公益社団法人 日本精神神経学会

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学会案内|About Japanese Society of Psychiatry

理事長からの年頭の御挨拶

更新日時:2024年1月31日

2024年の年頭にあたって

 昨年2023年6月に久住一郎先生の後を受けて、本学会の理事長を拝命している三村です。皆さま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。現在、会員数は2万人を超え、精神科関連の主要7団体(いわゆる精神科七者懇)の中でも最大組織である本学会を運営していく立場として、一言年頭の所感を述べさせていただきます。

 まずは元旦の夕刻、能登半島を襲った地震について、亡くなられた方々には衷心より哀悼の意を表するとともに、被災された方々、避難されている方々にもお見舞いを申し上げます。数年来続いたCOVID-19感染症の蔓延にようやく終息の兆しが見えてきたところで、年明け早々の地震には日本中が驚かされました。連日の報道でも、被災地域では断水や交通手段の途絶、さらに大雪など、悪条件が重なり、医療はもとよりあらゆる面で困窮した生活が続いておられることと拝察します。

 本学会としても、迅速にホームページに特設サイトを立ち上げ、情報共有を図るととともに、災害支援委員会(担当理事:富田博秋先生、相澤明憲先生)を中心に関係諸機関と協働しながら支援体制の構築に着手しています。ただ、本学会は直接的な支援というより、被災地域周辺の医療機関、DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)、日本精神科病院協会や講座担当者会議等への側面サポートなどを行っています。これまでのさまざまな災害の経験からも、被災地域へのメンタルヘルス支援はゆっくりスタートしても、じっくりと息長く続けていく必要があると感じています。

 1月3日の朝日新聞朝刊に帚木蓬生(森山成彬)先生のインタビュー記事が出ていました。
先生は以前から簡単には答えの出ない状況の中で、そのような事態に耐えること、安易に性急に答えを求めないことの重要性をネガティブケイパビリティとして強調しておられます。「なぜ」「どうして」となりがちな地震後のこころの安定を保っていく場合にも、またほとんどあらゆる精神科的な治療場面でも、まさにこのような視点が重要だと思います。一方、日本精神神経学会が現在直面しているさまざまな課題を解決していくには、ネガティブケイパビリティとポジティブケイパビリティとをうまくバランス取りしていくことが求められていると考えます。私自身は当面取り組むべき問題に全力で立ち向かって解決策を模索しながら、やがて次世代の有為の方々につないでいきたいと願っています。どうぞ本年も皆さまには引き続きのお力添えと活発な学会活動へのご参加をお願いいたします。

 私は現在、慶應義塾大学の予防医療センター(人間ドック)に所属しています。このセンターでは「一人ひとりの人生と共に歩む医療を」をスローガンとして、「健康寿命の延伸の一翼を担うこと」、「高度にパーソナライズされた健康管理プログラムを開発・実践すること」、「予防医療の新たな価値を創造すること」を基本理念としています。精神科医である私が人間ドック部門で役に立つのかと訝る向きもあるかもしれません。しかし、これらのコンセプトのいずれにおいてもメンタルヘルスはきわめて重要です。まさにPrinceらの言うように“No health without mental health”(メンタルヘルス抜きで健康は語れない)1)。困難な時代こそレジリエンスを高めて、あらゆる人々のメンタルヘルスを増進していくことが求められていると思います。

1)    Prince M, et al. No health without mental health. Lancet, 370: 859-877, 2007.

 

公益社団法人日本精神神経学会
理事長 三村 將

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