用し生物学的で超診断的な軸を提供するだけではなく、ケースコントロールデザインの研究者らとRDoC的アプローチについて議論することにもある。
 

 

2019年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】青木 悠太

【発表概要】
・国際学会名:International Soceity for Autism Research (INSAR)
・発表演題名:Cortical Surface Architecture Endophenotype and Correlates of Clinical Diagnosis of Autism Spectrum Disorder
・発表内容:
背景:自閉スペクトラム症(ASD)当事者だけではなくASD当事者の非罹患同胞にもエンドフェノタイプは存在する。
目的:ASDのエンドフェノタイプが最も現れる皮質の特徴は何か同定する。ASD当事者と非罹患同胞の神経基盤の差を定型発達(TD)兄弟間の差を考慮して同定する。
手法:ASDのエンドフェノタイプを持つ男性成人の兄弟15ペアおよびエンドフェノタイプを持たない兄弟15ペアをリクルートした。Cortical thickness, fractal dimension, sulcal depth(SD), cortical volumeの四つのパラメータで検討した。ASDのエンドフェノタイプの同定には1ペア抜き交差検証を行いながらsparseロジスティック回帰分析を用いた。ASD当事者と非罹患同胞の差にはTD兄弟間の差を考慮したbootstrappingを用いた。
結果: ASDのエンドフェノタイプを最も正確に同定したのはSDであった(73.3%)。SDに関して、68個の関心領域のうち6つでASD当事者とASDの非罹患同胞には有意な差があった。
結論:ASDの診断とエンドフェノタイプの神経基盤はそれぞれ分離できる可能性が示された。


【受賞者】綾仁 信貴

【発表概要】
・国際学会名:ISQua (The International Society for Quality in Health Care)'s 36th International Conference
・発表演題名:Antipsychotic polypharmacy was associated with multiple adverse drug events in psychiatric inpatients: The JADE Study
・発表内容:
多剤併用は薬物有害事象(ADE)との関連が報告されているが、抗精神病薬(AP)の多剤併用(APP)は精神科入院患者への診療では頻繁に認められる。多くのガイドラインがAP単独療法を推奨しているが、APPとADEとの関連についての網羅的な研究報告は乏しい。我々はJapan Adverse Drug Event(JADE)研究の一貫として行われた、精神科入院患者に対するJADE研究での448人(22733入院日)の精神科入院患者を対象に、APPとADEの関係を調査し、同時にADE発症の潜在的危険因子を評価した。調査対象者448人の内、106人の患者(24%)が2つ以上のAPを受け、これらの患者のADE数の中央値は、APが1つ以下の患者よりも有意に高かった(P = 0.001)。単独および複数のADE発症との関連因子をCox比例ハザードモデルにて分析した結果、APP(Adjusted HR: 1.48と1.39)、5種類以上の処方薬(Adjusted HR : 1.42と1.59)、BMI24以上(Adjusted HR: 1.29と1.49)が同定された。ADE低減のため、入院患者におけるAPPの処方理由とAPをへらす方法を精査する必要がある。


【受賞者】入來 晃久

【発表概要】
・国際学会名:6th International Conference on Behavioral Addictions (ICBA 2019)
・発表演題名:Our group therapy session has helped the people with gambling disorder
・発表内容:
背景:当院ではギャンブル障害に対する外来集団療法プログラム(GAMP:Gambling Addiction Meeting Program)を実施している。
方法:集団療法に1回以上参加した群と非参加群を比較し、初診から6か月後の治療継続率などについて検討した。
結果:最終的に88名(女性8名、平均年齢38.3±12.7歳)を調査対象とした。そのうち40名(女性6名)がGAMPに参加していた。6か月後の治療継続率はGAMP参加群で75%、非参加群では16.7%であった。
考察:専門プログラムを有することで、当事者およびその家族のニーズに応え、安心感や達成感をもたらすことができる。医療者にも達成感や効力感をもたらし、ギャンブルの問題を抱えた人々に対する姿勢が変化したことも、良好な治療継続率につながったと考える。
考察:GAMPの実施により、ギャンブル障害者の治療継続率が向上した。


【受賞者】大石 賢吾

【発表概要】
・国際学会名:The 14th World Congress of Biological Psychiatry (WFSBP), Vancouver, Canada
・発表演題名:Genetic combination risk for schizophrenia
・発表内容:
目的:これまで我々は、DAシグナルの主要な因子に関連する遺伝的多型の組合せが遅発性治療抵抗性統合失調症(SZ)のリスクとなることを同定した。本研究では、これらの遺伝子多型が統合失調症の発症と関連性を有するか検討する。
方法:SZ患者361人、健常者282人を含め、TH遺伝子に関連するrs10770141、COMT遺伝子に関連するrs4680、DRD2遺伝子に関連するrs1800497の組合せについて遺伝子型を同定し、SZとの関連性を統計学的に評価した。
結果:いずれのSNPも単体ではSZとの関連性は指摘されなかった。一方で、rs10770141のT(+)、rs4680のMet(-)、rs1800497のA1(+)の組合せを有する群で優位に高率なSZの発症が認められた (OR 5.56, 95%CI 1.25–24.69, p=0.011)。
考察:本研究によって、単一多型で関連性を否定されたものでも組合せて解析することでSZのリスクを予測し得る可能性が示唆された。手技的新規性に加えて、これらの遺伝的多型は既知の影響を有していることから、一亜型ではあると推測するが、SZの病態理解へ寄与するものと期待する。


【受賞者】曾根 大地

【発表概要】
・国際学会名:33rd International Epilepsy Congress
・発表演題名:Profoundly impaired white matter integrity and brain networks in temporal lobe epilepsy with psychosis: a diffusion MRI study
・発表内容:
目的:精神病症状は、てんかんの重要な合併症だが、その病態は未解明である。特に白質繊維の微細な変化については殆ど知られていない。本研究では、精神病症状を伴う側頭葉てんかん(TLE)の脳の白質繊維の異常を、拡散MRIとグラフ理論解析を用いて検討した。
方法:26名のTLE患者(11名の精神病症状あり群、15名の精神病症状なし群)と34名の健常対照群を集め、拡散テンソル画像を撮像した。各群におけるFA、MDおよびネットワーク指標を比較した。
結果:健常群と比較し、精神病症状なし群では側頭葉内・外のFA/MD変化を示した一方で、精神病症状あり群では更に広範かつ重度の異常を呈した。精神病症状の有無で違いがあったのは前頭葉に関連する白質繊維であった。また、両TLE群でネットワーク効率の低下等が有意に検出されたが、精神病症状あり群の方が異常の程度が大きかった。
結論:精神病症状を伴うTLEでは重度の白質繊維と神経ネットワークの障害が示唆される。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】紀本 創兵

【発表概要】
・国際学会名:The 19th World Psychiatric Association World Congress of Psychiatry, WCP 2019
・発表演題名:Abnormalities of Prefrontal Cortex during Development Relevant to Schizophrenia and Autism
・発表内容:
前頭前野は、統合失調症や自閉スペクトラム症といった精神疾患の病態病理において重要な役割を果たす脳領域である。なぜなら、脳発達段階における同領域の障害は、神経発達障害や前駆期の統合失調症の精神症状などに関連していることがわかってきたからである。また、生育環境や社会環境がとりわけ前頭前野の発達に密接に関与しているため、これらの環境因子がどのように前頭前野の発達や機能に影響を与えるかを生物学的に明らかにすることは、発症予防や早期介入の方法の手がかり知る重要な知見となり得る。本シンポジウムでは、脳神経科学の視点から、脳の発達段階における前頭前野の機能障害と精神疾患との関わりについて、4人のシンポジストが、それぞれの視点と研究手法から自身の研究成果を紹介し、治療法の創発に向けて討論したいと考えている。


【受賞者】野田 賀大

【発表概要】
・国際学会名:The World Federation of Societies of Biological Psychiatry: WFSBP
・発表演題名:rTMS research in depression
・発表内容:
うつ病人口は世界的に急増しているが、約3割の患者は通常の治療に反応せず、治療抵抗性を示すとされる。これはうつ病の病態生理の複雑さや異質性に起因するものと考えられるが、うつ症状が遷延することによる休職や休学は多く、そのことによる本人の心理的苦悩や社会経済的損失の大きさは計り知れない。したがって、うつ病の神経生物学的基盤を解明し、その病態生理をターゲットとした新規治療法を開発することは非常に重要である。今回のシンポジウムでは1)治療抵抗性うつ病に対する磁気痙攣療法の神経生理学的機序、2)老年期うつ病に対する新規rTMS治療法の開発、3)TMSを用いた思春期うつ病と自殺対策、4)TMS-EEG同時計測法による治療抵抗性うつ病患者の前頭前野の神経可塑性の評価と誘導によるうつ病の神経基盤の解明について取り上げる。

 

2018年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】久保田 学

【発表概要】
・国際学会名:12th Human Amyloid Imaging; January 17-19, 2018, Miami
・発表演題名:A head-to-head comparison between [11C]PBB3 and [18F]PM-PBB3 in patients with AD and non-AD tauopathy
・発表内容:我々は近年、従来のタウPETリガンド[11C]PBB3を改良して、脳内タウ蓄積をより正確に生体内で可視化するための新しいPETリガンド、[18F]PM-PBB3を開発した。そこで今回我々はアルツハイマー病(AD)患者およびタウ病理が関与する非AD型疾患すなわちnon-ADタウオパチーの一つ、進行性核上性麻痺の患者に対し、これら2つのリガンドを用いてPET撮像および定量評価の比較検討を行った。結果、いずれの患者においても[11C]PBB3と比べて[18F]PM-PBB3では約2倍の薬剤脳取り込みおよび画像コントラストが得られ、代謝物の影響や病変部位以外への薬剤蓄積も少なかった。したがって[18F]PM-PBB3は、臨床場面でADおよびnon-ADタウオパチー患者のいずれにおいても個人ベースでタウ病変を精度よく可視化・定量評価できるすぐれたPETリガンドである可能性が示された。


【受賞者】黒川 駿哉

【発表概要】
・国際学会名:18th Congress of the ACPM (Asian College of Psychosomatic Medicine)
・発表演題名:Therapeutic potential of Fecal Microbiota Transplantation for Depressive Mood and Anxiety: An Open-Label Observational Study in Patients with Functional Gastrointestinal Disorders.
・発表内容:背景:機能性消化管疾患とうつ病や不安症において、腸内細菌叢の乱れを介した共通するメカニズムが示唆されている。腸内細菌叢移植(FMT)は、劇的に腸内環境を変化させる治療だが、FMTの精神症状への影響を客観的に評価した研究は乏しい。
方法:慶應義塾大学病院において、治療抵抗性のIBS、機能性下痢症、機能性便秘症の患者17例を対象に、FMT施行前と施行後4週の時点で、抑うつ・不安の評価を施行し、腸内細菌叢の変化を検討した。
結果:FMT後に抑うつ・不安スコアは有意に低下した。消化器症状が改善しなかった8例においても、不安は有意に低下した。また、抑うつ患者群の菌叢の多様性は低く、FMTによる抑うつスコアの改善と菌叢の多様性の増加には正の相関があった。
結論:予備的な検討であるが、FMTは消化器症状の改善の有無に関わらず、抑うつや不安感を低下させ、その効果には菌叢の多様性が関与している可能性が示唆された。


【受賞者】藤野 純也

【発表概要】
・国際学会名:WFSBP 2018 KOBE (WFSBP Asia Pacific Regional Congress of Biological Psychiatry)
・発表演題名:Neural mechanisms of the sunk cost effect in gambling disorder
・発表内容:過去に、時間、お金、労力などを費やすと、将来利益より損失が大きくなるにも関わらず、投資を続けたり、新たな行動を起こしたりしてしまう傾向は、日常に広くみられる選択バイアスで、埋没費用効果と呼ばれている。ギャンブル障害では、このような意思決定における変調が示唆されているが、その神経メカニズムはほとんどわかっていない。今回、埋没費用効果が深く関わるfMRI課題を作成し、課題中のギャンブル障害群(N=23)と健常群(N=35)の脳活動を測定した。埋没費用が関わる状況で意思決定を行う際、両群で共通して、島皮質、下前頭回に脳活動の上昇を認めたが、ギャンブル障害群では健常群と比較して、背内側前頭前野の脳活動が低下していた。さらに、ギャンブル障害群において、同部位の脳活動量が罹病期間と有意な相関を認めた。ギャンブル障害の意思決定の障害において、背内側前頭前野が重要な神経基盤であり、新規治療法のターゲットとなる可能性が示唆された。


【受賞者】藤本 岳

【発表概要】
・国際学会名:The World Federation of Societies of Biological Psychiatry (WFSBP) Asia Pacific Regional Congress of Biological Psychiatry 2018
・発表演題名:Brainstem atrophy and cognitive impairment in the chronic phase and clinical severity in the acute phase in diffuse axonal injury
・発表内容:外傷性脳損傷の一種 瀰漫性軸索損傷(DAI)は、慢性期に認知機能低下や精神症状を呈し精神科を受診するが、外傷本来の重症度等の急性期情報が引き継がれない、気分症状や易疲労感から認知機能検査を行えない等の問題があり、慢性期に可能な病態把握法が望まれていた。健常100例と慢性期DAI20例を対象にMRI T1画像を解析し各人の大脳・脳幹の体積と頭蓋内容積(ICV)を測定した。健常群で大脳体積はICVと相関、年齢と逆相関し、脳幹体積はICVと相関し年齢とは相関しなかった。大脳/脳幹に対し説明変数をICV・年齢/ICVとして回帰分析し、回帰式を健常時の各体積の推定モデル式とした。これをDAI20例に適応、(1)各領域の萎縮率、(2)(1)と急性期重症度指標(外傷後健忘期間)との相関、(3)(1)と慢性期のIQとの相関を算出した。(1)(2)は共に大脳より脳幹で顕著に大きく、(3)は脳幹でのみ逆相関を認めた。慢性期DAIで脳幹体積が急性期重症度や慢性期の神経心理学的特徴を見積もる指標となることを示した。


【受賞者】吉田 和生

【発表概要】
・国際学会名:Canadian Psychiatric Association (CPA)
・発表演題名:A preliminary multi-genic prediction model for antipsychotic-induced weight gain
・発表内容:抗精神病薬誘発性体重増加(AIWG)は、一般的かつ重大な副作用である。AIWG発症には高い遺伝性が指摘されているが、その予測は困難である。そこで、本研究ではAIWG発症を予測する遺伝的リスクモデルの構築を目的とした。AIWGとの関連性が高い8つの一塩基多型(SNP)を用いて、それぞれのSNPのリスクアレル保有の有無からAIWGに対するリスクスコアを算出し、そのリスクスコアがAIWGに及ぼす影響と予測精度を評価した。結果、リスクスコアが高いほど体重増加が有意に大きく、また、リスクモデルの予測精度は27%であった(統合失調症患者91名)。さらに、クロザピンまたはオランザピンで治療された患者52名に限定すると、予測精度は46%に上昇した。さらなる検証試験が必要ではあるが、臨床応用につながる重要な研究である。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】長 徹二

【発表概要】
・国際学会名:the 20th International Society of Addiction Medicine Annual Meeting
・発表演題名:Various legal issues related to addiction in Asian Countries
・発表内容:治療により薬物使用に対する態度、信念、行動が変わることを科学的研究が示しており、治療は自発的であろうと裁判所による命令であろうと効果的であることが報告されている。たとえ最初に変わる意欲がない人でも、結局は継続的な治療により回復することができるが、国の制度により治療につながらず、司法的な対応にとどまる状況もある。アジアは巨大な地域で文化も多種多様であり、司法制度など各国の状況に応じて物質使用障害の治療観も異なっている。
趣旨説明として、まず私が日本のアルコール・薬物使用障害診断・治療ガイドラインに飲酒・使用量低減の文言が初めて記載されたことなど、日本の治療の歴史の変遷について話し、台湾、シンガポール、インドネシア、日本からの4名の講演者(このメンバーは日本若手精神科医の会(JYPO)のネットワークにより成立)が各国における詳細な事情について説明し、各国の治療と司法のバランスやその対応の利点について議論する時間を設けた。
アルコール・薬物使用障害の治療において、医療的な視点よりも司法的な判断が優先されることがあり、長い時間をかけて築き上げた治療関係が中断することが少なくない。わが国において、違法薬物使用であっても、可能な限り医療的な対応が標準となるように努めていきたい。

 

2017年度受賞者

個人発表部門

【受賞者】上野 文彦

【発表概要】
・国際学会名:ESBRA (European Society for Biological Research on Alcoholism) 2017 Congress
・発表演題名:Comorbidities of alcoholics with homozygous for the aldehyde dehydrogenase 2*2 gene allele
・発表内容:アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase、以下ALDH)2*2アレルはアルコール代謝速度を遅らせ、フラッシング反応、動悸、嘔気・嘔吐、めまい等の不快な症状を誘引する。そのためこの遺伝子の保有者はアルコール依存症のリスクが低く、特にホモで保有する場合(ALDH2*2/*2)はアルコール依存症にはなり得ないと考えられていた。実際、過去に2つの文献で計3症例の報告しかなかった。当院でも1996年からアルコール依存症の男性患者が入院する際には全例で遺伝子検査を行ってきたが、2013~2015年の3年間で急に3例のALDH2*2/*2保有者が発見された。彼らには以下の共通点があった:(1) 身体的にはごく軽度の肝障害しか認められない、(2) ヘビースモーカー、(3) 少なくとも3人中2人はADHD、反社会性人格障害および境界性人格障害を合併(1人は中途退院したため未精査)。これらがアルコールのみならず全ての依存形成に関与する可能性があるが、同定するためにはより多くのデータが求められる。


【受賞者】熊崎 博一

【発表概要】
・国際学会名:HAI 2017, 5th International Conference on Human-Agent Interaction
・発表演題名:Impact of android robot-mediated mock job interview sessions for young adults with autism spectrum disorder and social anxiety
・発表内容:我々は、社交不安症状を合併する自閉スペクトラム症者への介入法として外見がヒトに酷似したヒト型ロボットであるアンドロイドを用いた就職面接練習法を開発した。3日間のアンドロイドを用いた就職面接練習の効果と、自主学習による面接練習の効果とをランダム化比較試験を行い比較した。両群とも初日及び最終日には実際の面接官との面接を行った。また毎日、面接及び介入後にストレス状態の評価指標としての就職面接への自信に関する自己記入式の質問紙を記入していただき、また唾液コルチゾールの測定を行った。アンドロイドによる就職面接練習を受けた群では、質問紙上、就職面接への自信の改善を認め、また唾液コルチゾールの低下を認めた。アンドロイドを用いた就職面接の効果を予備的に示すことができた。


【受賞者】高畑 圭輔

【発表概要】
・国際学会名:Annual Meeting of Society of Biological Psychiatry (SOBP 2017), Toronto, Canada
・発表演題名:Delayed-Onset Psychosis following TBI is Associated with Tau Depositions in the Neocortex but Not with β-Amyloid Depositions: A Pet Study with [11C] PBB3 and [11C]PiB
・発表内容:目的:頭部外傷後に統合失調症様の精神病症状が遅れて出現することがある。こうした外傷後精神病の原因は長らく不明であったが、頭部への打撃から数年以上の時間が経過して症状が出現するという遅発性の特徴から、外傷を契機とする神経変性が関与している可能性がある。本研究では、この仮説をタウ・アミロイドPETにより検証した。
方法:重度単発頭部外傷患者(14名)と健常対照者(n=15)を対象として、[11C]PBB3によるタウPET及び[11C]PIBによるアミロイドPETを行い、頭部外傷後精神病の背景病理の検討を行った。
結果:精神病症状を伴う頭部外傷群は、精神病症状を伴わない頭部外傷群や健常対照群よりも、全脳の灰白質で[11C]PBB3の集積の上昇を認めた。また、側頭葉における[11C]PBB3の集積は、精神病の重症度と相関していた。アミロイド病理については、頭部外傷患者、健常被験者とも[11C]PIB-PETは陰性であった。
結論:頭部外傷後に出現する精神病の機序として、外傷を契機としたタウオパチーの関与が示唆された。


【受賞者】盛本 翼

【発表概要】
・国際学会名:the WPA XVII WORLD CONGRESS OF PSYCHIATRY BERLIN 2017
・発表演題名:Computer-assisted cognitive remediation therapy increases hippocampal volume in schizophrenia
・発表内容:目的:統合失調症患者に対する認知矯正療法(以下CRT)に関する構造的脳画像研究は少ない。そこで本研究では、CRTによって脳の構造学的変化が生じるのか、また、皮質体積の変化と認知機能の変化に相関があるのかを検討した。
方法:参加者は、15名のCRT群と16名の通常治療群に無作為に振り分けられ、CRT群は週に2回のコンピュータを用いた認知機能トレーニングと、週に1回のグループミーティングを12週間受けた。MRIのT1強調画像を、ベースラインと介入後の計2回撮像し、全脳でボクセル解析を行った。また、CRTによる皮質体積変化と神経認知機能の変化との相関についても調査した。
結果:CRTによって、語流暢性と全般的認知機能が有意に改善した。構造学的脳画像解析では、CRT群で通常治療群と比較して有意な右海馬の体積増加を認めた。くわえて、語流暢性の得点の変化と右海馬の体積の変化との間に有意な相関を認めた。


【受賞者】横井 優磨

【発表概要】
・国際学会名:Alzheimer's Association International Conference 2017
・発表演題名:Abnormal Perceptions or Thought Content in Mild Behavioral Impairment
・発表内容:2016年米国アルツハイマー協会(AA)により認知症発症以前に関する総合的な精神症状の評価基準として軽度行動障害(Mild Behavioral Impairment)の診断基準が発表された。そこで提示された5つの領域(意欲の減少、気分の機能障害、衝動性調節不全、社会的不適切行為、異常な知覚や思考内容)が軽度認知障害(MCI)患者において認知症発症のリスクファクターとなっているかの評価は行われていなかった。そのためJ-ADNIの232名のMCIのデータを用い解析を行った。そのうち異常な知覚や思考内容がベースライン時点で存在した患者についてはCox回帰によって共変量調整後も有意なリスク(HR 2.50, 95% CI: 1.03-6.04)が存在した。その他の4つの領域では有意なリスクは認められなかったことから、5つの領域の中では異常な知覚や思考内容は認知症発症の最も強いリスクであると結論づけた。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】内田 裕之

【発表概要】
・国際学会名:World Psychiatric Association ベルリン大会
・発表演題名:Roles of Resilience: Prevention, Remission, and Recovery in Schizophrenia
・発表内容:レジリエンスは、「著しく不利な状況やリスク要因にもかかわらず、一部の個人が健康なままであるか、もしくは逆境から容易に回復する現象」として記述されている。統合失調症の治療法研究において、患者のレジリエンスに焦点を当てて予防および回復過程のメカニズムを理解することは重要である。下記の4演題を通じて、レジリエンスを生物学的・心理的・社会的視点から討議した。
第一に、統合失調症患者は、健常対照者と比較して有意に低い生活の質(QoL)、レジリエンス、自尊心を呈した横断研究を発表した。
第二に、オーストリアと日本という文化的・宗教的に異なる2地域における統合失調症患者のレジリエンスに関する最新データを発表した。
第三に、レジリエンスを有する統合失調症患者に焦点を当てた脳画像研究の体系的レビューの結果を提示した。
第四に、抗精神病薬とドパミン神経系に関する生物学的知見を、レジリエンスという視点から解釈を試み、ドパミン神経系とレジリエンスの関係を議論した。


【受賞者】牧之段 学

【発表概要】
・国際学会名:14th World Congress Biological Psychiatry
・発表演題名:Dissecting the shared and non-shared biological features in schizophrenia and autism spectrum disorder
・発表内容:統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)の症状は類似している場合があり、また両障害が併存しているケースも散見される。社会性障害、認知機能障害、情緒障害などが両者に認められる場合は、両障害を区別するのがときに困難となる。最近の遺伝子研究から、統合失調症とASDには共通した関連遺伝子が数多く存在することが明らかになっているが、本シンポジウムでは、Dr. AleksicとDr. Groveからそれぞれrare variant、common variantに着目した研究成果をご発表頂いた。Dr. HashimotoとDr. Bialasは都合により参加できず、代わりに申請者が登壇し、統合失調症とASDに共通するグリア機能障害について発表した。

 

2016年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】沖田 恭治

【発表概要】
・国際学会名:Dopamine 2016
・発表演題名:Sex Difference in Midbrain Dopamine D2-Type Receptors in Association with Nicotine Dependence
・発表内容:喫煙行動における性差は広く知られており、脳機能研究でも喫煙者内での性差の報告は多い。男性喫煙者群で線条体のドパミンD2受容体(D2R)バインディングポテンシャル(BP)は非喫煙者群より低いが、女性では群間差はない。さらに男性は女性よりも喫煙による線条体でのドパミン分泌が大きい。中脳のD2Rの多くは、ドパミン神経細胞樹状突起上の自己受容体であり、線条体でのドパミン分泌の抑制作用をもつ。本研究ではD2Rに高い親和性をもつ[18F]fallyprideとポジトロン断層法(PET)を用い、喫煙者群(11M, 7F)と非喫煙者群(10M, 9F)における中脳及び線条体のD2RBPを計測した。中脳D2RBPへの性別・群間交互作用が有意で、喫煙者群内で女性は男性より高いD2RBPを示したが、非喫煙者群では性差は認めなかった。中脳D2RBPは女性喫煙者群でのニコチン依存症スコアと相関したが、男性では有意でなかった。


【受賞者】加藤 秀一

【発表概要】
・国際学会名:The 22nd International Association for Child and Adolescent Psychiatry and Allied Professions World Congress
・発表演題名:Child and adolescent psychiatry: Overview of training system and update situation in Asian countries
・発表内容:発展途上国においても、先進国においても、児童思春期の精神保健サービスへの需要は増してきている。しかしながら、多くの国においては、増える需要に対して供給が追いついていない。児童思春期精神科研修は、そして一般精神科研修もまた、その需給ギャップを埋めるために重要である。アジア地域は、全体としては若年人口が多く、経済的にも文化的にも著しく発展している地域である一方で、東アジア地域は高齢化が問題となってきており特性が異なる。これまで、アジア地域の児童精神科研修についての報告はあまりなされていない。本発表では、日本、台湾、タイの3カ国から若手の児童精神科医が、それぞれの国の、児童精神科研修を中心とした卒後研修の現状と課題について発表した上で、議論を深め、それぞれの良い点や課題を知り、自国の研修をよりよいものとするための気づきを得ることを目的とした。


【受賞者】高江洲 義和

【発表概要】
・国際学会名:American Academy of Dental Sleep Medicine, 25 th Anniversary Meeting
・発表演題名:Mandibular Advancement Device as a Comparable Treatment to Nasal Continuous Positive Airway Pressure in Patients with Positional Sleep Apnea Syndrome.
・発表内容:閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する口腔内装置(MAD)の治療効果は、持続陽圧呼吸療法(CPAP)に劣ると考えられているが、体位依存性OSASに対して奏功しやすいという報告も存在する。本研究では、「体位依存性OSASに対するMADの治療効果はCPAPと同等である」という仮説を検証した。終夜ポリグラフ検査によりOSASと診断された体位存性OSAS患者を対象とした。対象者を以下の4群に分け、治療後AHIを共変量分散分析により比較した;体位依存性OSASのMAD治療群(26名)、体位依存性OSASのCPAP治療群(32名)、非体位依存性OSASのMAD治療群(12名)、非体位依存性OSASのCPAP治療群(17名)。初診時AHIの影響を共変量で除外した結果、体位依存性OSASのMAD治療群の治療後AHIは、体位依存性OSAのCPAP群、体位非依存性OSASのCPAP群の治療後AHIとの間で有意差を認めず、非体位依存性OSAS群の治療後AHIのみ他の3群より有意に高かった。以上より、体位依存性OSASに対するMAD治療は、CPAP治療と同等の効果があることが示された。


【受賞者】髙宮 彰紘

【発表概要】
・国際学会名:International Society for ECT and Neurostimulation Annual Meeting
・発表演題名:ECT Modulates Intralimbic and Corticolimbic Information Flow: Partial Granger Causality Analysis of Resting EEG
・発表内容:うつ病では多くの脳部位の結合性の異常が認められている。重症のうつ病に対して電気けいれん療法(ECT)は最も高い有効性と即効性が認められているが、その作用機序には不明な点が多い。今回我々は治療抵抗性うつ病10名に対しECTを1コース施行し、その前後で安静時脳波による評価を行った。先行研究からうつ病で異常が指摘されている膝下帯状回(SCC)、背外側前頭前野(DLPFC)、内側側頭葉(MTL)、楔前部(Pcu)、内側前頭前野(MPFC)に関心領域を設定し、これらの部位間の電気的活動性の結合性に関して、eLORETAによるpartial Granger因果解析を行った。結果は、ECTは膝下帯状回(SCC)から背外側前頭前野(DLPFC)の結合性を上昇させ、SCCと内側側頭葉(MTL)の両方向性の結合性を減少させた。本研究は、ECTがうつ病で異常が示されている皮質と皮質下・辺縁系の活動性・情報の流れを是正することを示唆している。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】鳥塚 通弘

【発表概要】

・国際学会名:World Federation of Biological Psychiatry 2016
・発表演題名:Multimodal studies of excitatory and inhibitory signaling balance in schizophrenia and autism
・発表内容:統合失調症患者や自閉症患者の行動学的特徴に対しては、様々な研究から遺伝要因の関与が示唆されているが、他の多くの精神疾患と同様、その生物学的な病態は未だ不明である。一つの仮説として提唱されているのは、興奮/抑制シグナルバランス(E/Iバランス)の破綻である。興奮性シグナルの過剰や抑制性シグナルの減少によってこの破綻がもたらされるが、これまでの研究で、これらE/Iバランスの破綻が、統合失調症や自閉症でみられる社会性や認知機能の障害につながることが示されている。本シンポジウムでは、基礎神経科学研究を行っている4人の臨床精神科医が、それぞれの専門分野(死後脳研究、iPS細胞研究、動物モデル、電気生理学)から見たE/Iバランスの観点から考える統合失調症と自閉症のメカニズムについて述べた。

2015年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】竹内 啓善

【発表概要】
・国際学会名:23rd European Congress of Psychiatry (EPA 2015)
・発表演題名:The Effect of Antipsychotic Dose Reduction on Cognition
・発表内容:認知機能障害は統合失調症の中核症状であり、社会機能障害にも密接に関連しているが、いまだ治療法が確立していない。抗精神病薬は認知機能障害に対して有効とされる一方、定型・非定型薬を問わず、健常者でも統合失調症患者でも認知機能障害を惹起することが示されている。本発表では、抗精神病薬の用量と認知機能障害に関するエビデンスを概観し、また抗精神病薬の減量が認知機能に及ぼす影響について考察する。高用量の抗精神病薬および過剰なドパミン受容体遮断は、たとえ非定型抗精神病薬であっても認知機能を悪化させる。さらに、最近の無作為化比較試験では、安定した統合失調症におけるリスペリドンまたはオランザピンの半分までの減量は、再発のリスクを高めることなく認知機能を改善することが報告されている。これらの結果は、認知的副作用の予防または最小化のためには、抗精神病薬は必要最小用量での使用が望ましいことを示唆している。


【受賞者】岩田 祐輔

【発表概要】
・国際学会名:70th meeting of the Society of Biological Psychiatry
・発表演題名:Effect of glutamatergic modulators on cognitive impairment in schizophrenia: systematic review and meta-analysis.
・発表内容:統合失調症において、認知機能障害は中核症状の一つであり、社会機能低下の重要な予測因子である。従来のドパミン仮説に比し、グルタミン酸仮説は認知機能障害を含め統合失調症の病態を包括的に説明するため、グルタミン酸神経系は新たな治療目標として期待されてきた。現在までに数多くの研究でグルタミン酸系作動薬の認知機能障害に対する効果が検討されてきたが、報告は一貫していなかった。本研究ではメタ解析によりグルタミン酸作動薬の統合失調症における認知機能障害に対する効果の検証を行った。2015年2月までに発表されたグルタミン酸系作動薬を使用したプラセボ対照二重盲検比較試験17報を解析の対象とした。認知機能への効果は総合認知機能に加え8つの下位認知機能について検討したところ、グルタミン酸系作動薬は総合認知機能においても8つの下位認知機能においても統合失調症の認知機能障害を改善しないことが明らかになった。


【受賞者】長 徹二

【発表概要】
・国際学会名:WPA REGIONAL CONGRESS OSAKA Japan 2015
・発表演題名:Our support activities in a stricken area -Overcome the difficulties "Stigma of alcohol dependence"(Symposium 6 Disasters and addictive behaviors: experience of the great east Japan earthquake)
・発表内容:宮城県石巻市では、東日本大震災後に精神保健相談におけるアルコール関連問題の割合の増加が認められている。本研究では、それらの問題の支援を行う援助者やボランティアなどに対して、アルコール使用障害をもつものの基礎知識から関わり方に至るまでについて、3か月連続3回の体験学習を伴う研修を実施し、支援者のアルコール使用障害をもつものに対する姿勢の変化について検討した。研修は平成26年3月から5月にかけて宮城県石巻市にある「からころステーション」にて実施し、その参加者の中で66人から回答を得た。結果としては、研修の前後でAAPPQ:alcohol and alcohol problems perception questionnaireの総得点と、下位項目である「仕事満足と意欲」と「患者の役に立つこと」において、統計学的に有意に改善を認めた。併せて、N-VAS:Nawata-Visual analogue scaleにおいて、アルコール使用障害をもつものとの距離感も有意に減少した。このような介入は支援者を通じて、地域のアルコール関連問題の解決に寄与すると考える。


【受賞者】青木 保典

【発表概要】
・国際学会名:Annual Conference on Clinical Neurophysiology and Neuroimaging 2015-Joint Meeting of ECNS, ISNIP and ISBET
・発表演題名:ELORETA-ICA resting state network activities of Dementia with Lewy bodies and their association with symptoms
・発表内容:レビー小体型認知症(DLB)は、幻視、動揺性の認知機能障害、パーキンソン症状を呈する認知症疾患であり、認知症の約2割を占める。しかし、その病態は不明な点が多い。我々は、先行研究においてeLORETA-ICA解析を用いて、健常者80名の安静時脳波より独立な5つの安静時皮質回路を見出した。今回我々は、AchEI、抗精神病薬を投薬されていないDLB患者44名の安静時脳波120秒をeLORETA-ICA解析し、安静時皮質回路活動量を算出し認知・パーキンソン症状との相関も算出した。結果は、DLBにおいて健常者と比較して、α帯域後頭部活動量の減小、α、β帯域視覚回路活動量の増加、α帯域記憶回路活動量の減少が見られた。さらに、視覚回路活動量の増加は、妄想、幻覚、認知機能の変動の悪化と相関し、感覚運動回路の活動量の増加は、異常行動、認知機能の変動の改善、パーキンソン症状の悪化と相関した。以上のことから、脳波eLORETA-ICA解析は、DLBの健常者との鑑別や病態解明に有用である可能性が示唆された。


【受賞者】吉池 卓也

【発表概要】
・国際学会名:27th Annual Meeting of the Society for Light Treatment & Biological Rhythms
・発表演題名:Bright Light Facilitates Fear Extinction and Prefrontal Processing for Fear Extinction in Humans
・発表内容:高照度光(bright light: BL)はヒトに対し強力な概日同調作用のみなら認知や情動の修飾作用を示す。BLは概日非依存的に抗うつ作用を発揮するが、BLが不安障害の中核病理を成す情動記憶処理を促進するかはわかっていない。恐怖消去学習は不安障害治療における中心的認知過程であり、前頭前野が恐怖条件付けに関連する辺縁系活動を抑制することにより達成される。本研究はBLの恐怖消去促進効果および恐怖神経回路への影響を検討した。25名の健康成人を、BLもしくは対照光に約15分間、恐怖条件付けパラダイムを用いた恐怖消去学習中に曝露した。恐怖消去学習は概日位相変位が最少となる13時前後に行った。24時間後の恐怖再認課題によりBLの恐怖消去促進効果を評価した。恐怖消去学習および再認課題中の前頭前野活動(機能的近赤外線分光法)および精神生理(皮膚電気抵抗)反応を評価した。BLは想起試験において恐怖反応を有意に抑制する(p= .030)一方、恐怖消去学習中のみならず(p = .020)、想起試験中の前頭皮質活動も有意に減少させた(p = .007)。さらにBLは内側PFCと左背外側PFCの機能結合を強化した(r = .82; p < .001)。これらの作用は気分や睡眠相の変化と独立に誘導された。本結果は、BLが不安障害に対する曝露型認知行動療法の有用な増強手段となる可能性を示唆する。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】熊崎 博一

【発表概要】
・国際学会名:WPA REGIONAL CONGRESS OSAKA JAPAN 2015
・発表演題名:Clinical Use of Robots for Individuals with Child and Adolescent Psychiatric Disorders

・発表内容:最近のロボット技術の進歩は目覚しいものがある。児童精神科領域においても、自閉スペクトラム症児のコミュニケーション能力や社会性の改善にロボットセラピーが行われている。ロボットには人間の代わりに仕事をするだけでなく、人間には成しえなかった治療的役割が期待されている。本シンポジウムでは、児童精神科医療及びロボット工学の分野で研究している精神科医及び工学者に、ロボット技術の児童精神医療への応用の現状及び今後の課題について議論した。自閉スペクトラム症児のヒト型ロボットへの反応、「アンドロイド」を用いた場面緘黙症例児へのコミュニケーション改善への取り組み、セラピー用アザラシ型ロボット「パロ」を病棟及び外来に用いて小児のこころのケアを実践している例、コミュニケーション用のロボット「エムスリー・シンキー」を児童精神科外来に取り入れセラピーに用いている実践例について取りあげ、今後の課題について議論した。

2014年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】鶴身 孝介

【発表概要】
・国際学会名:16th International Society of Addiction Medicine Annual Meeting
・発表演題名:Insular activation during reward anticipation reflects duration of illness in abstinent pathological gamblers
・発表内容:病的賭博は物質使用障害と多くの類似点を持つ。物質依存患者において脳構造・機能が薬物乱用・中断の影響を受けるのに対し、病的賭博患者の脳が賭博行動・中断によりどのように影響を受けるかは未解明である。
23人の病的賭博患者及び年齢と性別を適合させた27人の健常コントロール群に対し、fMRI撮像中に報酬予測課題を施行し、報酬予測時における両群の脳活動の違いを検討した。
報酬予測時に病的賭博群は健常群と比較して、島皮質を含む、報酬系の幅広い領域にて活動性の低下を認めた。病的賭博群ではその際の左島皮質における脳活動が罹病期間と負の相関を示し、左島皮質における脳活動が賭博を中断していた期間と正の相関傾向を示した。
報酬予測時の島皮質の脳活動は病的賭博の進行・回復の程度を予測するマーカーとなる可能性がある。


【受賞者】中神 由香子

【発表概要】
・国際学会名:Pacific Rim College of Psychiatrists Scientific Meeting, PRCP 2014
・発表演題名:Mental health promotion in Japan
・発表内容:日本における自殺率は人口10万人あたり約20人と世界的水準に比べて高い。1998年から年3万人以上の自殺者数が続いたことを背景に2007年には自殺総合対策大綱が策定された。2014年現在、自殺者数は5年連続で減少し年3万人以下となっている。
自殺には多くの要因が関連するが、日本における自殺とその予防施策・活動について重点的に論じた。実例を交えながら日本の現状と課題を提示して議論を行った。加えて、2011年に生じた東日本大震災における心のケアチームの活動も紹介し、日本の精神医療の展望についての提言を行った。


【受賞者】小口 芳世

【発表概要】
・国際学会名:第16回世界精神医学会マドリッド総会
・発表演題名:Is therapist-guided computerized CBT really effective for major depression?: A meta-analysis and a systematic review
・発表内容:認知行動療法はうつ病に対して有効であり、セラピスト不足を解消するためにもコンピューター認知行動療法は有用である。しかし、アドヒアランスに問題があり、個人への対応の観点からも効果に疑念の余地が残る。近年、セラピスト介在型のコンピューター認知行動療法が登場してきているが、その有効性に関しての検証がなされていない。そこで、本研究では文献ベースでの効果の検証を行った。2013年9月までの4つのデータベースを用いて、研究デザインや介入内容に問題のないランダム化比較試験を介入群、それ以外を対照群とした。8つの試験が該当し、対照群に比して、短期(1.5ヶ月から4ヶ月時点)での抑うつ症状が軽減され、その効果は長期(6ヶ月時点)まで維持することが明らかになった。しかし、介入群において、機能面での改善はみられなかった。また6ヶ月時点での介入群と対照群との間の脱落率に有意差はみられなかった。


【受賞者】本屋敷 美奈

【発表概要】
・国際学会名:WPA section on epidemiology and public health- 2014 meeting
・発表演題名:Specificity of CBT for Depression: A Contribution from Multiple Treatments Meta-analyses
・発表内容 :精神療法の効果はその特異的な要素ではなく全ての精神療法に共通する要素によるものだとする主張と、その主張には弱点があり、精神療法の特異的効果は定量化出来るという主張は半世紀にわたり対立している。そこで本研究では、大うつ病に対する治療として認知行動療法(CBT)のプラセボ精神療法あるいは無治療との比較を含む無作為化比較試験を検索・同定した後、変量効果モデルでのネットワークメタアナリシスを行った。結果、CBTに特異的な要素は35.0 %(95%信頼区間-99.5から180.3)と推定された。次に治療効果に影響する因子を調べる為予め同定された因子についてメタ回帰分析を行った所、CBTに特異的な要素は10回以上のセッションを行った場合50.4%(95%信頼区間19.7から85.0)と推定された。本研究では、ある特定の精神療法(CBT)をある疾患(うつ病)に行った所、その精神療法に特異的な要素は0%ではないことが示唆された。


【受賞者】青木 藍

【発表概要】
・国際学会名:The jubilee congress of world association of social psychiatry
・発表演題名:Newspaper Coverage Of Schizophrenia In Japan, During 20 Years Before And After Renaming Of Schizophrenia, 1992-2012
・発表内容:目的:統合失調症の名称変更の影響を新聞記事を通して調査する。
背景:日本精神神経学会は2002年に精神分裂病を統合失調症と改めた。名称変更でスティグマを低減する試みは世界初だが、その効果について十分な検証がなされていない。
方法:全国紙2紙(朝日新聞、毎日新聞)の1992年~2012年までの精神分裂病/統合失調症を含む記事を検索した。記事をポジティブ/ネガティブな記事に分類した。
結果:3043の記事 (790が名称変更前、2253が名称変更後)が該当した。名称変更前では49.7%がポジティブな記事、50.3 %がネガティブな記事であった。名称変更後では48.3%がポジティブな記事、51.7%がネガティブな記事であった。名称変更前後でポジティブな記事の比率の有意な変化は認められなかった (p=0.32)。
結論:名称変更のみでは新聞記事におけるスティグマにつながる記事の軽減には至っていない。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】石井 礼花

【発表概要】
・国際学会名:The 2nd Asian Congress on ADHD
・シンポジウム名:The neuroimaging studies towards the establishing auxiliary diagnostic tool for ADHD
・発表内容:注意欠如多動性障害(ADHD)は発達の水準に不相応で不適応な不注意や多動性又は衝動性行動を特徴とする障害で、小児期に多く認められる代表的な精神疾患である。 成人期にも約30%に症状が継続することが報告され、適切な時期に適切な治療選択を行う必要性が指摘されている。 治療を行うには、まず適切な診断を行う必要があるが、ADHDには、自閉性スペクトラム障害(ASD)、双極性障害、学習障害など鑑別すべき疾患が数多くある。 そこで、診断のための客観的な指標が必要である。 そこで、今回我々のシンポジウムにおいて、脳画像の手法を用いてADHDの診断のための客観的指標の開発に結び付くような研究発表を企画した。 安静時の機能的磁気共鳴画像と構造画像を用いたADHDと定型発達児の判別を目指した研究、また、読字障害とADHDの注意機能ネットワークの共通点と相違を見出す研究、また、成人ADHDとASDを光トポグラフィーを用いて鑑別する事を目指した研究の発表を行った。


【受賞者】白坂 知彦

【発表概要】
・国際学会名  :WPA REGIONAL CONGRESS OSAKA Japan 2015(予定)
・シンポジウム名:Internet addiction and related problems in Asia
・発表内容   :近年インターネット依存、問題使用は世界中で重大な問題となっており臨床家やメンタルヘルス研究者たちにとって注目すべき分野となっている。
とくにこれらの行動依存はアジア諸国で急速な広がりを見せている。韓国では6~19歳までの2.1%がインターネット依存症と推定され、中国では1000万人、日本でも271万人がインターネット問題使用群と推定されている。
これらの行為依存は他の物質関連依存と同様の症状をしめす、過剰使用、コントロール障害、渇望感、耐性などである。
これらは、低い自己達成感や社会的な孤立、機能不全家族、近親家族の暴力など幅広く悪影響をもたらす。しかしながら、実際の調査研究は少なく、途に就いたばかりである。
これらの問題を解決するため、今回のシンポジウムでは日本、韓国、台湾、タイランドのシンポジストを迎え、多施設共同研究を見据えた各国の問題点、情報の共有、今後の研究の焦点など様々な議論を行う。

2013年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】沼田 周助

【発表概要】
・国際学会名:Society of Biological Psychiatry 68th Annual Scientific Meeting
・発表演題名:DNA Methylation Signatures of Prefrontal Cortex and Peripheral Leukocytes in Schizophrenia
・発表内容:統合失調症のDNAメチル化修飾異常を死後脳ならびに末梢血を用いて同定し、異なる組織間で共通するメチル化異常を報告した。


【受賞者】岩田 正明

【発表概要】
・国際学会名:Neuro 2013
・発表演題名:Microglia senses psychological stress: target for novel antidepressant agents
・発表内容:Major depressive disorder (MDD) patients express volume loss in cortical and limbic brain regions, due to the reduction of synaptic density and the decremental numbers of neurons. Pre-clinical studies have demonstrated that stress causes morphological alterations such as suppressed neurogenesis. Protection against this neuronal damage is an important strategy for treating MDD, though the mechanisms by which stress causes this neuronal damage is not well known. Serum levels of pro-inflammatory cytokines such as interleukin 1β (IL-1β) are elevated in MDD patients, while chronic inflammatory diseases such as diabetes show high comorbidity with depression. Taken together, this suggests that inflammation is involved in the pathology of depression. We have previously shown that acute stress increases IL-1β in the hippocampus (HIP), and IL-1β suppresses neurogenesis and shows depressive-like behavior in rodents. The synthesis and release of IL-1β are regulated by P2X7 receptor in microglia, the primary source of this cytokine in brain. In support of this, ATP is rapidly up-regulated by stress in HIP. To further evaluate the role of the ATP-P2X7-IL-1β signaling, we examined the effect of A804598, a selective P2X7 receptor antagonist. We found that the inhibition of hippocampal neurogenesis caused by acute stress was completely blocked by A804598. Moreover, depressive-like behavior in the chronic stress model was reversed by chronic administration of A804598. Downstream of the P2X7 receptor is the NLRP3 inflammasome, a large protein complex that controls activation of IL-1β. Thus, we hypothesize that stress increases ATP release, which is sensed by microglia, activating NLRP3 inflammasome and increasing the release of IL-1β, causing depression. Because of the role of NLRP3 inflammasome as a broad range sensor of danger substances, it may be a promising target for treatment of depression.


【受賞者】野田 賀大

【発表概要】
・国際学会名:The 11th World Congress of Biological Psychiatry (WFSBP)
・発表演題名:Potentiation on quantitative electroencephalogram following prefrontal repetitive transcranial magnetic stimulation in major depression
・発表内容:薬物治療抵抗性うつ病患者25名に対し、左背外側前頭前野を標的とした高頻度反復磁気刺激療法(rTMS)を10セッション施行し、そのrTMS治療の前後で、安静脳波の定量化(QEEG)、 HAMD17項目による臨床評価、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)による認知機能評価を行った。先行研究から、rTMS治療の生理学的メカニズムとして、刺激部位及び刺激部位と機能的に結合している領域における神経の可塑的変化が強く示唆されているが、特に神経生理学的には長期記憶増強(LTP)変化が、そのメカニズムの1つとして注目されてきている。そのような背景から、rTMS治療がうつ病患者の臨床・認知機能に与える影響と脳波に与える影響をそれぞれ評価し、それらの間にLTP様変化を示唆するような臨床相関が認められるかどうかを調べることを研究目的とした。その結果、rTMS治療により前頭前野領域において、デルタ・シータ・アルファパワーの有意な増加を認め、相関解析では、刺激部位近傍のアルファパワーの増加とWCSTにおける認知機能の改善との間に有意な臨床相関を認め、刺激部位対側では、アルファパワーの増加とHAMD上の臨床症状の改善との間に有意な臨床相関を認めた。今回の研究結果から、rTMS治療による定量脳波上のパワー増高効果と臨床・認知機能改善との間に有意な相関を認め、これらの背景にはLTP様変化を示唆する治療メカニズムが関与しているのではないかと考えられた。


【受賞者】西田 圭一郎

【発表概要】
・国際学会名:11th World Congress of Biological Psychiatry
・発表演題名:Dysfunction of salience network in frontotemporal dementia using EEG microstates
・発表内容:近年functional MRI (以下fMRI)と定量脳波 (以下qEEG)の同時測定による研究が注目を浴びており、これらの研究により、脳領域間の機能的結合を表すと考えられているresting state network (以下RSNs)とEEG microstate mapとの関係が明らかになってきている。 今回我々は前頭側頭型認知症(以下FTD)のmicrostate mapのパラメーター(duration, occurrence)を求めて健常者のそれと比較検討したところ、先行してfMRIのRSNsで得られていた知見 (FTDではsalience networkの障害を認める)と同様の結果を示した。これはsalience networkの存在を示したSeeleyらの研究、及びmicrostateとfMRIの関係をみたBritzらの報告を支持するものであった。またoccurrenceを用いて、microstate syntaxと呼ばれているマップの連続性をみる解析を行ったところ、FTDではswitchingの役割を担うと推察されているmap Cから他のmapへの移行が、健常者のそれと比較すると、健常者でみとめられた移行biasがなくなっていることが分かった。これは時間的に10msecの単位から測定できる脳波の特徴を生かした解析方法であり、今後他の疾患や研究への応用が期待される。


【受賞者】安藤俊太郎

【発表概要】
・国際学会名: XXVII World Congress of International Association of Suicide Prevention
・発表演題名: Psychosocial risk and protective factors of suicidal ideation among clinical patients with depression
・発表内容: 自殺予防をテーマとした国際学会では最も大規模なものであり、2年間に1回開催され、学会期間は6日間に及ぶ。 自殺予防について様々な手法・観点からの研究発表がなされ、その分野は疫学・生物学的・心理学的研究など多岐にわたり、世界の主要な研究者が一堂に会して発表を行う。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】内田 裕之

【発表概要】
・国際学会名:Asian College of Neuropsychopharmacology
・シンポジウム名:Bridging Brain Imaging Data to Real-World Clinical Practice(脳画像データの実際の臨床への橋渡し)
・発表内容:脳画像は、精神疾患における病態生理学の理解および向精神薬の作用機序に関する理解を深める上で大きな可能性を秘めている。また、近年のモデル化技術の発達により、脳画像データをテーラーメイド医療に適用することが可能となった。このセッションでは、画像研究から得られるエビデンスを統合し、どのように実臨床の世界に実践的に取り込むことができるのか議論する。 まず、中島医師がドパミンD2受容体密度と認知機能についてレビューを行い、統合失調症における認知機能向上のための抗精神病薬の減量の可能性について議論する。 次に、Kim医師は、薬力学的観点から向精神薬による受容体占拠の予測の可能性を論じ、その妥当性に関するPK-PDモデルについて説明する。 三番目に、Chou医師は気分障害におけるセロトニン伝達物質の調節に影響を与えうる因子に関して発表し、抗うつ薬の開発に関して新しい見解を提供する。 最後に、内田医師は、統合失調症における個別化された抗精神病薬治療を達成するため、薬物動態学およびPET研究から得られるエビデンスの統合を行う。 また、このセッションのスピーカーは異なる4ヶ国出身であることから、新しいエビデンスの提供に加えて、この臨床的に重要なテーマを比較文化的な観点からも議論する。


【受賞者】岸本泰士郎

【発表概要】
・国際学会名:Asian College of Neuropsychopharmacology (AsCNP)
・シンポジウム名:Phase Specific Treatment of Schizophrenia: Evidence and Clinical Practice
・発表内容:Medical decision making about clozapine and long-acting antipsychotic injections: results from a global survey

2012年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】 中村 充宏

【発表概要】
・国際学会名:American Psychiatric Association Annual meeting 2012
・発表演題名:Mortality of neuroleptic malignant syndrome induced by typical and atypical antipsychotics: An analysis from the Japanese Diagnosis Procedure Combination database
・発表内容:定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬による悪性症候群の比較検討

シンポジウム組織発表部門

該当者無し

2011年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】 五十嵐 健史

【発表概要】
・国際学会名:2011 World Psychiatric association Regional Meeting
・発表演題名:A clinical and polysomnographic study of childhood-onset restless legs syndrome with hyperactivity
・発表内容: 成人における不眠の原因のひとつとして知られるレストレスレッグス症候群(RLS) だが、小児においては診断および治療について十分に実態がわかっていないのが現状である。本邦では2010年にpramipexoleが唯一RLSの保険適応となった。20余例の小児へのpramipexoleの治療経過と第一選択薬としてなり得るかを考察する。


【受賞者】 久我 弘典

【発表概要】
・国際学会名:3rd World Congress of Asian Psychiatry(WCAP) 2011
・発表演題名:Actual problems of disaster psychiatry on the model of the earthquake and tsunami in Japan, 2011
・発表内容: 上記WCAPのAFPA Precongress Education and Training Fellowship Sessionにて、日本の災害精神医療に関して発表をした。 日本で大震災が起こって半年が経つが、実際に初動隊として現場に派遣された立場から、心のケアチームによる支援の現状を報告し、また、現在の日本の災害精神医療の問題点および今後の展望を考察した。


【受賞者】 櫻井 準

【発表概要】
・国際学会名:世界精神医学会 地域大会
・発表演題名:The Current Psychiatric Postgraduate Training in Japan: A view from young psychiatrist
・発表内容: 本邦における精神科の初期研修教育の現状と課題


【受賞者】 山嵜 武

【発表概要】
・国際学会名:世界精神医学会 地域大会
・発表演題名:Case report: Consensus on diagnosis and intervention symposium
・発表内容: 提示されたケースレポートの症例に対する診断・見立てと治療計画について

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】 内田 直樹

【発表概要】
・国際学会名:3rd World Congress of Asian Psychiatry (WCAP)
・シンポジウム名:AFPA Precongress Education and Training Fellowship 3rd WCAP
・発表内容:「How to make an oral presentation」というタイトルで、口頭発表の行い方についてレクチャーを行いました。 また、このセッションにおいては座長も行っています。

2010年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】 中前 貴

【発表概要】
・国際学会名:16th Annual Meeting of the Organization for Human Brain Mapping
・発表演題名:Diffusion Tensor Imaging and Tract-Based Spatial Statistics in Obsessive-Compulsive Disorder
・発表内容: 強迫性障害患者30名と健常者30名を対象に拡散強調画像を撮像し、Tract-Based Spatial Statisticsという最新の解析法を用いて群間比較を行ったところ、強迫性障害患者において脳梁前部におけるFractional Anisotropyの低下が見られた。 脳梁前部における白質の異常が強迫性障害の病態生理に関連している可能性が示唆された。

シンポジウム組織発表部門

【受賞者】加藤 隆弘

【発表概要】
・国際学会名:World Psychiatric Association (WPA) International Congress 2010 Beijing
・シンポジウム名:"Sociocultural Changes and Mental Health among Younger Generations in Asia"
・発表内容:アジア諸国はいま急激な近代化の波が押し寄せており、急速に社会文化基盤が変化しており、こうした背景の元に育つ10代20代の若者に、新しい様々な精神保健上の問題が報告されている。 申請者(加藤)は、こうした問題・課題を討議する場の重要性を認識し、その第一歩として、本学会において、西南大学の新福尚隆教授の協力を得て「Sociocultural Changes and Mental Health among Younger Generations in Asia」という国際シンポジウムを企画組織した。
シンポジウムには、日本・台湾・中国から若手精神科医を演者に迎え、各国の現状と課題を報告してもらい、最後にProfessor Norman Sartorius(元WPA会長)に指定討論者として参加して頂き、エクスパートの立場からコメントを頂く。 申請者(加藤)は新福教授とともに司会を務めるとともに、本シンポジウムの中で"International Questionnaire Survey with Case Vignettes of Japan’s Youth Depression and Hikikomori―How the Cases are evaluated by Foreign Psychiatrists?―"という演題名の発表を行う。
本発表は、国内外の精神科医に対して日本で話題になっている若者のうつ病やひきこもりのビネットを提示した質問紙調査の報告である。 日本からの発表者である松本良平氏は、"Toward the Reorganization of Concept “Hikikomori” and Consideration of its Possibilities as a New Clinical Term"という演題で、日本のひきこもり現象を精神医学的観点から捉え、現在の課題と問題点に焦点付けて発表する。

2009年度 受賞者

個人発表部門

【受賞者】 岡久 祐子

【発表概要】
・国際学会名:第9回世界生物学的精神医学会国際会議
・発表演題名:Association between the Leukemia inhibitory factor Gene and Schizophrenia and Cognitive Functions
・発表内容:インターロイキン6ファミリーに属するLIF(白血病阻害因子)遺伝子が破瓜型統合失調症の発症脆弱性に関連すること,さらに、この多型を有するとウィスコンシンカードテストによる作業記憶の障害にも関与することを発表した。


【受賞者】 白坂 知彦

【発表概要】
・国際学会名:2nd World Congress of Asian Psychiatry
・発表演題名:How do neophyte psychiatrists become interested in alcoholism? : A Survey of early-career psychiatrists in Japan.
・発表内容:-はじめに
 近年の不況などを反映し、アルコール依存症患者は80万人以上と推定され、大きな社会問題となっている。 しかしながら、わが国では依存症治療のための専門施設は不足しており、またアルコール関連問題障害の治療に関心を持つ精神科医は少なく、予防・早期発見・介入に至る過程は依然として途上にあるといわれている。 そこで我々は182名の若手精神科医を対象としてアルコール関連問題障害に対する臨床経験量、専門知識、興味、専門志望性などを9段階のLikert尺度を用いて評価を行った。
-結果・考察
 アルコール関連問題障害は他疾患(統合失調症、うつ病、認知症など)に比較して低い臨床経験量を示す一方。 臨床経験量と専門志望性において強い相関(r=0.776 P<0.001*)を認めた。若手精神科医がアルコール関連問題障害に興味を持つには、より多くの臨床経験が必要である思われる一方、現状では、アルコール関連問題障害患者、家族への早期介入や医療への導入が大きな課題となっている。 一般市民、医療、福祉関係者に対し、適切な啓蒙活動を進める事によって、患者家族に対しより速やかに社会的、医療的介入を進める事ができ、若手精神科医に対してはより多くの症例を経験する事につながり、関心をもつ精神科医を育成する事が出来る可能性が示唆された。


【受賞者】 杉田 篤子

【発表概要】
・国際学会名:23rd European College of Neuropsychopharmacology Congress
・発表演題名:Three polymorphisms of eNOS gene and plasma NO3 levels
・発表内容:3つの血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子多型(SNP; rs2070744, rs1799983, VNTR in intron 4)とうつ病の病態との関連を検討した。 うつ病と健常人対照者の間での3つの遺伝子多型の分布に相違はなく、うつ病患者におけるeNOS遺伝子多型とハミルトンうつ病評価尺度や足関節上腕血圧比のスコアとの関連はなかった。 しかし、うつ病患者の血漿中NO3濃度と2つのeNOS遺伝子多型(rs207044、VNTR in intron 4)の関連を認めた。


【受賞者】 田中 増郎

【発表概要】
・国際学会名:2009 アジア環太平洋アルコールおよび嗜癖会議
・発表演題名:Questionnaire survey of drinking-driving directed at the treating and/or the mutual-aid-groups-attending alcoholics.
・発表内容:自助グループに参加しているアルコール依存症患者の飲酒時代における飲酒運転傾向を分析し、対策を提案する。

シンポジウム組織発表部門

 該当者無し

このページの先頭へ