19世紀中葉、産業革命後の社会変貌と精神病院医療の展開のなかで新しい組織的な精神衛生運動が生まれた。
その後その運動は広く長く展開された。時代は下るが、当時の精神衛生運動が百年後のケネディー米大統領の教書(1963)に影響して初めてその重要性が大統領教書に謳われた。
写真(1)はその言葉を入れたハワイの精神保健ポスターである。
ポスターの中央に「”We have long negrected the mentally ill…this negrect must end” John F. Kennedy Feb.5,1963」の英文が明瞭に見られる。
時代は元に戻り、写真(2)は20世紀初頭、アメリカで精神衛生運動を興したビアーズ( Clifford Whittingham Beers,1876~1943)の「わが魂にあふまで」の巻頭に掲載されたビアーズ自身の写真で、本人自筆のサインもみられる。 躁うつ病をもつ人にはある分野で大活躍し、多大の業績を残した人が少なくない。
ビアーズもその一人であったと思われるが、彼は躁うつ病に罹患した自らの経験をもとに精神医療改革、精神障害者の人権擁護の運動に邁進した。
その運動はたちまちアメリカ全土から更には全世界へと広がり、その後の精神衛生運動に多大の影響を与えた。
写真(3)は、かの有名なビアーズの自叙伝「 A mind that found itself 」(1908)の加藤普佐次郎、前田則三による邦訳書「わが魂にあうまで」(1949)である。
その運動はわが国にも及び、その後約一世紀を過ぎた20世紀末になってわが国で初めて世界精神保健機構(WFMH)(初回は1970、以後隔年各国で開催)が幕張(千葉県)で開催された。
写真(4)はその時の開会式(1993)の全景である。
中央の机の後に座っている方は名誉総裁の高円宮憲仁親王。
写真(5)は開会の辞を述べる島薗安雄組織委員長。
62ケ国、約5,000名が参加し、「幕張宣言」が採択された。
(今回もすべて「図説・日本の精神保健運動の歩み」から借用した。関係者に厚く御礼申し上げます。(完)
ポスターの中央に「 ”We have long negrected the mentally ill…this negrect must end” John F. Kennedy Feb.5,1963 」の英文
20世紀初頭、アメリカで精神衛生運動を興したビアーズ( Clifford Whittingham Beers,1876~1943 )
ビアーズの自叙伝「 A mind that found itself 」( 1908 )の加藤普佐次郎、前田則三による邦訳書「わが魂にあうまで」( 1949 )
20世紀末になってわが国で初めて開催された世界精神保健機構(WFMH)の開会式全景
中央の机の後に座っている方は名誉総裁の高円宮憲仁親王