学会活動Activity

理事長からの年頭の御挨拶

2018年1月吉日

 新年あけましておめでとうございます。

 今年は日本専門医機構の専門医制度が動き出す年です。長くしかも曲がりくねった道でしたが、大勢の会員のご理解とご協力を頂けたことで、ここまでたどり着くことができました。あらためて心より御礼申し上げます。

 さて、当学会には50もの委員会があり、それぞれに重要な問題を扱って活動しています。すべての活動を紹介したいところですが、紙幅が限られているので、新しい動きを幾つか選んでお伝えします。学会活動に関するご意見やご提案など、会員の皆様の声を何なりと事務局までお寄せ下さい。
 
 精神疾患を抱える方の寿命が短いことは精神科医にとって等閑視できない問題です。今期理事会で設置されたガイドライン検討委員会では、日本糖尿病学会、日本肥満学会と協同して、向精神薬服用中の患者さんの肥満、糖尿病などの予防に関するガイドライン作成に向けて活動を開始いたしました。このガイドラインを皮切りに、各種疾患や治療場面を対象とした治療ガイドラインの作成を検討していきます。

 ECT・rTMS等検討委員会では、ワーキンググループを作り、保険収載が見込まれるrTMSの適正使用指針を作成しています。rTMSの機器自体はすでに薬事承認されており、自費診療でうつ病などの治療に用いられているようです。国内での臨床試験データが不十分なままに、保険収載により不適切な使用が広まらないようにすることが肝要です。

 精神医学研究推進委員会では、疾患登録システムのネットワーク化を行う厚生労働省、日本医療研究開発機構(AMED)の大型プロジェクトに学会が参加することを決めました。このプロジェクトは、現存の患者レジストリやコホート研究に関する情報を収集し、検索システムを構築して、医療研究を促進する環境を整備し、新しい治療法などをより早く患者さんに届けることを目的としています。当委員会はまた、AMEDの開発研究に的を絞り(厚生労働省の政策研究は対象外)、幅広い分野の専門家からなるタスクフォースを組織し、今日本で必要とされている研究課題を検討し、それを提言としてまとめていきます。

 ICD-11関連の話題としては、ちょうど一年前になりますが、dementia(認知症)が「精神の疾患」の章から「神経の疾患」の章にそっくり移されたことが記憶に新しいと思います。本学会を含む諸外国の主な学会はこれに反論を唱えWHOに意見書を送りました。その結果、認知症は再び「精神の疾患」に戻され、アルツハイマー病やレビー小体病などの原因疾患は「神経の疾患」の章に配置されることになりました。多少煩雑になりますが比較的妥当な分類法ではないかと思います。また、ICD-11は今年の6月頃に発表される予定だと聞いています。それまでに精神科用語検討連絡会ではICD-11の病名・用語の日本語訳を決定し、それを受けて本学会は「精神、行動及び神経発達の疾患」の臨床記述と診断ガイドライン(CDDG)日本語版の翻訳・監修を進めます。

 今年はまた、呉秀三先生の「精神病者私宅監置ノ実況」刊行からちょうど100年を迎えます。日本精神神経学会は、1902年に、日本神経学会という名称で、精神医学の呉秀三と内科学の三浦謹之助の2名が主幹となり、会員数約200名で発会しました。現在、会員数は約1万7千人(うち専門医約1万人、指導医約7千人) を超えるまでに発展しています。この間に、疾患概念と定義、診断分類は一定の形をなし、疾患の特徴はより明確になり、薬物療法と精神療法はともに大きな進歩を見せ、患者さんの人権や価値観を重視する医療へと姿を変えてきました。およそ一世紀を経て、隔世の感がある一方で、どの行く手にも解決しなければならない難問が立ち塞がっていることも確かです。

 多くの偉大な先駆者達の志を継いで、新たな精神医学・医療を切り開くために、会員の皆様とともに学会活動を力強く進めたいと思います。

 

公益社団法人日本精神神経学会
理事長 神庭 重信