精神科の診療を受けている方、これから受診してみようと思われた方への情報コーナーです。治療にお役立てください。
A. お住まい・職場・学校の近くにある医療機関をお探しの方は、最寄の保健所または、都道府県・市町村ごとにある保健福祉の窓口に、まずはご相談してください。
A. それぞれの医療機関ごとに特徴があります。ご自身の病状、要望、生活スタイルに合った医療機関を選ぶのが一番です。以下はそれぞれの医療機関の説明です。
<特徴>
・精神科医の数が多く、教授をはじめ専門領域に通じた医師が勤務していて、複数の意見が診療に反映され、入念な診断、治療方針を得ることが可能になります。
・医療保険に算定されていない最新の検査や治療を受けることができることもあります。
<特徴>
・病棟がある場合は、比較的熟練した精神科医が2~3人と若手の医師1~2人の構成であることが多いです。
・他の診療科との連携が密なことが多く、体の病気も抱えた方が診療科間の連携のある治療を受けやすいというメリットがあります。
<特徴>
・精神症状や行動の問題が重症な方の対応に長じた精神科医が複数勤務しています。
・精神科救急対応をしている病院や、設備が整った病棟に改築した病院も増えています。
・デイケアが充実している病院が多いので、ある程度の期間、リハビリテーションを行うには適していることが多いです。
・ケースワーカーや作業療法士などのコメディカルスタッフも充実しています。
<特徴>
・ある程度の経験を積んだ精神科医が一人で診療をしていることが多いです。画像診断等の検査も総合病院等と連携していることが多いので、診断に関して他の精神科医療機関に遜色はありません。
・受診が気軽にできる雰囲気になっています。
・交通の便が良い場所にあることが多いです。
・土曜日、平日夕方まで診療をしているので自分の都合に合わせた受診が出来ます。
・デイケアが充実している、心理療法士のカウンセリングが受けられるなど、クリニックごとの特徴があります。通常の外来診察はクリニックで行い、別の医療機関のデイケアを利用することも出来ます。
このように様々な特徴がある精神科医療機関に、医療保険で自由に受診できるのは海外にない優れた点です。
一方で、救急診療の体制など、医療機関同士の連携がまだまだ出来ていない地域もありますので、それぞれの医療機関、精神科医の連携をさらに良くして行くことも、精神科専門医の役割だと思っています。
A. 夜になると不安が高まり、症状が悪化する傾向のある方は、主治医に夜間の対応について相談することが重要です。
常時当直医として精神科医がいる精神科病院や大学病院では、時間外診療や救急対応が可能ですが、細かい治療の経過が把握しきれない可能性もあり、臨時の対応となることもあるので、通常の診療時間にきちんと診察を受け、カルテ上に主治医と患者で相談した対応方法を具体的に記載しておいてもらうとよいでしょう。
総合病院の精神科医は待機当直制度になっている場合があります。クリニックはほとんどが一人の医師によって行われているので、24時間対応が困難な場合があります。診療時間外に具合が悪くなることが多い方は、24時間対応可能な医療機関との連携をとることが望ましい場合があります。
「お薬手帳」や処方の情報書は保険証等と一緒に保管し、救急受診のときは、必ずお持ちください。今飲んでいるお薬の情報は、薬が効いているか、副作用が出ていないかを判断できるだけではなく、精神科医同士であれば、処方内容を見ればどのような見立てで治療をして、処方をしていたのか推測することができるからです。
休日・夜間の対応に困った場合には、各地域で精神科救急の電話相談が整備されているので、保健所にその情報を問い合わせておくことも出来ます。
A. 熟練した地域のかかりつけ医は、患者の生い立ちや家族背景を良く知っているので、的確な治療をされていることが多いです。
しかし、自殺したい思い(自殺念慮)、あるいは実際に実行に移そうとしたこと(自殺企図)、明らかな幻覚妄想、興奮状態、躁状態、2種類以上の抗うつ薬を試しても改善しないうつ症状などがある場合は、精神科への紹介を考慮すべき状態と考えます。
A. 精神科の入院の適応となる状態は
・幻覚妄想状態
・著しい興奮状態
・躁状態
・重症な自殺念慮
・長く続いている重症うつ状態
などです。
また、環境を変えて、休息を取ることが症状を改善させることもあります。
精神科の入院治療の利点として、詳細に症状の観察が出来ること、精神科看護師のかかわり、家庭内での症状を悪化させている出来事から離れられること、危険な行動をある程度予防できる設備と人員があること、お薬の変更が容易であること(外来では、次回外来までの副作用などを心配して、どうしても慎重投与せざるを得ません)などがあります。
集団精神療法、レクリエーション療法、作業療法は生活、社会機能の改善につながります。心理教育的なプログラムに参加すると、退院後も治療効果が継続しやすく、家族への心理教育プログラムも行われている病院もあります。緊急で入院する場合以外は、外来において治療の見通しをよく相談して、入院治療の目的を明確にしておくことが重要です。
入院中の処遇に疑問がある場合には、まず主治医やスタッフとよく話し合い、それでも納得ができない場合は、病棟内に人権擁護のための電話番号の提示が法律で義務づけられているので、相談することができます。退院請求をすると、都道府県の精神科入院医療審査会から、精神科医が病院に来て、入院継続の必要性を判断する制度があります。
A. 精神科医療機関にはじめて受診する時や、受診中に困った時には、保健所の保健師に相談することができます。
保健所の「こころの相談」では、そこに所属する精神科医に無料で相談することができます。また発達障害についての相談事業も実施されています。前述のように、保健所では救急対応の電話相談もしています。認知症や高齢者の精神的な不調に関しては、市区町村が運営する地域包括センターに相談することができます。介護保険サービスを利用しているときは、担当のケアマネージャー、デイサービススタッフ、ホームヘルパーも力になってくれます。
精神的な不調の背景にある様々な生活上の問題について、医療機関以外への相談をすることもできます。
地域生活支援センターで悩みを相談してみると、医療とは異なる視点で一緒に解決策を考えてくれます。家族の方は医療機関の家族会への参加だけではなく、同支援センターの家族教室への参加は役に立つことが多いはずです。障害者支援センターや障害者就業センターは就労や社会参加を希望する方の支援してくれます。自立支援法のサービスにはホームヘルプもあり、ヘルパーさんと一緒に買い物や家事をすることで、生活技能の訓練も出来ます。
勤労者の相談窓口としては、勤務先に保健師や産業医がいない場合には、産業保健推進センターの相談事業が有用です。精神科医や心理士が専門的な相談に乗ってくれます。また事業所でも「どのような対応をしたらよいか」などの相談を受けることができます。
法律的な問題で困った場合は法テラス、借金問題を抱えている場合は市区町村の多重債務の相談窓口が有用です。
家庭内での暴力問題などは、女性支援センターや男女共同参画事業(市区町村が主体)の相談窓口があります。
教育の場での問題は、担任や担当教官に加えて、保健室(大学の場合は保健管理センター)にまず相談ができます。
また教育センターでの個別の対応もあります。長期の不登校に至った場合には、フリースクールや家庭への個別訪問学習等の利用も考慮されます。
こころの科学 2010年7月号 通巻152号
「精神医療機関の上手な利用の仕方」(著:細田眞司)を広報委員会にて改変