公益社団法人 日本精神神経学会

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学会活動|Activities

Volume 20, Number 2, June 2021

更新日時:2022年6月28日

EDITORIALS

■G.C. PATTON, M. RANITI, N. REAVLEY. Rediscovering the mental health of populations. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 151–152.

Rediscovering the mental health of populations
人口集団へのメンタルヘルスを再発見する

<要旨>
精神医学における予防を進めるには、個人を対象とするだけでなく、家族構造と機能の変化、文化と宗教、経済状況等といった構造的・社会的な決定要因を扱うことが重要であり、ライフコースの視点と集団の視点の両方が求められる。いじめを減らす介入が学生の一般的な精神障害の症状を軽減すること、現金給付が精神障害の症状の軽減とウェルビーイングの促進をもたらすこと等の例からメンタルヘルス以外の介入策の試験にメンタルヘルスを含めることの価値が示唆されており、精神医学がメンタルヘルスの社会的、構造的、政治的決定要因と関わる必要性が高まっている、と著者は述べている。

〔翻訳:清水 俊宏〕

 

■H.L. BERRY. Enabling a youth‐and mental health‐sensitive greener post‐pandemic recovery. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 152–153.

Enabling a youth‐ and mental health‐sensitive greener post‐pandemic recovery
若者とメンタルヘルスに配慮したパンデミック後の"緑の復興"を可能にするために

<要旨>
コロナ禍で多くの若者がうつ病や教育の中断に見舞われ、メンタルヘルスが犠牲になっている。その改善のため、クリーンな物理的インフラの構築、建物の改修に加え、教育・訓練・クリーンな研究開発・自然資本への投資などの復興戦略を含んだ、若者や資源を過剰に搾取しない都市の環境改善(”緑の復興”)が重要である。
それは一見メリットが見えにくいが、臨床医や研究者やその団体が、若者にとっての”緑の復興”の必要性を、オピニオンリーダーに対して訴える必要がある。そして、若者自身が復興を行なえるように、年上の世代が資源、能力、知恵を活用することが重要である。

〔翻訳:福島 弘之〕
 

 

SPECIAL ARTICLES

■A.M. CHEKROUD, J. BONDAR, J. DELGADILLO ET AL. The promise of machine learning in predicting treatment outcomes in psychiatry. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 154–170.

The promise of machine learning in predicting treatment outcomes in psychiatry
精神医学における治療転帰を予測する機械学習の展望

<抄録>
個々の治療法を選択するために、精神科医は長年にわたり薬物療法や心理療法の治療効果に関連する因子の解明を試みてきた。
現在では、機械学習分野の新しい統計的アプローチを大量のデータに適用することで、個別の治療法を決定するモデルを開発できるという構想に幅広い関心が集まっている。
この追求の中で、特定の仮説を検証または反証するための実験的研究から、新しい未知のデータセットで検証したときの、予測モデルの全体的な説明力に焦点を当てた研究へのパラダイムシフトが起こっている。
本稿では、薬物療法及び心理療法からデジタル介入や神経生物学的治療に至るまでの精神医学における治療転帰を予測する機械学習を用いた主要な研究のレビューを行っている。
次に、電子カルテ、スマートフォンやソーシャルメディアのデータなどの、機械学習に基づく予測モデルの開発に用いられるいくつかの新しいデータソース、及び遺伝学、電気生理学、神経画像、認知機能検査データの潜在的有用性に焦点を当てている。
最後に、実臨床での予測ツールの実装に向けた、この分野での進捗について考察する。
適切な外部検証手順を含む後ろ向き研究は今まで比較的少なく、予測モデルの臨床的な実現可能性と有効性を検証する前向き研究はさらに少ない。
精神医学における機械学習の応用は、医学やコンピュータサイエンス以外の領域でこれらの技術が提起しているのと同様のいくつかの倫理的課題に直面しており、本稿ではその点について言及している。
つまり、機械学習はメンタルヘルスケアの効果を高めるための、まだ始まったばかりではあるが重要なアプローチであり、いくつかの前向きな臨床研究はそれが既に機能している可能性を示唆している。

<要旨>
本稿では、薬物療法及び心理療法からデジタル介入や神経生物学的治療に至るまでの精神医学における治療転帰を予測する機械学習を用いた主要な研究のレビューが行われており、予測モデルの開発に用いられるいくつかの新しいデータソースに焦点を当てつつ、実臨床での予測ツールの実装に向けた進捗について議論している。 
筆者らは、精神医学分野における機械学習の応用に関する倫理的課題について言及しながらも、機械学習はメンタルヘルスケアを高めるための重要なアプローチであり、既に機能している可能性が示唆される、と結論付けている。

〔翻訳:下島 里音〕

 

■ R.F. KRUEGER, K.A. HOBBS, C.C. CONWAY ET AL. Validity and utility of Hierarchical Taxonomy of Psychopathology (HiTOP): II. Externalizing superspectrum. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 171–193.

Validity and utility of Hierarchical Taxonomy of Psychopathology (HiTOP): II. Externalizing superspectrum
精神病理の階層的分類学(HiTOP)の妥当性と有用性:Ⅱ. 外在化超スペクトラム

<抄録>
精神病理の階層的分類学(HiTOP)は、従来の精神疾患診断の課題に取り組むための実証的な試みである。
課題の例として、疾患と正常の境界が恣意的である、一般的な症例に複数の疾患が併存している、疾患の中で異質性が見られる、患者の中で診断が安定しない、などがあげられる。
本稿では、HiTOPにおける脱抑制的外在化スペクトラムと拮抗的外在化スペクトラムの妥当性と有用性に関するエビデンスをレビューする。この2つは、より広範囲にわたる外在化超スペクトラムを構成している。
これらのスペクトラムは、最新のDSM診断分類に記載されている様々な精神疾患に包摂される要素から構成されている。そうした疾患の最も代表的なものとして、物質使用障害や「クラスターB」パーソナリティ障害などがある。
外在化超スペクトラムは、規範的なレベルの衝動制御や自己主張から、不適応な抑制や反抗、広範な多剤物質使用の関与やパーソナリティ精神病理まで多岐にわたる。
外在化超スペクトラム、脱抑制的外在化スペクトラム、拮抗的外在化スペクトラムの妥当性は、豊富な文献によって裏付けられている。
こうしたエビデンスでは、共通の遺伝的影響、環境リスク因子、小児期の前兆、認知異常、神経変化、治療反応などについて、言及されている。
妥当性を検証するこうした構造は、脱抑制的または拮抗的なスペクトラムに特異な相関や、この領域の階層構造の土台となる外在化超スペクトラム全体に関与する他の相関を含む、外在化超スペクトルの表現型の構造を反映している。
従来の診断カテゴリーと比較して、外在化超スペクトラムの概念は、有用性、信頼性、説明力、臨床適用性が向上していることがわかる。 
外在化超スペクトラムは、HiTOPが提唱する精神病理学に対する一般的なアプローチの一側面であり、研究および臨床の両面で診断分類をより有用なものにすることができる。

<要旨>
本稿では、精神病理の階層的分類学(HiTOP)に含まれる6カテゴリーの中の脱抑制的外在化・拮抗的外在化の2つに着目し、外在化超スペクトラムの構成やその妥当性・有用性を科学的・臨床的な側面からエビデンスに基づいて検証し、詳細に解説している。

〔翻訳:九野(川竹) 絢子〕
 


 

PERSPECTIVES

■D.R. WILLIAMS, O.S. ETKINS. Racism and mental health. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 194–195.

Racism and mental health
人種差別とメンタルヘルス

<要旨>
COVID-19流行下での白人とスティグマの対象となった人種・民族間での死亡率の差や、警察による暴力への抗議行動により、人種差別のメンタルヘルスへの影響に対する関心が高まっている。筆者は、人種差別は、個人の信念や行動に限定されるものではなく、住居分離、移民政策や投獄といった制度的な側面、対人的な側面、そしてメディアやステレオタイプ、社会規範といった文化的な側面から人々は影響を受けると分析する。そして人種差別が及ぼす様々な影響に効果的に対処するには、社会への多層的な介入が必要であると主張する。また今後は、人種差別と、ジェンダーによる差別などの複数の形態の差別が、メンタルヘルスにどのような影響を与えるかを明らかにする研究が必要だとも述べている。

〔翻訳:山村 啓眞〕

 

■ N.D. VOLKOW. The epidemic of fentanyl misuse and overdoses: challenges and strategies. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 195–196.

The epidemic of fentanyl misuse and overdoses: challenges and strategies
フェンタニルの誤用と過剰摂取の流行: 課題と戦略

<要旨>
フェンタニルの誤用や過剰摂取による死亡が米国を始め世界中で増加している。これに対し使用障害への最適な治療法の開発、解毒治療薬へのアクセスの拡大、過剰摂取時の治療薬ナロキソンへのアクセスの拡大、医療従事者への教育といった多方面から対応が必要である。またこれらの介入策を実施するための適切な資源配分と並行して、地域社会における監視システムの構築や誤用開始を防ぐための予防的介入も必要である、と著者は述べている。

〔翻訳:清水 俊宏〕

 

■W. HALL. The need for publicly funded research on therapeutic use of psychedelic drugs. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 197–198.

The need for publicly funded research on therapeutic use of psychedelic drugs
サイケデリック・ドラッグの治療的使用に関する公的資金による研究の必要性

<要旨>
サイケデリック・ドラッグであるシロシビン、MDMAの治療的使用に関する臨床研究が行われており、第3相試験で第1、2相試験の結果が確認されれば、シロシビンは治療抵抗性うつ病や末期がん患者のうつ病や不安症に、MDMA支援心理療法はPTSDの治療に承認される可能性がある。製薬会社は特許切れの薬に興味を示さないため、サイケデリック・ドラッグに関する研究資金は現状では慈善事業により賄われており、公的資金による大規模な研究の必要があると著者は述べている。

〔翻訳:清水 俊宏〕

 

 

■J. BILLIEUX, D.J. STEIN, J. CASTRO-CALVO ET AL. Rationale for and usefulness of the inclusion of gaming disorder in the ICD-11. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 198–199.

Rationale for and usefulness of the inclusion of gaming disorder in the ICD‐11
ICD-11にゲーム障害が含まれる理由とその有用性

<要旨>
ゲーム障害の概念は30年間で蓄積された疫学的、臨床的、神経科学的研究および若者たちの間での治療需要の急増を受けてICD-11で初めて記載されるようになった。健全なゲーム活動を病理化しないように設定されたICD-11のゲーム障害は臨床的に有効かつ適切なものである。ICD-11にゲーム障害が含まれたことで、デジタル技術の有害使用に関する課題が、研究、政策、ゲーム業界で認識され、社会的取り組みが後押しされるだろう。

〔翻訳:北岡 淳子〕
 

 

FORUM – PREVENTION OF MENTAL DISORDERS IN YOUNG PEOPLE: RESEARCH EVIDENCE AND FUTURE DIRECTIONS

■P. FUSAR-POLI, C.U. CORRELL, C. ARANGO ET AL. Preventive psychiatry: a blueprint for improving the mental health of young people. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 200–221.

Preventive psychiatry: a blueprint for improving the mental health of young people
予防精神医学:若年者のメンタルヘルス向上への青写真

<抄録>
若年層のメンタルヘルス向上のために、近年予防的なアプローチが注目されている。本論文ではまず、予防精神医学の概念的基盤について公衆衛生、Gordon’s、米国医学研究所(IOM)、世界保健機関(WHO)、メンタルヘルスの向上における枠組み、神経発達に配慮した臨床病期分類モデルについて述べる。次に、精神病、双極性障害、一般的な精神疾患の一次予防と、若年層におけるこれらの疾患の発生を減少させるための新たな戦略として、良好なメンタルヘルスの促進を支持するエビデンスをレビューする。これらの介入において、精神病の臨床的高リスクが最も経験的に検証されており、双極性障害および一般的な精神疾患の臨床的な高リスク状態に注目が高まっている。選択的介入では、ほとんどの対象は、家族的脆弱性や非遺伝的リスク曝露である。選択的なスクリーニングや心理・心理教育的介入は、脆弱性のあるサブグループにおいて不安・抑うつ症状を改善する可能性があるが、精神病・双極性障害・一般的精神疾患の発生率を減少させる効果は証明されていない。選択的な身体運動は不安障害の発生率を低下させる可能性がある。普遍的一般的な心理学/心理教育的介入は不安症状を改善するが、うつ病/不安障害の疾患発生自体を予防できない、その一方で普遍的な身体運動は不安障害の発生率を減少させることがある。精神疾患の発生に関与するとみられる学校や社会の要因(人口動態、経済、近隣、環境、社会/文化)をターゲットとした普遍的な公衆衛生アプローチは、集団全体のリスク要因を減少させる最大の可能性を潜めている。良好なメンタルヘルスを促進するためのアプローチは、現在のところ断片的で連結性に乏しい。我々はこのレビューで得られた知識を活用して、将来の若年層における者の予防精神医学の今後の研究と実践についての「青写真」を作成する。それは、普遍的な枠組みと対象を絞った(選択的な)枠組みの統合、多変量・相互診断的・複数のエンドポイントの疫学知識の蓄積、頻度の高い精神疾患と頻度の低い疾患の相乗的予防、身体と精神の不調を共に予防するための方策、層別的/個別的な予後改善の介入、根拠に基づいた予防介入の確立、倫理的枠組みの開発、教育/研修による予防介入の向上、予防精神医学の費用対効果の基盤を確立すること、不平等を減少させること、などである。これらの目標は、切迫した個々人、社会、そして世界といったそれぞれのレベルにおいて予防精神医学を実施するために、科学、医療、社会、政府が、各部門を越えて活発な協力関係を促進することによってのみ達成される。新たに精神疾患を発症するかそのリスクのある若年者にとっては、多くのことが問題となるからである。

<要旨>
昨今、予防精神医学が、特に若年者のメンタルヘルスをいかに向上させるかという側面において注目されている。本論文ではまず、予防精神医学の定義とそのエビデンスについて詳細なレビューを論じ、次に、今後この分野がいかに発展してゆくかについての指針;「青写真」を10項目にわたって論説している。予防精神医学は、医療のみならず科学、政府などといった各分野の垣根を超えた活発な協力関係によってのみ発展すると結論付けている。

〔翻訳:中野 心介〕
 


 

Commentaries

■R.M. MURRAY, M. CANNON. Public health psychiatry: an idea whose time has come. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 222–223.

Public health psychiatry: an idea whose time has come
公衆衛生精神医学:今こそ必要な考え方

<要旨>
本稿では精神医学における公衆衛生学的アプローチの重要性について述べている。特に、精神医学全体として大麻問題をはじめとした都市政策の変更を訴えかけ、予防的介入を行うべきであると主張している。

〔翻訳:五十嵐 江美〕

 

 

■P. CUIJPERS, F. SMIT, T.A. FURUKAWA. Most at-risk individuals will not develop a mental disorder: the limited predictive strength of risk factors. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 224–225.

Most at‐risk individuals will not develop a mental disorder: the limited predictive strength of risk factors
「リスク状態」とされた人のほとんどが精神疾患を発症しない:リスク因子による予測力の限界

<要旨>
予防精神医学の大きな課題の一つに、精神疾患発症のリスク因子による「予測力」が低いということがある。疫学研究において相対リスクやオッズ比に有意な所見が得られたところで予防的介入を検討してもその費用対効果が乏しいことが多い。そもそも「リスク状態:at risk」群からでさえ、精神疾患を発症する頻度がわずかであるからである。予防精神医学のさらなる発展のための解決策として、複数のリスク因子を関連付けることで適切な規模の高リスク集団を特定すること、うつ病のPredictD法のようなツールの開発、複数の精神障害に対する予防的介入を行うこと等が考えられる。

〔翻訳:中野 心介〕

 

 

■ R. FREEDMAN, S.K. HUNTER, A.J. LAW ET AL. Prenatal prevention of psychiatric illness and childhood development population-wide. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 226–227.

Prenatal prevention of psychiatric illness and childhood development population‐wide
出生前の精神疾患予防と小児期発達の全人口的な取り組み

<要旨>
出生前の時期が精神病や精神疾患の発症に関わるとするエビデンスもあるが、予防の有効性を確認することは難しい。我々の研究では、ホスファチジルコリン(レシチン)を摂取した母親から生まれた子供において、プラセボと比較して脳機能の成熟不全や小児期における注意力や社会的引きこもりに関する問題が低下することを明らかにした。ホスファチジルコリンは精神病や精神疾患の予防以外にも全般的に有益な効果をもたらす可能性があり、他の栄養素と併せてその摂取について産科医療や家庭医などにも幅広く受け入れられてゆくことが必要だ。

〔翻訳:中野 心介〕

 

 

■K. DOMSCHKE. Prevention in psychiatry: a role for epigenetics?  World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 227–228.

Prevention in psychiatry: a role for epigenetics?
精神科における予防:エピジェネティクスの役割

<要旨>
精神科分野の予防において、これまで主流であった遺伝的バイオマーカーへの着目だけでは不十分で、遺伝子×環境相互作用によるリスク要因を反映したエピジェネティクスに着目することの重要性について述べている。精神疾患の予防につながるエピジェネティックなバイオマーカーの特定や病態形成の解明、世代間で伝達されるリスク因子を特定することで、精神疾患の予防に役立てられる可能性がある。

〔翻訳:九野(川竹) 絢子〕

 

 

■ A. REICHENBERG, S.Z. LEVINE. Primary challenges and practical solutions in preventive psychiatry. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 228–230.

Primary challenges and practical solutions in preventive psychiatry
予防精神医学における主要な課題と実践的な解決策

<要旨>
Fusar-Poliらによる精神医学における予防的アプローチの概説では、予防戦略を妨げる重要課題について述べられている。著者はその重要課題の一部を取り上げ、それらへの一連の解決策を紹介している。予防戦略を妨げる重要課題としては、精神疾患の根本的な原因メカニズムの理解と集団レベルで適用可能な標的バイオマーカーの両方が不足しているという課題、多くの精神障害に先行する非定型な神経生物学的発達期を介入のターゲットとすることは困難であるという課題、精神疾患はしばしば併発するという課題を挙げている。課題への対処としては、家族の社会経済的特性・虐待・IQ・自制心といった早期の生活要因がある対象に対し幼少期に予防介入をすること、精神障害の発症に先行する認知機能障害を発症する重要な時期に早期介入をすることを挙げている。

〔翻訳:清水 俊宏〕

 

 

■ M. NORDENTOFT, P. JEPPESEN, A.A.E. THORUP. Prevention in the mental health field should be implemented synergically at different levels. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 230–231.

Prevention in the mental health field should be implemented synergically at different levels
メンタルヘルス分野における予防は、さまざまなレベルで相乗的に実施されるべきである

<要旨>
精神疾患のリスク要因の研究結果は蓄積されているが、その要因を軽減する研究は注目されていない。精神疾患予防のためには多面的な戦略が必要となる。
本稿では、デンマークの経験をもとに、親が精神疾患を抱えることが子どものメンタルヘルスのリスクになることや、精神的な不調を抱える青少年に対しての、診断横断的認知行動療法の有効性について、また、様々な異なるレベルで、予防的介入を、共通の戦略に基づいて相乗的に実施する重要性について述べている。

〔翻訳:福島 弘之〕

 

 

■ M.S. KESHAVAN. Characterizing transdiagnostic premorbid biotypes can help progress in selective prevention in psychiatry. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 231–232.

Characterizing transdiagnostic premorbid biotypes can help progress in selective prevention in psychiatry
病前のバイオタイプを疾患横断的に特徴づけることは、精神医学における選択的予防介入の発展に役立つかもしれない

<要旨>
本稿では、従来の症状に基づく分類ではなく疾患横断的に病前のバイオタイプを特定することで個別性のある予防介入につながる可能性があると論じている。例えば、精神病圏の疾患においてバイオタイプを同定した研究では、従来疾患分類と直行するようにバイオタイプが広がっていた。このことは、神経生物学的実態が、従来診断を超えて広がっていることを示す。今後、大規模な多施設共同研究において慎重に特徴を抽出された対象者について、機械学習を含む高度なコンピューターによるアプローチを行う必要があることを指摘している。

〔翻訳:五十嵐 江美〕

 

 

RESEARCH REPORTS

■M. ALVAREZ-JIMENEZ, P. KOVAL, L. SCHMAAL ET AL. The Horyzons project: a randomized controlled trial of a novel online social therapy to maintain treatment effects from specialist first-episode psychosis services. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 233–243.

The Horyzons project: a randomized controlled trial of a novel online social therapy to maintain treatment effects from specialist first‐episode psychosis services
Horyzonsプロジェクト:初回エピソード精神病に対する専門サービスの治療効果維持を目的とした、新たなオンライン社会療法の無作為化比較試験

<抄録>
初回エピソード精神病患者に対して2年間の専門的なサポートを行なったのち、通常通りの治療(TAU)に新しいデジタル介入(Horyzons)を18ヶ月間追加した群とTAUのみを18ヶ月行なった群との間で単盲検ランダム化比較試験を実施した。
参加者は、16~27歳の初回エピソード精神病の患者(N=170)で、臨床的に寛解しており、専門サービスの修了が近い者である。2013年10月から2017年1月にかけて、Horyzons+TAU(N=86)またはTAU単独(N=84)の投与に無作為(1:1)に割り付けた。
Horyzonsは、ピア同士のソーシャルネットワーキングであり、社会機能、職業回復、再発防止を目的とした理論とエビデンスに基づいた治療的介入である。臨床専門家、就労支援、ピアサポートおよびモデレーションを融合した新しい包括的なデジタルプラットフォームである。
TAUは一次または三次の地域精神保健サービスへの移行であった。主要アウトカムは「個人的・社会的機能遂行度尺度」( Personal and Social Performance Scale PSP)によって測定された 18 ヵ月後の社会機能であった。Horyzons+TAU群の47名(55.5%)が少なくとも6ヵ月間、40名(47.0%)が少なくとも9ヵ月間、ログオンしていた。社会的機能は、ベースラインから18ヶ月後のフォローアップまで、両群とも高く安定しており、群間の有意差は認められなかった(PSP平均差:-0.29、95%CI:-4.20~3.63、p=0.77)。
Horyzons群の参加者は、TAU群の参加者と比較して、就職または教育機関への入学の確率が5.5倍増加し(オッズ比、OR=5.55、95%CI:1.09-28.23、p=0.04)、用量反応効果が認められた。
さらに、TAU参加者はHoryzons参加者に比べ、救急受診をする可能性が2倍高かった(39% vs 19%; OR=0.31, 95% CI: 0.11-0.86, p=0.03, number needed to treat, NNT=5)。また、Horyzons群対TAUでは、精神病による入院が少ない傾向が見られた(13%対27%、OR=0.36、95%CI:0.11-1.08、p=0.07、NNT=7)。
つまり、TAUと比較してHoryzonsの社会的機能に対する有意な効果は認められなかったが、この介入は、社会的回復の中核的要素である就労や教育への到達度を改善し、救急受診を減らすという点で有効であった。
Horyzonsは、専門サービスの枠組みを超えて初回エピソード精神病の若者に効果的な就労および再発防止支援を提供する魅力的で持続可能な介入として大きな可能性を持っている。

<要旨>
著者らは初回エピソード精神病患者に対して2年間の専門治療を行なったのち、通常通りの治療(Treatment As Usual 以下、TAU)に新しいデジタル介入(以下、Horyzons)を18ヶ月間追加した群と、TAUのみを18ヶ月行った群の2群間で、単盲検ランダム化比較試験を実施した。Horyzons追加群において社会的機能に対する有意な効果は認められなかったが、就労や教育の達成、救急受診を減らすという点で有効であった。Horyzonsは、専門サービスの枠組みを超えて、初回エピソード精神病の患者を継続的に支援する魅力的で持続可能な介入となる可能性について述べている。

〔翻訳:俊野 尚彦〕

 

 

■C.U. CORRELL, S. CORTESE, G. CROATTO ET AL. Efficacy and acceptability of pharmacological, psychosocial, and brain stimulation interventions in children and adolescents with mental disorders: an umbrella review. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 244–275.

Efficacy and acceptability of pharmacological, psychosocial, and brain stimulation interventions in children and adolescents with mental disorders: an umbrella review
精神障害を持つ思春期児童における薬理学的、心理社会的、および脳刺激療法的介入の有効性と受容性:アンブレラレビュー

<抄録>
思春期児童の精神障害における80種類の薬物の安全性・忍容性に関するトップクラスのエビデンスが、最近本誌でレビューされた。臨床診療の指針として、このようなデータは有効性や受容性に関するエビデンスと組み合わされる必要がある。また、薬物療法以外にも心理社会的介入や脳刺激療法も思春期児童の精神障害の治療法の選択肢の一つである。このアンブレラレビューでは、52種類の精神障害または精神障害群を持つ思春期児童において、48種類の薬物療法、20種類の心理社会的介入、4種類の脳刺激療法を評価したランダム化比較試験(RCT)のネットワークメタアナリシス(NMA)およびメタアナリシス(MA)を系統的に検索し、20種類の有効性・受容性のアウトカムについて報告した。複合的な主要アウトカムは、疾患の特異的な症状の軽減と全ての原因による中止(受容性)とした。14のNMAと90のMAを検討し、15の精神疾患または精神疾患群について報告した。全体として、21の薬物治療および3の心理社会的介入が複合的な主要アウトカムに関してプラセボを上回った(一方、7つの心理社会的介入は待機群・無治療群を上回った)。メタアナリシスのエビデンスに基づくと、最も説得力のある有効性プロファイルとして、注意欠陥・多動性障害に対してはアンフェタミン、メチルフェニデート、それには少し劣るが行動療法があげられ、自閉症に対してはアリピプラゾール、リスペリドンおよびいくつかの心理社会的介入、破壊的行動障害に対してはリスペリドンおよび行動療法、統合失調症スペクトラムに対してはいくつかの抗精神病薬があげられた。また、うつ病に対してはフルオキセチン、フルオキセチンと認知行動療法(CBT)の併用および対人関係療法、躁病に対してはアリピプラゾール、不安障害に対してはフルオキセチンおよび集団認知行動療法(CBGT)、強迫性障害に対してはフルオキセチンや他の選択的セロトニン再取り込み阻害薬、CBT、暴露反応妨害法による行動療法、心的外傷後ストレス障害に対してはCBT、遺尿症に対してはイミプラミンや夜尿アラーム療法、遺糞症に対しては行動療法、神経性食欲不振症に対しては家族療法があげられた。思春期児童の精神障害に対する介入に関するこのアンブレラレビューの結果は、臨床的意思決定のためのエビデンスに基づく情報を提供するものである。

<要旨>
本稿では、思春期児童の精神障害に対する治療法(薬物療法、心理社会的介入、脳刺激療法)に関して、ランダム化比較試験のネットワークメタアナリシス・メタアナリシスを包括的にレビューし、その有効性および受容性を検討している。筆者らは、これらの結果が臨床で意思決定のためのエビデンスに基づく情報になると論じている。

〔翻訳:北岡 淳子〕

 

 

■H. KIM, N.A. TURIANO, M.K. FORBES ET AL. Internalizing psychopathology and all-cause mortality: a comparison of transdiagnostic vs. diagnosis-based risk prediction. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 276–282.

Internalizing psychopathology and all‐cause mortality: a comparison of transdiagnostic vs. diagnosis‐based risk prediction
内在化精神病理と全死亡率:診断横断的なリスク予測と診断に基づくリスク予測の比較

<抄録>
先行研究から、診断横断的な内在化因子が将来の重要な転帰(例えば、その後の精神疾患の診断)を予測する上で有用であることが示されている。しかし、現在までのところ、内在化因子が死亡リスクを予測するかどうか調査した研究はない。また、死亡リスクに関する先行研究では、特定の内在化障害との関連が強調されたが、診断横断的な内在化因子と疾患特異的分散の違いが死亡リスクをどのように予測するか評価した研究はない。本研究の主要な目的は、a)内在化因子が死亡リスクを予測するか、b)特定の内在化の精神病理が横断診断的な内在化因子よりも死亡リスクを特異的に予測するか、c)死亡リスクの予測において内在化と自己申告による健康状態との有意な交互作用があるかを調べることであった。1995年から2015年の間に成年アメリカ人を対象として複数回にわたり個々人の中年期の発達を調べた縦断研究であるMidlife in the United States(MIDUS)という大規模全国調査データを利用した。MIDUS 1(1995~1996年)で電話によるインタビュー調査と自記式質問票を完遂し、その後2015年10月31日まで、あるいは死亡するまで追跡調査を行った6,329名のデータを解析した。内在化と死亡リスクの関連を調べるため、生存時間を潜在的な内在化因子に回帰させるセミパラメトリックなCox比例ハザードモデルを用いた。全体的な知見として、診断横断的な内在化因子は20年間の死亡リスクを有意に予測し(ハザード比、HR=1.12、95%信頼区間:1.05-1.16、p<0.01)、そのリスク予測において内在化は疾患特異的分散(例えば、うつ病特異的な分散)より優れていることが示された。さらに、診断横断的な内在化と自己申告の健康状態との間に有意な交互作用が存在し、このために内在化の精神病理は、自己申告の健康状態が良好な個人における早期死亡と特異的な関連を示した(HR=1.50、95%信頼区間: 1.17-1.84, p<0.05)。この結果から、将来の重要な転帰の予測に診断横断的な内在化因子を用いることの臨床的な有用性が強調され、内在化の精神病理が公衆衛生の現場で検討すべき有意義な易罹患性の予測因子になりうるという議論が支持された。

<要旨>
筆者はこの研究において、6329名の縦断データを用い、診断横断的な内在化問題の因子と診断特異的な因子を比較した死亡リスクの評価を行った。診断横断的な内在化問題の因子を有すると死亡リスクが高まることが示され、疾患特異的なリスク評価と比較した有用性も示唆された。

〔翻訳:五十嵐 江美〕

 

 

■P. CUIJPERS, S. QUERO, H. NOMA ET AL. Psychotherapies for depression: a network meta-analysis covering efficacy, acceptability and long-term outcomes of all main treatment types. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 283–293.

Psychotherapies for depression: a network meta‐analysis covering efficacy, acceptability and long‐term outcomes of all main treatment types
うつ病の精神療法:すべての主要な治療タイプの有効性、認容性、長期転帰を網羅したネットワークメタ分析

<抄録>
うつ病に対する心理療法の効果は数百の無作為化試験で検討されているが、これらの試験結果を統合した最近のネットワークメタ分析(NMA)はない。
我々は、認知行動療法、対人関係療法、精神力動的療法、問題解決療法、行動活性化療法、ライフレビュー、「第3の波」療法、非指示的支持カウンセリングを、相互に、また通常のケア、待機リスト患者、プラセボを対照条件として比較した試験のNMAを実施した。奏効(症状の50%減少)を主要アウトカムとしたが、寛解、標準化平均差、認容性(全原因脱落率)についても評価した。
34,285人の患者を対象とした331の無作為化試験について、無作為な効果を用いたペアワイズ比較およびネットワークメタ解析を実施した。
すべての療法は、通常のケアおよび待機リスト対照条件よりも有効であり、非指示的支援カウンセリングと精神力動的療法を除くすべての療法は、プラセボよりも有効であった。
標準化された平均値は、通常のケアと比較して、ライフレビュー療法で-0.81、非直接的支持カウンセリングで-0.32の範囲であった。個々の心理療法は互いに有意な差はなかったが、唯一の例外は非直接的支持カウンセリングで、これは他のすべての療法よりも効力が小さかった。
バイアスのリスクの低い研究のみを対象とした場合も、結果は同様であった。ほとんどの療法は、12ヵ月後のフォローアップでも通常のケアと比較して有意な効果を示し、問題解決療法は他のいくつかの療法よりも長期的な有効性がやや高いことが明らかにされた。
認容性については一貫した差は認められなかった。 
我々の結論は、最も重要なタイプの心理療法は、成人のうつ病の急性期治療において有効であり、認容性も高く、それらの間にほとんど有意差はないということである。
うつ病と診断された患者の特徴をより詳細に把握することで、個々の患者と個々の心理療法をより正確にマッチングさせることができる可能性はあるが、患者の好みと各治療法の利用可能性が心理療法のタイプ間の選択においてより大きな役割を果たすと思われる。

<要旨>
報告者らは、認知行動療法、対人関係療法、精神力動的療法、問題解決療法、行動活性化療法、ライフレビュー、「第3の波」療法、非指示的支持カウンセリングを、相互に、また通常のケア、待機リスト患者、プラセボを対照条件として比較した試験のNMAを実施した。すべての療法は、通常のケアおよび待機リスト対照条件よりも有効であり、非指示的支援カウンセリングと精神力動的療法を除くすべての療法は、プラセボよりも有効であった。筆者らは、最も重要なタイプの心理療法は、成人のうつ病の急性期治療において有効であり、認容性も高く、それらの間にほとんど有意差はないと結論づけた。

〔翻訳:河岸 嶺将〕
 

 

 

INSIGHTS

■R.A. MARRIE, C.N. BERNSTEIN. Psychiatric comorbidity in immune-mediated inflammatory diseases. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 298–299.

Psychiatric comorbidity in immune‐mediated inflammatory diseases
免疫介在性炎症疾患における精神疾患の併存

<要旨>
関節リウマチ、炎症性腸疾患などの慢性免疫介在性炎症疾患(IMIDs)と精神疾患の関連が指摘されている。本稿では精神疾患とIMIDsの間の双方向の関係を支持する疫学的データ、これらの疾患に共通する炎症と免疫調節異常といった病因論をもとに関連性について論じている。その一方で、昨今IMIDsに適用される治療法を精神疾患に応用しようとする動きがあるが、精神疾患とIMIDsの間の接点についてまだ不明な領域が多いと述べている。

〔翻訳:俊野 尚彦〕

 

LETTERS TO THE EDITOR


■Dana Tzur Bitan. Patients with schizophrenia are under‐vaccinated for COVID‐19: a report from Israel. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 300–301.

Patients with schizophrenia are under‐vaccinated for COVID‐19: a report from Israel
統合失調症患者はCOVID-19のワクチン接種が不十分:イスラエルからの報告

<要旨>
報告者らはイスラエルで統合失調症の診断を受けた患者とマッチさせた対照群と同程度にワクチン接種を受けているかどうかを調べるため、以前の統合失調症患者のCOVID19に対する罹患率等を調査した研究の対象者に対して、ワクチン接種率に関する情報を医療登録で更新した。COVID-19ワクチン接種を受けたオッズは、対照群と比較して統合失調症群で有意に低かった(OR=0.80、95%CI:0.77-0.83、p<0.0001)。この不平等は特に60歳以上で顕著であり、危険因子の集中がさらなる死亡リスクの蓄積を生み出している可能性がある。

〔翻訳:河岸 嶺将〕


 

■Georg Schomerus, Eva Baumann, Christian Sander, Sven Speerforck, Matthias C. Angermeyer. Some good news for psychiatry: resource allocation preferences of the public during the COVID‐19 pandemic. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 301–302.

Some good news for psychiatry: resource allocation preferences of the public during the COVID‐19 pandemic
精神医学にとっての朗報:COVID-19パンデミック時の一般市民の資源配分選好性

<要旨>
2001年、2011年と同様の方法で、2020年7月から9月にかけて、ドイツ国民に対してCOVID-19下での身体疾患や精神疾患の治療への予算削減のアンケートを行い、それぞれの疾患の治療における国民の支持について調査した。回答者に財政逼迫時に予算を削減してはならないと考える疾患を9つ(リウマチ、がん、エイズ、循環器疾患などの身体疾患と、アルツハイマー病、アルコール使用障害、うつ病、統合失調症)の中から尋ねた。この調査は、2001年の調査と方法的に同じものを再現したものである。今回の結果は、うつ病と統合失調症に対する資金の優先順位に関しては安心できるものであり、これらの障害を持つ人々の構造的差別に対する国民の支持を示すものはほとんどない。しかし、アルコール使用障害に関しては懸念がある。

〔翻訳:河岸 嶺将〕

 

 

■Richard A. Bryant, Ahmad Bawaneh, Luana Giardinelli, Manar Awwad, Hadeel Al‐Hayek, Aemal Akhtar. A prevalence assessment of prolonged grief disorder in Syrian refugees. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 302–303.

A prevalence assessment of prolonged grief disorder in Syrian refugees
シリア難民における遷延性悲嘆障害の有病率評価

<要旨>
近年、死別に伴う悲嘆反応の問題がクローズアップされており、ICD-11に遷延性悲嘆障害(PGD)という新しい診断が導入されている。本稿では、戦争の影響を受けたシリア難民を対象にPGDの有病率を調査した結果、死別経験者のうち15.1%がPGDの基準を満たしており、一般の死別経験者の有病率(約7%)と比較し著しく高い割合であったと報告している。そのため筆者らは、資源の乏しい国でも行うことができるような難民のPGDへの介入策を開発する必要性があると述べている。

〔翻訳:北岡 淳子〕

 

 

■Sidney Zisook, Somaia Mohamad, Gary Johnson, Ilanit Tal, Gerardo Villarreal, James Allen Wilcox, Katherine M. Shear. Clinical implications of co‐occurring prolonged grief disorder in patients with treatment‐resistant major depressive disorder. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 303–304.

Clinical implications of co‐occurring prolonged grief disorder in patients with treatment‐resistant major depressive disorder
治療抵抗性の大うつ病性障害患者に併存する遷延性悲嘆症の臨床的意義

<要旨>
著者らは遷延性悲嘆障害が治療抵抗性の大うつ病性障害患者に併存する意義について調査を実施した。治療抵抗性の大うつ病性障害患者に遷延性悲嘆障害が併存すると、うつ病エピソードの寛解が得られにくく、希死念慮も持続する傾向がみられた。治療抵抗性の大うつ病性障害の診療で、遷延性悲嘆障害を併存していないか的確に診断し、うつ病に対する治療に加えて、悲嘆に焦点を当てた介入を行うことが重要であると述べている。

〔翻訳:五十嵐 江美〕
 


WPA NEWS

■Paul S. Appelbaum, Samuel Tyano. The WPA Code of Ethics for Psychiatry. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 308–309.

The WPA Code of Ethics for Psychiatry
世界精神医学会による「精神医学の倫理綱領」

<要旨>
2020年10月の世界精神医学会(WPA)総会において、学会として初めて「精神医学の倫理綱領」を採択した。1996年のマドリード宣言にとって代わる公式声明であり、精神医学の臨床、教育、研究・出版そして公衆衛生の精神保健の4つの項目からなる。筆者は、この綱領は、個々の精神科医、一般市民や他分野の医療の専門家、WPAの加盟学会そして政府に対しても精神医学に関わる倫理の面で役割を果たすものになると述べる。そして、倫理綱領は医学的な知識や治療の変化、社会の変化に常に対応するものであることをWPAは認識していると述べ、それゆえ本綱領への変更の提案も、次版に反映されていくことが予想されるとしている。


〔翻訳:山村 啓眞〕

 

■Roger M.K. Ng. Update from the WPA Secretary for Education. World Psychiatry. 2021 Jun; 20(2): 312–313. 

Update from the WPA Secretary for Education
WPA教育担当役員からの最新情報

<要旨>
世界精神医学会(WPA:World Psychiatric Association)の教育担当役員であるRoger Ngは、インターネット上での教育を重視している。WPAはLMS(学習管理システム)を活用したオンライン教育モジュールを開発した。WPAのウェブサイト(www.wpanet.org)からアクセスできるため、世界中の精神科医が精神医学の知識とスキルを学び、更新することができる。加えて、知識を実践的なスキルにするためのオンラインでの体験学習も、現在開発中である。

〔翻訳:入來 晃久〕
 

 

翻訳協力者一覧

【監訳】
秋山 剛           NTT東日本関東病院

【翻訳】
認定NPO法人     日本若手精神科医の会(JYPO)会員 http://www.jypo.org/
河岸 嶺将          千葉県精神科医療センター
下島 里音          鹿児島県立姶良病院
北岡 淳子        瀬野川病院
福島 弘之        醍醐病院
九野(川竹)絢子   京都大学医学部附属病院
入來 晃久          大阪精神医療センター
俊野 尚彦          十条産業保健事務所
清水 俊宏        埼玉県立精神医療センター
山村 啓眞        京都大学医学部附属病院
中野 心介        大村共立病院
五十嵐 江美       東北大学大学院医学系研究科 精神神経学分野

 


 

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