妊娠中・出産後に「躁状態」「精神病状態(幻覚や妄想の出る状態)」になった方のためのQ&A
Q8 妊娠中・出産後に「躁状態」「精神病状態(幻覚や妄想の出る状態)」になった方のためのQ&A
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8-1 妊娠中・出産後に起こる躁症状について教えて下さい。
8-1 気分が高まる、多弁になる、過活動になる、何でもできるような気になる、眠れなくなる、色々な考えが次々に出てくる、イライラする、注意が散漫になる、などの症状が見られます。抑うつ症状と躁症状が混ざって同時に出現することもあります。
説明
- 躁状態には以下のような症状が含まれます。
- 気分が高まって、普段より多弁になって話し続けようとすることがあります。
- 注意の向かう先が次々と変わり、集中できなくなることもあります。
- 後で後悔する可能性が高い活動に熱中してしまう(同じようなものを繰り返して買ってしまうなど)ことがあります。
眠れなくなりますが、眠らなくても平気でがんばれるようになることもあります。いろいろな考えが次々に出てきて、言うことややることに、まとまりがなくなることもあります。
イライラが強くなり、意見の違いなどで周囲の方と衝突してしまいやすくなることがあります。自分は何でもできるような気持ち(万能感)になることもあります。- 必ずしも躁症状が単独で生じるとは限らず、抑うつ症状と躁症状が混ざって同時に出現すること(躁うつ混合状態)があります。その場合、「テンションは高いが些細なことですぐに怒ってしまう」、「気持ちは沈んでいるが多弁でひどく落ち着かない」などといった状態となります。
- 妊娠中に自己判断で服薬を中断してしまうと再発のリスクが高まります。服薬については担当医とよく相談して下さい。
- 「産後うつ」が実は双極性障害(双極症)の始まりであることもあります。うつ症状の後または一緒に躁症状があるようでしたら、精神科医療機関に相談して下さい。
- 日本うつ病学会の資料もご覧下さい。
双極性障害(躁うつ病)とつきあうために (secretariat.ne.jp)
- 躁状態には以下のような症状が含まれます。
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8-2 妊娠中・産後に躁状態になった時には、どのようにすればよいですか?
8-2 精神科を受診されていない方、あるいは受診を中断している方は、速やかに精神科を受診されるとよいでしょう。現在受診されている方は、早めに担当医に連絡して下さい。
アドバイス
- できるだけ早く精神科医に相談して下さい。
- 躁状態には薬の治療が有効です。赤ちゃんに影響する薬がないわけではないので、精神科医とよく相談するとよいでしょう。(Q3-3、Q13-2もご覧下さい)
- 症状や治療法について正しい知識を身につけることや、自分の症状とうまくつきあっていくことを心がけるとよいでしょう。日本うつ病学会の資料もご覧下さい。
双極性障害(躁うつ病)とつきあうために (secretariat.ne.jp) - 信頼できる周囲の方たちにも、病気のことを理解してもらい、サポートしてもらいましょう。
- 周囲の方は、本人が精神的に追い詰められているような時や心配な時は、声をかけて孤立させないように注意してあげるとよいでしょう。そのような時は精神科医に相談して下さい。
説明
- 過去に躁状態になったことのある方は、予防も大切です。日本うつ病学会の資料もご覧下さい。
双極性障害(躁うつ病)とつきあうために (secretariat.ne.jp) - 躁状態の時は、力がみなぎって調子が良いと感じることが多く、自分では症状に気づきにくかったり、軽視したりしがちです。第3者の声に耳を傾けることも必要です。
- 症状を安定させるには、規則正しい生活リズムを維持することが大切です。躁状態の時は、夜眠れなくなったり、夜間の活動が目立ったりしがちですが、徹夜や睡眠不足などは症状を悪化させかねません。
- 躁状態の時は、死にたくなるほど気持ちが追い詰められることがありえます。一人で悩まないで下さい。周囲の方、産科及び精神科医、看護師、助産師など相談できる人はたくさんいます。(Q10-1もご覧下さい)
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8-3 妊娠中・出産後に起こる精神病症状(著しい興奮、幻覚や妄想、 漠然とした著しい不安など)について教えて下さい。
8-3 妊娠中・出産後に初めてこれらの症状が出てくることはまれですが、ありえます。薬などの対応がありますので、落ち着いて、精神科を受診されるとよいでしょう。
アドバイス
- 妊娠中や産後、急にこのような症状が現れた時は、速やかに精神科を受診して下さい。受診先が見つからない時は、平日・日中は保健所または保健センターに、休日・夜間であれば地域の精神科救急情報センターの電話相談窓口に問い合わせて下さい。
全国精神保健福祉センター一覧│全国精神保健福祉センター長会 (zmhwc.jp)
説明
- 精神病症状には下記のようなものがあります。(Q14-1もご覧下さい)
- 妄想:それを否定する証拠があっても変わることのない、誤った信念のことです。たとえば、他の人や組織から危害を加えられる、嫌がらせをされる、などを訴える被害妄想や、人のしぐさや身の回りのちょっとしたことなどが自分に向けられていると訴える関係妄想などがあります。
- 幻覚:実際には存在しないにもかかわらず、知覚することです。たとえば、誰もいないのに人が話しかけてくる声が聞こえるような幻聴や、何も存在しないにもかかわらず、体の中に異物が入っていると感じる体験幻覚などがあります。そのほか、幻視や幻嗅などもあります。
- まとまりのない思考や発語
- 産後では、1000人に1人~2人くらいの妊産婦が上記のような症状を呈する状態となります。双極性障害(双極症)や統合失調症にかかったことのある人は、そうでない人に比べ、妊娠中・出産後に精神病状態になりやすいといわれています。
- 妊娠中・出産後に精神病状態になると、死にたい気持ちが強まるなど非常に危険な状況におちいる可能性があります。そのような時は、速やかに精神科で治療を受ける必要があります。(Q10-1もご覧下さい)
- 妊娠中や産後、急にこのような症状が現れた時は、速やかに精神科を受診して下さい。受診先が見つからない時は、平日・日中は保健所または保健センターに、休日・夜間であれば地域の精神科救急情報センターの電話相談窓口に問い合わせて下さい。
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8-4 妊娠中・出産後に精神病状態になった時には、どのようなことに気をつければよいですか?
8-4 精神科の受診が必要です。薬による治療がとても大切です。
アドバイス
- 医療機関を受診しようと思っても受診予約がなかなか取れないこともあります。そのような場合には、地域の保健センターの保健師に相談するとよいでしょう。
- 本人だけでなく、なるべく周囲の方も一緒に精神科を受診するとよいでしょう。
- 精神病状態の時は、薬による治療が重要です。本人だけでなく周囲の方も説明を聞いて理解するとよいでしょう。(Q14-1もご覧下さい)
- 薬が赤ちゃんに影響することは非常にまれです。それよりも精神病症状を落ち着かせる方が、赤ちゃんとお母さんの健康に大切であると理解して下さい。(Q3-3、Q14-5もご覧下さい)
- 死にたくなるほど気持ちが追い詰められることがありえます。一人で悩まないで、周囲の方や精神科医などに相談して下さい。(Q10-1もご覧下さい)
- 周囲の方は、本人が精神的に追い詰められているような時や心配な時は、声をかけて孤立させないように注意し、できるだけ早く精神科医に相談して下さい。
- 過去に精神病状態になったことのある方は、妊娠中・出産後に状態が悪くならないように予防することが大切です。出産に向けて担当医と治療のことをよく話し合うとよいでしょう。薬を飲むこと、できるだけ規則正しい生活をおくること、無理をせず周囲の方に助けを求めたり、利用できる社会的サポートを使ってみたりするとよいでしょう。
説明
- 精神病状態は、統合失調症だけではなく急性一過性精神症、うつ病、双極性障害(双極症)、そのほかの精神疾患でも起こりえます。また、統合失調症の場合、著しい興奮、幻覚・妄想などの症状で急に発病した場合は、その後の経過は比較的良いとされています。初めの段階で、どの病気なのかを見分けるのは難しいこともありますが、いずれの場合も、抗精神病薬を飲むなどの適切な治療を早くから始めることで、症状を落ち着かせることは可能です。
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8-5 妊娠中・出産後に躁状態、精神病状態になった時には、どのようなサポートを受けられますか?
8-5 医療・保健・福祉で様々なサポートを受けることができます。
アドバイス
- 地域でどのようなサービスが受けられるかについて、保健センターの保健師に相談するとよいでしょう。
- 妊娠届を出してある方は、受けられるサービスをまとめた冊子をもらうことができます。いざという時のために大切に保管しておくとよいでしょう。
説明
- 医療・保健・福祉で、たとえば下記のようなサポートを受けることができます。
- 精神科医療機関:こころの病気の治療及び相談対応などのサポート
- 上の子の預かりなど:短期入所(ショートステイ)、緊急保育、乳児院など
- 産前・産後サポート
- 経済的に生活困難な時:生活保護など
- 精神科訪問看護
- 他に受けられるサポートには以下のようなものがあります。