公益社団法人 日本精神神経学会

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お知らせ

理事長からの年頭の御挨拶

平成27年1月吉日

 皆様におかれましては、健やかな新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。年頭にあたり、本学会の課題と活動概要とをご説明して、会員諸氏のご理解を得たいと思います。

 昨年(2014年)5月に日本専門医機構が発足し、我が国の専門医制度が大きく変わろうとしています。これまで各学会が認定していた専門医を、これからは第三者機関としての日本専門医機構が認定することになります。専門医機構では、平成29(2017)年度から研修を開始する専攻医を対象として、平成32(2020)年度から専門医機構による認定にしたいとの意向のようです。本学会も専門医機構の18基本領域の一つであり、精神科専門医制度にも大きな手直しが必要となります。

 精神科専門医制度は、平成6(1994)年の「学会認定制に関する答申」を踏まえ長い議論をかけて、平成18年度に発足したものであります。現在10,510名の精神科専門医が臨床現場で活動していますが、やがて10年を迎える精神科専門医制度が、初期の目的に適ったものになっているか、認定された専門医の質はどうか、さらに、指導医の資格や研修施設の適格性など、質の検証をすべき時に来ていると思います。患者さんに理解され、その受診行動に役立つ専門医制度設計を掲げる専門医機構との協議を重ねています。本年1月の理事会において、精神科専門医制度改革の概要を決定しましたのでご高覧下さい
 今年からは、これまでの精神科専門医制度の基本理念を維持しながら、専門医機構からの条件とすり合わせる作業をしていくことになります。最大の変化は、これまでのように一つの研修施設ではなく、専門医研修施設群として複数の施設が協力して専攻医の研修に協力するプログラムを提供することです。どのような研修施設群を構成するかについては、これから議論を進めていきたいと考えています。
 これまで本学会が認定した精神科専門医は、基本的にはその資格を維持できるものと考えていますが、更新に際しては専門医機構からの条件を満たす必要があります。 質の良い精神科専門医の育成の為の研修プログラムの策定を目指して活動していきたいと思っていますので、ご協力の程お願い申し上げます。

 平成26年度診療報酬改定作業において、向精神薬の多剤併用処方をもって通院・在宅精神療法の減算措置をとる方向が打ち出されようとしていることが伝わってきましたので、学会執行部では、精神療法と薬物療法とは別々に算定されるべきものであり、処方内容で精神療法を減算することは精神科診療の根幹にかかわる誤った議論であることを主張しました。そして厚労省との折衝を重ね、最終的には、多剤併用処方の場合には処方・処方箋料から減算することとなりました。また、本学会は向精神薬の多剤併用療法の是正を推進するために向精神薬処方に関する研修の場を提供しました。このような対応は、多くの会員のご理解を得て、6,848名方(2014年12月末現在)にe-ラーニングあるいは講習を受けていただきました。これらの方は本学会が発行した認定証により、多剤併用処方がやむを得ず必要となる場合にも減算措置を回避できることとなりました。これは診療場面において精神科専門医が果たすべき責任を示しえた一つの事例です。本年も、より有効かつ安全な精神科薬物療法をめざし、研修および処方実績調査を行う予定です。ご参加、ご協力いただきますようお願い致します。

 このほかにも、改正道路交通法の施行に伴い精神科医が主治医としてかかわる際の「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」を作成したこと、「男女共同参画推進宣言」や「精神科医師の倫理綱領」の公表、さらには「心理職の国家資格化」に関する対応など、学会執行部としてはいろいろな課題をこなしてきましたが、本年も引き続き活動すべき課題が山積しております。

 昨年度は、米国精神医学会によるDSM-5に対応して、本学会用語検討委員会(神庭重信委員長)によるDSM-5の病名・訳語の翻訳ガイドラインを公表しました。現在はWHOによるICD-11作成作業が進められており、本学会もICD-11の中に我が国の精神医学の意見が反映されるように協力しています。
 昨年度のパシフィコ横浜での第110回学術総会(宮岡等大会長)には約八千人の参加がありました。本年6月4-6日には大阪国際会議場において第111回日本精神神経学会学術総会(岸本年史大会長)が開催されます。また、学術総会に合わせてWPA Regional Congressも同時に開催いたしますので、多数ご参集ください。

日本精神神経学会
理事長 武田雅俊

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