公益社団法人 日本精神神経学会

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見解・提言/声明/資料|Advocacy

2021年度専攻医募集に関する緊急声明(精神科七者懇談会)

更新日時:2020年4月2日

一般社団法人 日本専門医機構 理事長 
寺本 民生殿

精神科七者懇談会
公益社団法人日本精神神経学会 理事長 神庭 重信
精神医学講座担当者会議 会長 福田 正人
公益社団法人日本精神科病院協会 会 長 山崎 學
国立精神医療施設長協議会 会長 女屋 光基
公益社団法人全国自治体病院協議会 会長 小熊 豊
公益社団法人日本精神神経科診療所協会 会長 三木 和平
一般社団法人日本総合病院精神医学会 理事長 保坂 隆

 

2021年度専攻医募集に関する緊急声明 

 精神科七者懇談会は、厚生労働省医師需給分科会が算出した「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数」を根拠とした都道府県別診療科ごとの2021年度シーリング案(資料1)に強く反対する。

 精神科七者懇談会(以下、七者懇)は、「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数」(以下、「将来必要な医師数」)を根拠として、貴機構が都道府県別診療科ごとに専攻医募集定員を決めることに反対してきた。そして、必要精神科医師数の算出方法には数々の過誤が含まれており、不正確なものであることを詳細な資料としてまとめ、前厚生労働大臣宛てに提出した(資料2)。貴機構で行われた令和1年8月1日第1回2021年度専門医養成数に関する検討協議会のヒアリングにおいて、貴機構から、公的医療を担う精神科医療の特殊性を含めた具体的な数字を提出するように要請されたため、日本精神神経学会の専攻医募集定員に関する検討班では、必要精神科医師数を独自に算出し、これを提出した(資料3)。その結論は、「精神保健指定医業務等を勘案すると、『将来必要な医師数』を15%から20%増やす必要がある」というものである。

 しかるに、今回の第5回2021年度専門医養成数に関する検討協議会全体会議で提出された、2021年度の専攻医募集定員(資料1)をみると、七者懇や日本精神神経学会の意見が全く取り入れられていないばかりか、東京都、福岡県の定員がさらに激減され、新たに秋田県や島根県にもシーリングがかけられている。秋田県、島根県は自殺率が高く広域の医療圏を有する県である。ここに象徴的に現れているように、地域の実情を全く考慮することとなく、シーリングをかける手法には強い憤りさえ感じる。

 ここではすでに指摘した「将来必要な医師数」が含む過ちの多くを繰り返さないが、人口あたりの精神科医の比率は、2016年にOECD36カ国中26位と低位であるにもかかわらず、「将来必要な医師数」では、現状でもすでに日本の精神科医は過剰であると算出されている。このことは精神科医療の軽視以外の何物でもない。

 また、2024年に必要とされる見込み数は根拠の乏しいものであり、これをもって毎年のシーリング数を算出することにも強く抗議する。社会状況・経済状況・産業構造とともに疾病構造は変化する。実際に、患者調査によれば、精神疾患の患者数は、1999年には204万人であったのが、2014年には392万人と約2倍に増加している。うつ病、認知症、発達障害の増加に加え、ギャンブル依存、児童虐待、高ストレス者の面談、災害派遣精神医療、自殺予防、ひきこもりなど、精神保健福祉分野の要請は多様化し増大している。

 このように精神科医療のニーズが急増する状況が生じているにもかかわらず、良質な専門医の育成に大きくバイアスがかかれば、精神科医療とりわけ精神科救急体制の維持、さらには国民の精神保健の向上に重大な影響を与えることが危惧される。

 以上により、七者懇は今回の「将来必要な医師数」を根拠とした都道府県別診療科ごとのシーリングに強く反対し、再度議論する場を設けることを要求する。

以上

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