公益社団法人 日本精神神経学会

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学会活動|Activities

Volume 19, Number 1, February 2020

更新日時:2020年6月19日

Editorials

Euthymia: why it really does matter
正常心理:なぜそれが本当に重要なのか

<要旨>
本稿では、ポジティブな感情、意味合いと目的、能力、成果、人間関係に満ちた人生、という意味での正常心理の促進が精神医学やメンタルヘルス専門職から派生するべきであるという視点を支持し、その理由を挙げている。そして、正常心理と病的心理が同一ディメンションであれ異なるディメンションであれ、正常心理という切り口から精神疾患をとらえる視点を促進することの重要性が述べられている。

〔翻訳:北岡 淳子〕
 

Special Articles

Economics and mental health: the current scenario
経済と精神保健:現在のシナリオ

<抄録>
経済と精神保健は絡み合っている。精神的な不健康が経済に与える莫大な影響についてはエビデンスが蓄積されており、経済状況が精神保健に効果を及ぼすことも認識されるようになっているが、それに加えて、政府や他の予算関係者は彼らの決定をサポートする経済的なデータをより強調するようになっている。我々はこの論文で、経済的評価(費用対効果分析、費用効用分析、および関連する技法を含む)が、精神保健の政策戦略発展のための情報を提供し、サービス提供者や資金提供者が関心を持つ治療やケアレベルにおける結果を把握するためのエビデンスに貢献することを示す。我々は人間の生涯という視点に立ち、コストと結果を分析することで、精神保健に関連する経済的なエビデンスを更新し振り返りを行い、急を要する様々な課題に光を投げかける。過去30年で精神保健の経済が急速に成長してきたことは明らかだが、大きな理解の隔たりが残っている。生涯を通して、周産期のうつの識別と治療、小児期と思春期における精神保健上の問題のリスクを減らすこと、うつ病のための治療(とりわけ精神療法)を拡充すること、精神病患者に対するコミュニティに根差した早期の介入と雇用支援、そして認知症に対する認知刺激と介助者への多面的な介入、これらの分野には明確なエビデンスが存在する。研究からエビデンスを見出そうと試み、それを政策や実践的な推奨に結び付け、そこからよりよい治療やケアをする上で現実的に実現させるときに直面する、主だった困難について考察する。

<要旨>
経済と精神保健は密接に絡みあっていて、相互に対する影響は大きなものがあるが、これまで蓄積された両者の関係のエビデンスを更新し、振り返ることで、エビデンスを実際の臨床に活用するときに直面する困難や問題点を取り上げている。

〔翻訳:増田 将人〕

 

Dopamine and glutamate in schizophrenia: biology, symptoms and treatment
統合失調症におけるドパミンとグルタミン酸:生物学、症状、治療

<抄録>
グルタミン酸およびドパミンシステムは神経間のシグナル伝達に関して明確な役割を果たしており、どちらも統合失調症の病態生理に大きく関与すると考えられている。本稿では、統合失調症の病因において両システムを関連させた研究を評価した。死後、前臨床、薬理学および生体内のニューロイメージングの研究から得られたエビデンスを調査した。薬理学的および前臨床研究では両システムとの関連性を認め、ドパミンシステムの生体内イメージング では統合失調症患者の線条体において、ドパミン合成や放出能力が上昇していることが確認されている。グルタミン酸システムのイメージングおよび他のドパミンシステムに関する研究の結果は一貫性が低く、方法論的制限や疾患の不均一性が原因であると考えられた。エビデンスの統合により統合失調症の遺伝的および環境的リスク因子がグルタミン酸作動性およびドパミン作動性機能の破綻の根底にあることが示された。しかし、遺伝的影響がグルタミン作動不全の根底にあるかもしれないものの、ドパミンシステムに直接関与する遺伝的リスクをもつ変異はほとんどなく、異常なドパミンシグナル伝達は主に他の要因による可能性が高いことが示された。2つのシステムが相互作用する神経回路やそれらの破綻から精神症状が引き起こされる機序について考察した。また、既存の治療法が機能するメカニズム、および、最近の研究がどのように新規薬物療法開発の機会に光をあててきたか、についても議論した。最後に、統合失調症におけるグルタミン酸およびドパミン機能の性質に関して未だわかっていないこと、新規治療開発を進めるために達成すべきこと、などこの分野における未解決の問題について検討した。

<要旨>
本稿では、グルタミン酸およびドパミンシステムに関連した研究を評価し、統合失調症の遺伝や環境のリスク因が両システム不全に影響を及ぼしていることを示すとともに、両システム不全から統合失調症に至る機序や既存の治療法が機能する機序などについて議論している。また、両システムに関して未だ解明されていない点や新規治療開発を進めるために達成されるべき点などの未解決の問題についても考察、検討している。

〔翻訳:下島 里音〕

Perspectives

Gender competence and mental health promotion
ジェンダー能力及びメンタルヘルスの促進

<要旨>
本稿では、Gender Competence(ジェンダー能力)の概念について述べられており、その背景として昨今においても、性差に基づく固定観念が女性のライフコース全般におけるメンタルヘルスに悪影響を及ぼしていることが述べられている。研究者、臨床医、公衆衛生の専門家がジェンダー能力を推進することで、差別や暴力、脱価値化や固定観念のない平等な社会を実現することが期待されている。

〔翻訳:下島 里音〕

 

Engagement of ethnic minorities in mental health care
メンタルヘルスケアにおける民族的マイノリティの参加

<要旨>
民族的マイノリティへのメンタルヘルスケアには格差があり、十分な治療に至らないことが多い。臨床における共有された意思決定(Shared decision making)や、患者にとって重要な治療目標を設定しそれを目指すこと、そして問題解決をする上での患者の文化的・社会的視点を理解することを、ケアする者が心がければ、民族的なマイノリティの人たちをメンタルヘルスケアにより深く参加してもらうことにつながるだろう。

〔翻訳:増田 将人〕

 

Leveraging collaborative care to improve access to mental health care on a global scale
世界規模でメンタルヘルスケアへのアクセスを増進させるための、協働ケアの活用

<要旨>
協働ケアはプライマリケアの様々な場面において、抑うつ気分や不安といったありふれた精神的不調に関する、個別性に沿いかつエビデンスに基づいた治療法を提供するために、多職種による協働を活用したモデルである。精神科医の不足は世界的に深刻であり、協働ケアのような、希少な資源を活用しメンタルヘルスに関する専門知識をもっとも必要とされる所に広めていく方法に関心が集まっている。多数の新たな研究によって、協働ケアが障壁を克服し、資源の乏しい環境で適応され運用されうることが示唆されている。

〔翻訳:熊谷 航一郎〕

 

The role of new technologies in monitoring the evolution of psychopathology and providing measurement‐based care in young people
精神病理の進行を観察し、評価に基づいたケアを若年者に提供する新しい技術の役割

<要旨>
多くの気分障害や精神病性障害の発症は思春期にあり、社会的、教育上の障害に関連している。個人のデジタルデバイスの発達・普及により、若年者の精神疾患の種類や段階、希死念慮や自殺行動、物質乱用などの精神病理をリアルタイムで追うことができるようになった。これは従来の単純化された縦断的な研究を超えたデータを提供し、倫理的な配慮を行った上であるならば、若年者に限らず、効果的なメンタルヘルスケアをもたらすツールとなりうる。

〔翻訳:増田 将人〕

Forum –The Evolving Science of Euthymia: Concepts, Assessment and Interventions

The pursuit of euthymia
精神安寧状態(ユーシミア)への追及

<抄録>
精神科医は、臨床的判断において患者が示すポジティブな特性を考慮はしているが、現在の評価や治療戦略は精神的な機能障害に焦点があてられている。ユーシミアは、ポジティブ感情と心理的ウェルビーイング、すなわち、精神的な力のバランスと統合(柔軟性)、それに応じて未来を形作るための行動や感情を導く統一的な人生観(一貫性)、ストレスへの抵抗力(不安や葛藤へのレジリエンスと耐性)の存在を指す診断横断的な構成要素である。ユーシミアとその構成要素の評価が臨床的に重要な意味を持つことを示すエビデンスが増えてきている。特定の尺度(臨床面接および質問紙)が、マクロ分析および病期分類を包含する臨床的評価戦略に含まれている場合もある。ユーシミアの追求は、特定の精神障害に対する治療的介入としては考えられないが、個別化された治療計画の中に組み込まれる診断横断的戦略として考えることができる。ポジティブ感情や心理的ウェルビーイングを高めることを目的とした多くの心理療法的手法(ウェルビーイング療法、マインドフルネス認知療法、アクセプタンス&コミットメント・セラピー等)が開発され、無作為化比較臨床試験で検証されている。その結果、自己の肯定的評価、継続的な成長と発展の感覚、人生には目的があり意味のあるものであるという信念、他者との関係への満足感、人生を効果的に管理する能力、自己決定の感覚につながる特定の介入によって、持続的な幸福とレジリエンスが促進されることが示された。

<要旨>
ユーシミアは、ポジティブ感情と心理的ウェルビーイングの存在を指す診断横断的な構成要素である。ユーシミアとその構成要素の評価が臨床的に重要な意味を持つことを示すエビデンスが増えてきており、それらによって持続的な幸福とレジリエンスが促進されることが示された。

〔翻訳:河岸 嶺将〕

 

 

Commentaries

Constructing a liberated and modern mind: six pathways from pathology to euthymia
解放された現代の心の構築:病理からユーシミアまでの6つの道筋

<要旨>
ACTの基礎となるPFM(Psychological Flexibility Model:心理的柔軟性モデル)は、6つの既知の病理的変化プロセスと6つの既知のポジティブな心理的成長プロセスを組み合わせたものである。PFMのこのペアリングで見過ごされがちなのは、人間の深い切望によって結ばれているということである。病理的な現象は、誤って取り扱われた切望と考えることができる。この切望の存在に気付き、欲求を健康的に満足させる方向へと転換する方法を学べば、健康的な欲求への対応不全が、むしろ、ユーシミアへの道を照らしてくれる。

〔翻訳:河岸 嶺将〕

 

Specificity in the pursuit of euthymia
ユーシミアの追及における特異性

<要旨>
ウェルビーイング・セラピー(WBT)やマインドフルネスに基づく認知行動療法(MBCT)やアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)はその治療の方法や目標が疾患の治療に留まらず、その先のウェルビーイングを確保することを目標としているため、ユーシミアへの追及を訴えかけているように見えるが、何をもってウェルビーイングが向上しているとするかが明確ではなく、特異性に欠けることを指摘している。筆者は例を挙げ、精神科における治療は全て、FavaやGaudiが示すようなウェルビーイングを目指すべきではないかと述べている。

〔翻訳:河岸 嶺将〕

 

Why the field of moral philosophy must guide any discussion on well‐being
道徳哲学の分野がウェルビーイングに関するあらゆる議論の指針とならなければならない理由

<要旨>
著者はウェルビーイングを視点にしたFavaらの議論を歓迎しつつも、その議論は十分に注意して行うべきであると警鐘を鳴らしている。哲学だけがウェルビーイングの本質について、認識論的なツールを開発し、膨大な知識を生み出し、専門家を養成してきたにも関わらず、他の分野ではすでに無効とされているアプローチを知らずに用い潜在的な害をなしてきた歴史があり、精神科では同じような過ちを犯してはならないとしている。

〔翻訳:河岸 嶺将〕

 

Euthymic suffering and wisdom psychology
正常気分の苦しみと、知恵の心理学

<要旨>
すべての困難やネガティブな気分が、自動的にICD10で定義される病気とみなされるわけではなく、健康的な範疇の不快な気分や、苦しみは、正常気分の中に含まれるべきである。正常気分を促進するためには、楽しい活動を増やすことやポジティブな感情を生み出す能力を高めることで不快な気分を払拭すること、マインドフルネスやアクセプタンスに基づくセラピーなどが有効である。また、それ以外の同方向のアプローチとして、wisdom therapyも挙げられている。この介入のゴールは、悪い時も良い時と同様に対処する方法を学ぶことであり、重荷があってもそれを制御し、 “OKと感じられる”(幸せではないが正常気分である)方法を学ぶことである。

〔翻訳:福島 弘之〕

 

Understanding mood in mental disorders
精神疾患における気分の理解

<要旨>
精神医学は正常機能の科学的な考え方に欠けるが、これは特に気分について該当する。気分は社会や環境との相互作用の産物であり、脳内報酬系と関連して行動や意思決定の制御に関わる。現代の診断システムは気分と環境の関係を無視していると著者は指摘し、治療計画においてこの相互作用を意識する重要性を述べている。

〔翻訳:高松 直岐〕

 

The untapped power of allostasis promoted by healthy lifestyles
健康な生活により引き出されるアロスタシスの効果

<要旨>
「ストレス」という言葉は、一般に経験に対するネガティブな表現として用いられる。しかし種々の経験に対して、生体は「動的適応能(アロスタシス)」という呼ばれるプロセスで、副腎皮質ホルモンを始めとする生理的伝達物質を用いて適応することができる。アロスタシスによる生理的伝達物質の過使用による生体および脳の累積的変化はアロスタティックロードと呼ばれ、それが過剰になると不可逆的な神経細胞の障害が残る可能性がある。しかし適度なアロスタシスは成長や自己治癒力、レジリエンスの向上につながりうる。快楽のみを求める生活(hedonic lifestyle)よりも、目的や意義を見出そうとする生活(eudaimonic lifestyle)の方がアロスタティックロードを低下させるという研究もあり、アロスタシスを適切に利用することが重要である。

〔翻訳:佐竹 祐人〕

 

Euthymia and disabling health conditions
正常心理と身体の不調

<要旨>
慢性の疾患や障害によりよく適応している人は、現在の生活を病前の生活から連続したものであると認識し、自身の力不足や制限された部分ではなく、継続的な能力に焦点を当てている。
この論文では、障害を持つ人に正常心理の概念を適応することで、それぞれの人の「新しい正常」な環境下に残されている強みをより包括的に理解することができ、それによりリハビリテーションへの努力やセルフケアへの関心が増すことが期待されると論じられている。また、そのことは、将来的な入院の減少や生活の質の向上につながり、リハビリテーション後のさらなる機能改善も望まれると述べられている。

〔翻訳:北岡 淳子〕

 

The pursuit of euthymia: are cultural factors relevant?
正常気分の追跡:文化的な要因は関連するか?

<要旨>
インドでは正常気分に似たequanimityという概念があり、これは西洋の心理学理論の中ではあまり論議されてこなかったが、思考や偏見に左右されない心的状態・性格傾向を示している。精神療法や薬物療法(気分安定薬)は、正常気分に近づける手助けになるが、リチウムを投与している患者が、病前に持っていた創造性や熱意を失ったと不満を訴えることがあり、正常気分が必ずしも理想的なリカバリーのゴールではないこともある。今後、正常気分の追求が、好ましい感情のモデルについての論議を起こすことを期待する。

〔翻訳:福島 弘之〕

Research Reports

20‐year follow‐up study of physical morbidity and mortality in relationship to antipsychotic treatment in a nationwide cohort of 62,250 patients with schizophrenia (FIN20)
フィンランド国内の62250例の統合失調症患者を対象とした、抗精神病薬に関連した身体合併症と死亡率の20年間に渡る追跡調査(FIN20)

<抄録>
抗精神病薬は統合失調症の再発予防に有効な半面、長期使用は身体的健康に有害であると一般的に考えられている。しかし、この見解を検証した長期的な研究はない。この全国規模の登録ベースのコホート研究は、フィンランドで1972年から2014年の間に統合失調症の治療を受けた全患者(N=62,250)を対象に、最大20年間の追跡調査(中央値:14.1年)で、重度の身体合併症の指標となる身体的疾患による入院のリスク、全死因死亡のリスク、心血管疾患および自殺死のリスクを評価することを目的とした。抗精神病薬の使用(非使用と比較していずれかの抗精神病薬の使用)と特定の抗精神病薬の使用を検討し、アウトカムは、身体的入院と心血管系入院、全死因死亡、心血管系死亡、自殺とした。入院ベースの転帰は、選択バイアスを排除するために、同一患者における使用期間と非使用期間を層別化Coxモデルで比較する個人内デザインで分析した。死亡アウトカムは、従来の個人間Cox多変量モデルによって評価された。同一患者における抗精神病薬の非使用期間と比較して、使用期間中の補正ハザート比(aHR)は身体的疾患による入院で1.00(95%CI:0.98-1.03)、心血管系疾患による入院で1.00(95%CI:0.92-1.07)であった。抗精神病薬非使用者に対して使用者のaHRは全死因死亡率0.48(95%CI:0.46~0.51)、心血管死亡率0.62(95%CI:0.57~0.67)、自殺死亡率0.52(95%CI:0.43~0.62)であった。死亡アウトカムにおいて最も有益性がみられたのはクロザピンで、全死因死亡率(aHR=0.39、95%CI:0.36~0.43)、心血管死亡率(aHR=0.55、95%CI:0.47~0.64)、自殺死亡率(aHR=0.21、95%CI:0.15~0.29)であった。20年間の最大追跡期間中の累積死亡率は、抗精神病薬非使用者で46.2%、使用者で25.7%、クロザピン使用者で15.6%であった。これらのデータから、抗精神病薬の長期使用は入院に至る重篤な身体合併症を増加させず、特にクロザピンで治療された患者では死亡率が大幅に減少していることが示唆される。

<要旨>
フィンランドで統合失調症患者6万例超を最大で20年間追跡した研究の結果、抗精神病薬の長期使用の安全性が確認された。抗精神病薬の使用は身体疾患・心疾患による入院リスクの上昇との関連は認められず、抗精神病薬非使用者と比較して死亡リスクの低下と関連していた。特にクロザピンで最も有益性がみられ、全死因死亡率は0.39倍であった。

〔翻訳:高松 直岐〕

 

Metformin add‐on vs. antipsychotic switch vs. continued antipsychotic treatment plus healthy lifestyle education in overweight or obese youth with severe mental illness: results from the IMPACT trial
重度の精神疾患を伴う過体重または肥満の若者に対するメトホルミンアドオン、抗精神病薬切り替え、継続的な抗精神病薬治療に加えて健康的なライフスタイルの教育を行った場合の比較:IMPACT試験による結果

<抄録>
抗精神病薬は、精神疾患をもつ多くの若者に使用される。早発性心血管死亡の危険因子である発達的に不適切な体重増加や代謝異常は特に若年者に頻繁に見られるが、小児の抗精神病薬誘発性の過体重/肥満を減らすための最適な戦略は不明である。IMPACT試験は、米国の4つの大学で行われた、重篤な精神疾患(統合失調症スペクトラム障害、双極性スペクトラム障害または精神病性うつ病)のDSM-Ⅳ診断を受けた8~19歳の若者で、精神的に安定しており、過体重/肥満がある者に対する24週間の無作為並行群間比較試験である。全ての参加者は、第二世代の抗精神病薬での治療後にかなりの体重増加がみられていた。一元化されたコンピュータによるランダム化システムにより、参加者はマスク化されていない治療グループであるメトホルミン(MET)、抗精神病薬の切り替え(アリピプラゾール、もしく既に使用されている場合は、ペルフェナジンまたはモリンドン(SWITCH))、継続的な抗精神病薬治療(CONTROL)に割り当てられた。また、全ての参加者は、健康的な生活習慣に関する教育を受けた。主要な結果は、ベースラインからのボディマス指数(BMI)Z得点の変化であり、推定最小二乗平均を使用して分析された。合計127人の参加者は、49人がMET、31人がSWITCH、47人がCONTROLへ無作為割付された。
BMI Z得点は、MET(24週目:-0.09±0.03、p=0.002)、SWITCH(24週目:-0.11±0.04、p=0.003)で有意な減少がみられたが、CONTROL(24週目:+0.04±0.03)は有意ではない増加がみられた。三者間の比較では、BMI Z得点の変化は大きく異なっていた(p=0.001)。METとSWITCHはそれぞれCONTROL(p=0.002)より優れており、効果量はそれぞれ0.68と0.81であったが、METとSWITCHには違いはなかった。SWITCHやCONTROLよりもMETで、消化器の問題が多く生じた。被験者の35.2%が精神的な悪化により治療を中止したため、臨床データ監視委員会は、SWITCHのペルフェナジン試験を停止した。これらのデータは、メトホルミンの追加または低リスクの抗精神病薬への切り替えにより、小児の抗精神病薬誘発の過体重/肥満を軽減できることを示唆している。健康的な生活習慣に関する教育は進行中のBMI Z得点の増加を防ぐのに十分ではない。

<要旨>
早期心血管死亡の危険因子である体重増加や代謝異常は、特に若年者でみられることが多いが、有効な対処法は確立されていない。本稿では、IMPACT試験の結果を用いて、抗精神病薬により誘発された過体重および肥満がある若年者に対して、健康的な生活習慣の教育だけでは不十分であり、メトホルミンの追加や低リスクの抗精神病薬への切り替えにより、BMIの減少が期待できると論じている。

〔翻訳:北岡 淳子〕

 

The interplay among psychopathology, personal resources, context‐related factors and real‐life functioning in schizophrenia: stability in relationships after 4 years and differences in network structure between recovered and non‐recovered patients
統合失調症における精神病理、個人の資質、環境関連因子と実生活機能の相互作用について:4年後の関係の安定性と、回復患者・非回復患者のネットワーク構造における相違

<抄録>
実生活機能の改善は、統合失調症患者の最も先進的かつ統合的な治療プログラムにおける主要な目的である。イタリアの精神障害研究ネットワークは、過去に、ネットワーク分析を用いて、多数の統合失調症患者のサンプルをもとに疾患関連変数、個人の資質、環境関連因子と実生活機能の相互作用について調査した。同研究ネットワークは現在、同じサンプルの4年間の追跡を終了した。今回の研究では、元々ベースラインとして調査していたすべての変数間の関係性のパターンが、以後の追跡でも類似しているかどうかを調べるためのネットワーク分析が行われた。加えて、追跡時に回復群として割り付けられた患者と非回復群の患者とで、ネットワーク構造を比較した。ベースラインで調査された618例が追跡調査の対象となり評価された。ベースラインと追跡研究とでは、ネットワーク構造は有意に変化せず、全体的な変数間の連結の強さは若干増加したものの著明な変化はなかった。精神病理的変数はより周辺に位置している一方で、機能的度量や日常生活スキルは、追跡時にもベースラインと同様に高い媒介中心性、近接中心性を呈していた。ネットワーク構造や連結性は、非回復患者ではサンプル全体のものと類似していたが、回復患者では変数間の連結がほとんど見られず非常に異なっていた。これらのデータは、強固に連結した症状および機能障害は互いの活性を維持しようとする傾向があることを強く示唆しており、それは統合失調症の不良な予後の一因となっている。中心性の高い変数に焦点を当てた早期かつ統合的な治療計画は、統合失調症患者の症状および機能障害における自己強化型ネットワークの出現を防ぐことができるかもしれない。

<要旨>
統合失調症の予後には、ネットワーク構造における各変数の相互関係が関与している。機能的度量や日常生活スキルといった中心性の高い要素に重きを置いた治療計画により、統合失調症患者の症状および機能障害における自己強化型ネットワークの出現を防ぐことができる可能性がある。

〔翻訳:里 梨節〕

 

A network meta‐analysis of the effects of psychotherapies, pharmacotherapies and their combination in the treatment of adult depression
成人うつ病の治療における薬物療法、心理療法、その併用療法の効果に関するネットワークメタアナリシス

<抄録>
成人うつ病の治療において、心理療法、薬物療法、それらの併用療法の間の相対的効果は、非常に重要な臨床上の問題であるにも関わらず、これらを調査したネットワークメタアナリシスはまだない。そこで、我々は文献データベースの系統的検索をおこない、うつ病の急性期あるいは長期的治療における心理療法と薬物療法の単独療法同士が比較されているランダム化試験、あるいは心理療法と薬物療法の併用療法とそのどちらか一方のみの単独療法とが比較されているランダム化試験を検証した。主要評価項目は、治療の奏功(ベースラインとエンドポイント間で50%の回復)とした。また、寛解と忍容性(何らかの理由で研究から離脱することと定義)についても調べた。調整変数としては、うつ病が慢性あるいは治療抵抗性であること、およびベースラインでの重症度を用いた。データは、ランダム効果モデルを用いて、相対リスクとしてプーリングされた。合計で、11,910人の患者を含む101の研究を対象にした。大半の研究におけるうつ病は、中等度あるいは重度のうつ病であった。本ネットワークメタアナリシスでは、治療終了時の治療の奏功については、併用療法が心理療法の単独療法(RR=1.27; 95% CI: 1.14-1.39) 、薬物療法の単独療法(RR=1.25; 95% CI: 1.14-1.37) よりも効果が高かった。心理療法の単独療法と薬物療法の単独療法との間には、有意な差はみられなかった(RR=0.99; 95% CI: 0.92-1.08)。同様の結果が、寛解においてもみられた。併用療法(RR=1.23; 95% CI: 1.05-1.45) と心理療法の単独療法(RR=1.17; 95% CI: 1.02-1.32) は、薬物療法の単独療法よりも高い忍容性を示した。これらの結果は、慢性あるいは治療抵抗性うつ病においても同様であった。以上より、心理療法と薬物療法の併用療法が、中等度のうつ病患者に対して最適の選択肢であると考えられる。治療の長期的効果(費用対効果を含め)、特定の薬物・非薬物的治療の影響、特定の患者群における効果については、さらなる研究が必要である。

<要旨>
成人うつ病の治療における、心理療法の単独療法、薬物療法の単独療法、それらの併用療法の効果を、ネットワークメタアナリシスによって比較した。解析の結果、うつ病患者に対しては、心理療法と薬物療法の併用療法が最も効果が高いことが明らかにされた。本結果をガイドラインへ反映することを推奨するとともに、今後、特定の薬物・非薬物療法や患者群により焦点を絞って解析をしていくことで、うつ病治療に対してさらなる新たな知見を投じていける可能性にも言及している。

〔翻訳:川竹 絢子〕

 

Insights

Beyond depression: the expanding role of inflammation in psychiatric disorders
うつ病を超えて:精神障害における炎症の役割の拡大

<要旨>
うつ病にはTNFやIL-6などの炎症性サイトカインが関係しており、炎症の程度と部位は様々であるが、これが治療抵抗性や代替治療への効果とも関連している。脳内の神経回路に生じる炎症はうつ病のみならず双極性障害や不安障害、PTSDや統合失調症でも存在しており、炎症を対象とした治療は幅広い応用をもたらしうる。我々が対応する疾患には、多くの因子が影響しており、多面的なアプローチが必要であることを示している。

〔翻訳:増田 将人〕

Inflammation affects social experience: implications for mental health
炎症は対人経験に影響を与える:メンタルヘルスに対する意義

<要旨>
炎症はうつ病をはじめとする精神疾患に大きく関与していることが、この20年の間に明らかにされてきた. 特に, 自閉傾向をはじめとする行動変容のみならず、社会的感受性への影響が大きいことが注目されてきている. そこで, 炎症が社会的感受性にどのような影響を与えているのかを, エンドトキシン投与群とプラセボ投与群との比較によって調べることで、精神疾患における炎症の意義を考察した。

〔翻訳:川竹 絢子〕

 

The synaptic pruning hypothesis of schizophrenia: promises and challenges
統合失調症のシナプスプルーニング仮説 :展望と課題

<要旨>
統合失調症の発症機序として、中枢神経系の補体系異常によるシナプスプルーニング(刈り込み)仮説が、これまでのGWASや画像研究の結果から有力視されている。しかし、この仮説で統合失調症の病態を一元的に説明するには数々の課題があることが指摘されており、病態をより包括的に、直接的に把握できるような革新的研究が必要であると述べられている。

〔翻訳:川竹 絢子〕

 

Gut microbiota: a missing link in psychiatry
腸内細菌叢:精神医学におけるミッシングリンク

<要旨>
腸内微生物は脳機能と心理的ウェルビィングにおいて重要な分子を産生し、多種多様な神経疾患や精神疾患に関与している。食生活の変化は腸内細菌叢の変化を容易にもたらし、うつ病などの慢性炎症性疾患の発生率に部分的に寄与する可能性が指摘されている。さらに、ストレス関連精神疾患の研究に腸内細菌叢を取り入れることで、治療を薬物療法から栄養療法へと拡大できる可能性にも言及している。

〔翻訳:北岡 淳子〕

Letters to the Editor

Transcriptome‐wide association analysis offers novel opportunities for clinical translation of genetic discoveries on mental disorders
トランスクリプトームワイド関連解析(TWAS)は、精神疾患における遺伝子学的発見を臨床医学へ転換する新たな機会をもたらす

<要旨>
PrediXcanは最初のトランスクリプトームワイド関連解析(TWAS)の方法論であり、PrediXcanにより研究者は疾患のリスクと優位に関連する遺伝子の表現型を解析することができるようになる。PrediXcanのようなTWASの利点としては、第一に、重要な関連が潜在的な交絡因子の影響を受けないことが保証されること、第二に、コントロール群と比較して患者における遺伝子の発現がアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるかどうかを示すことで効果の方向に関する情報を提供すること、第三に遺伝子発現の組織特異性を調査できること、が挙げられる。

〔翻訳:熊谷 航一郎〕

 

Validating digital phenotyping technologies for clinical use: the critical importance of “resolution”
臨床医学で利用するためのデジタルフェノタイピングテクノロジーの検証:“解像度”の臨床医学における重要性

<要旨>
デジタルフェノタイピングはデジタルデバイスを用いて人間の表現型を特定の状況でデータ収集する技術と定義されており、精神疾患の理解と治療のために注目を集めている手法である。精神疾患のデジタルフェノタイピングを生物医学のデジタルフェノタイプと同様にみなすには、計量心理学が正確であることが必要であり、この精度は解像度を考慮することで実現されうる。

〔翻訳:熊谷 航一郎〕

 

Ensuring Quality in Psychological Support (WHO EQUIP): developing a competent global workforce
心理学的なサポートの質を保証する(WHO EQUIP):世界中の有能な労働力を増やすために

<要旨>
世界的に精神衛生の専門家は不足しており、精神状態に問題を抱えた人の大多数は適切なケアを受けていない。精神衛生の非専門家が効果的な心理的介入を行うためには、十分な訓練とスーパーバイズが必要であり、政府やNGOなどが効果的なケアの評価をするために使えるcompetency based trainingのアプローチや、能力評価の測定基準の構築が必要である。これを促進するために、WHOは、「EQUIP(Ensuring Quality in Psychological Support)」というプラットフォームを作っており、それにより、competency based trainingや評価のリソースを、広く地域の組織や専門家が利用できるようになるだろう。

〔翻訳:福島 弘之〕

 

Defining pathological social withdrawal: proposed diagnostic criteria for hikikomori
病的ひきこもりの定義:「ひきこもり」の新たな診断基準の提案

<要旨>
ひきこもりへの注目が文化や国境を越え高まるにつれ、明確で一貫したひきこもりの定義が求められており、筆者らは、今がアップデートされた診断の定義を提唱する時期であると述べている。引きこもりは「病的な社会的隔離または孤立の一形態で、その本質的な特徴は 自宅での物理的隔離」と定義され、自宅での極度の社会的孤立、社会的孤立の6か月以上の継続、社会的孤立に関連する著明な機能障害または苦痛の3項目を要件とする。簡易化された明確な基準は、評価の標準化に役立ち、多文化間のひきこもりの比較をより活発にするだろう。

〔翻訳:福島 弘之〕

 

The revised German evidence‐ and consensus‐based schizophrenia guideline
ドイツのエビデンスとコンセンサスに基づく統合失調症ガイドライン改訂版

<要旨>
ドイツの統合失調症に関する国内ガイドライン改訂版の完成と公表に伴った紹介がされている。本ガイドラインは7つのトピック別モジュールに整理され、合計162の推奨と8つの声明が含まれる。英国のガイドラインと比較して、具体的に困難な臨床状況に重点を置いていて、幅広い利害関係者が参加していることから、代表性と受容性が高くなっている。

〔翻訳:高松 直岐〕

 

Schizophrenia as parasitic behavior manipulation: can we put together the pieces of an evolutionary puzzle?
寄生虫による行動操作としての統合失調症:進化というパズルのピースをあてはめられるだろうか?

<要旨>
本稿では、トキソプラズマ感染と統合失調症の罹患には相関があること、トキソプラズマの感染により人や動物の行動面に異常をきたすということなどのエビデンスから、トキソプラズマの寄生操作の表現型の結果として統合失調症の症状が出現しているかもしれない、と述べられている。さらに、潜在的にトキソプラズマに感染している統合失調症患者に対しては新規抗菌薬の開発が統合失調症の治療につながるかもしれないことも示唆されている。

〔翻訳:下島 里音〕

 

Pneumonia may be more frequent and have more fatal outcomes with clozapine than with other second‐generation antipsychotics
クロザピンは他の第二世代抗精神病薬に比べて肺炎の頻度が高く、致死的な転帰も多い

<要旨>
抗精神病薬の使用が高齢者の死亡率増加と関連し、肺炎が死因の一つであったことが報告されて以降、クロザピン服用中の患者が特に肺炎を発症しやすい知見が蓄積されてきた。肺炎は本剤服用中の致死的転帰の中で最多であり、サイトカインの影響で(本剤の主要代謝酵素であるCYP1A2を阻害し)クロザピン中毒を起こした症例が多数発表されている。そのため、感染の際には中毒症状(過鎮静、唾液分泌亢進、ミオクローヌス)に注意してクロザピンの血中濃度測定を行うか、それが迅速にできない場合は感染が治まるまで本剤の投与量を半減することを提案している。

〔翻訳:高松 直岐〕

WPA News

Early intervention in psychosis in low‐ and middle‐income countries: a WPA initiative
低-中所得国における精神病への早期介入: WPA戦略

<要旨>
専門家による精神病への早期介入(ealry intervention in psychosis: EIP)は地域ケアが始まって以来、精神保健分野で最も発展を遂げたものであるとみなされているが、低-中所得国では専門的なEIPサービスの構築は現実的ではない。低-中所得国におけるEIPの要素を取り入れた介入方法を検討するため、2019年に英国でWPAによる最初の会合が開かれた。そこでは、無料で提供される地域保健的アプローチである必要があること、現存の精神保健サービスに統合されるような形をとること、精神疾患についての啓蒙活動やアンチスティグマ活動と並行して施されるべきであること、などいくつかのコンセンサスが得られた。WPA 戦略としてのガイドラインや提言が行われるよう、今後も議論がなされていく予定である。

〔翻訳:佐竹 祐人〕

 

The WPA Education, Science, Publication, and Research Initiative (ESPRI): jumpstarting scientific projects in low‐ and middle‐income countries
WPA教育・科学・論文発表・研究プロジェクト(ESPRI):低中所得国における起爆剤となるような科学プロジェクト

<要旨>
低中所得国における画期的な教育・論文発表・研究プロジェクトを活性化していくことを目的として、WPAの新規プロジェクトESPRIがWPA執行委員会の満場一致の承認のもと立ち上がった。本プロジェクトは、低中所得国のメンタルヘルス分野の研究をアイデアから実行に移していく際の障壁として、投資が不十分であることに着目し、低中所得国の研究グループにシード投資を行うことを目指している。本稿では投資対象となる研究プロジェクトの募集から選考、投資までの流れを含めその詳細を解説している。

〔翻訳:川竹 絢子〕

 

The WPA website: newer user‐friendly functions
WPAのwebsite:新しいユーザーフレンドリーな機能について

<要旨>
The WPA Website はいくつかの新機能を搭載し、2019年5月から運用されており、そのシステムは定期的に最新の技術に改良されている。シンプルで直感的なナビゲーションシステムを導入したことで、ユーザーは、様々な異なる経路を経て必要な情報を入手できるようになった。今後、会合の合同スポンサーや、継続的な医学教育(CME)のオンライン申し込みが可能なフォームの公開を予定しており、また、事務局にwebsiteから直接支払いができるサービスも公開予定である。

〔翻訳:福島 弘之〕

 

The WPA's prison health position statement and curriculum
WPAによる受刑者の健康に関する声明とカリキュラム

<要旨>
WPAの主な目的はマドリード宣言に則って世界的なメンタルヘルスケアや治療が必要な人々への医療の提供を行うことであり、特に脆弱な集団や疎外された集団、倫理的で公平な医療が提供されない集団に対する活動が重要である。刑務所内の受刑者はそれらの集団の1つであり、本稿では刑務所内の受刑者に対して公平で倫理的な医療が十分に提供されることを促進するためのWPAによる受刑者の健康に関する声明やカリキュラムが挙げられている。

〔翻訳:下島 里音〕


Conceptual work to advance psychiatric and neuroscientific sophistication: a report by the WPA Section on Philosophy and Humanities in Psychiatry
精神医学と神経科学を洗練させることを進めるための、概念に関する研究:精神医学における哲学と人文科学に関するWPA部門の報告

<要旨>
Stadenらは精神医学の哲学と人文科学に関するWPA部門の権限に基づき、精神医学と神経科学の協調によりもたらされる概念的な基礎の再構築の進捗状況について報告するとともに、理論的研究と臨床的実践の両方の進歩の背後にある国際的な推進力を強調した。1つはWPAの最新のフォーラムにおける精神病理学の診断分類に関するものである。もう1つは医療における複雑で相反する価値を扱うための実践的技術に基づいた手法であり、価値に基づく実践(VBP)と呼ばれている。

〔翻訳:熊谷 航一郎〕

 

Early career psychiatrists – history, 2020 and beyond
若手精神科医たち - これまでと、2020年、そしてこれから

<要旨>
WPAによる若手精神科医へのサポートは1999年から始まり、2003年の若手精神科医評議会の創設を経て、2015年には若手精神科医部会の創設がなされた。同部会は医学生対象の精神科教育や世界中の精神療法についての調査などを行うとともに、交換留学制度を提案するなどして各国の若手精神科医の相互交流を推進してきた。世界精神医学会の運営においても積極的に関わり、その発表の場も多く用意されるようになりつつある。現在この部会は世界各国の数百名の若手精神科医で構成されており、今後も力を合わせて若手時代から活動を行うものである。

〔翻訳:佐竹 祐人〕
 

翻訳協力者一覧

【監訳】
秋山 剛    NTT東日本関東病院

【翻訳】
認定NPO法人 日本若手精神科医の会(JYPO)会員 http://jypo.or.jp/
高松 直岐  多摩あおば病院
河岸 嶺将  千葉県精神科医療センター
増田 将人  福岡大学医学部精神医学教室
下島 里音  鹿児島大学病院 神経科精神科
北岡 淳子  大阪精神医療センター
福島 弘之  醍醐病院
熊谷 航一郎 新潟大学医学部精神医学教室
佐竹 祐人  大阪大学大学院 医学系研究科 精神医学教室 博士課程
里 梨節   大阪大学大学院 医学系研究科 精神医学教室
川竹 絢子  京都大学医学部附属病院

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