「双極性障害(双極症)」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A
Q13 「双極性障害(双極症)」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A
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13-1 双極性障害(双極症)とはどのような病気ですか?
13-1 気分・考え・行動が異常に高まったり、異常に低下したりする病気です。
アドバイス
- 性格・努力・人間性などの問題ではないことを理解されるとよいでしょう。
- 適切な治療と療養によって回復が十分期待できます。
- 治療は薬を飲むことがポイントになると理解されるとよいでしょう。
- 日本うつ病学会の資料をご覧下さい。
説明
- 双極性障害(双極症)の症状には以下のようなものがあります。
- ①躁状態(躁エピソード):気分がひどく高まる、アイデアがたくさんわいてくる、行動が過剰になるなどの症状が出る状態です。その結果、お金をたくさん使う、運転でスピードを出しすぎる、言葉が早口になったり乱暴になったりするなどの問題を引き起こしやすくなります。
- ②軽躁状態(軽躁エピソード):躁状態ほどは目立たないものの、普段より気分が高まる、愉快になる、行動が増えるなどの症状が出る状態です。社会や家庭などで直接問題となる行動は起きません。そのためかえって「いつもより調子がよい状態」と誤解されてしまうことがあります。本人が自覚しにくいこともありますので、まわりの人から見た状態を治療者(精神科医)などに伝えることも診断や治療の手助けになります。
- ③抑うつ状態(抑うつエピソード):気分がひどく沈む、考えようとしても考えが出てこない、体が重く疲れやすいなどの症状が出る状態です。「うつ病」でも見られる症状であり、うつ状態だけに目が行くとうつ病と間違って診断されてしまうので、①や②の症状がないかどうか注意し、精神科医に伝えることも大切です。
- ④混合状態 ①~③の状態が混在する状態です。このような時は、エネルギッシュに活動したり周囲に当たり散らしたりするところが目についてしまいがちですが、実は身体はひどく疲れていたり、気分が落ち込んでいることもあります。
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13-2 双極性障害(双極症)の薬を飲んでいても妊娠・出産・授乳・子育てなどはできますか?
13-2 はい、できます。
アドバイス
- 双極性障害(双極症)にかかっていることで出産や子育てをあきらめる必要はありません。
- 妊娠前に薬の調整や症状の改善をすませておくと理想的です。(Q2-2もご覧下さい)
- 炭酸リチウム(リーマス、炭酸リチウムなど)、バルプロ酸(デパケン、バレリン、セレニカ、バルプロ酸ナトリウムなど)は、妊娠前に他の薬へ変更した方がよい場合があります。(Q20-3もご覧下さい)
- 事前準備ができていない妊娠の場合でも、薬の調整などは可能ですから、なるべく早く精神科医に相談するとよいでしょう。(Q2-8もご覧下さい)
- 遺伝に関しては、Q2-3をご覧下さい。
説明
- 薬を飲んでいることは妊娠・出産・子育て・授乳を妨げません。(Q3-1もご覧下さい)
- 炭酸リチウム(リーマス、炭酸リチウムなど)、バルプロ酸(デパケン、バレリン、セレニカ、バルプロ酸ナトリウムなど)は、赤ちゃんに生まれつきの病気を起こしたり、成長を邪魔したりすることが時にありえます。ただ「どうしてもこれらの薬でないと症状のコントロールが難しい」という場合には、あえてこれらを服用しながら出産をめざすということもできますので、産科医・精神科医と相談して下さい。(Q20-3もご覧下さい)
- 多くの女性がうつ病の治療をしながら出産・子育てを経験されています。
日本うつ病学会双極性障害委員会「妊娠・出産を体験した双極性障害患者さんの事例紹介」(Q2-1もご覧下さい)
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13-3 双極性障害(双極症)にかかっている本人が、妊娠・出産・子育てにあたって気をつけることは何ですか?
13-3 「無理しない、手分けする、利用できる制度を利用する、お互いにゆるやかなやりとりをする」ことをこころがけるとよいでしょう。
アドバイス
- 無理をしないようにするとよいでしょう。
- そのために、妊娠・出産・育児に関することと生活に関しての仕事を、他の人に手伝ってもらうとよいでしょう。(Q7-2もご覧下さい)
- 周囲とのコミュニケーションは、余裕をもって取るようにしましょう。
- 症状が不安定になった際には早めに精神科医師と相談するとよいでしょう。
- 使える制度(子育て支援、ヘルパー、訪問看護、児童相談所など)や頼める応援は遠慮なく活用するとよいでしょう。(Q1-5、Q2-5、Q4-5もご覧下さい)
説明
- 「病気の治療」と「妊娠・出産・育児」はどちらも大変手がかかります。
- 「これくらい1人でやれる」と背負い込んでしまうのは危険です。お母さんに余裕のある方が、赤ちゃんにとってもよいといわれています。
- 残念ながら、双極性障害(双極症)は症状を繰り返しやすい面があります。妊娠中もこれは変わりませんし、産後はさらに注意が必要です。
- また、普段から周りの方に対して感情表現を激しくしていると症状が不安定になりやすくなったり、再発しやすくなったりすることがわかっています。
- 「あなた」を主語にして話す(例・あなたのここが問題だ)と、お互いの感情が高ぶりやすいといわれています。「私」を主語にすること(例・私としてはこう思う)が落ち着いたやりとりに役立ちます。
- 日本うつ病学会の資料もご覧下さい。
双極性障害(躁うつ病)とつきあうために(secretariat.ne.jp)
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13-4 周囲のものは、双極性障害(双極症)の本人の妊娠・出産・子育てにあたって何に気をつければよいですか?
13-4 「無理をさせない、手分けする、利用できる制度を利用する、お互いにゆるやかなやりとりをする」ことをこころがけるとよいでしょう。
アドバイス
- 無理をさせないようにするとよいでしょう。
- そのために、妊娠・出産・育児に関することと生活に関しての仕事を皆で手分けするとよいでしょう。
- 症状が不安定になった際には早めに精神科医師に相談するとよいでしょう。
- 周囲の方たちも心配だと思いますので、利用できる応援や制度は活用して余裕を作っていくとよいでしょう。(Q1-5、Q2-5、Q4-5もご覧下さい)
- 本人に対して感情を高ぶらせることをなるべく避け、余裕をもって接するとよいでしょう。
説明
- 「病気の治療」と「妊娠・出産・育児」はどちらも大変手がかかるので、妊産婦さんにはそれが2 重の負担になります。
- 「これくらい本人にやらせないと」または「これくらい私たちだけでやらないと」という発想では、本人も周囲の方も余裕がなくなります。
- お母さんと周囲の方の両方に、体力面にも気持ちの面でも余裕のある方が、赤ちゃんにとってもよいといわれています。
- 残念ながら、双極性障害(双極症)は症状を繰り返します。妊娠中もこれは変わりませんし、産後はさらに注意が必要です。
- 周りの方が、「ガミガミ言う」「ベタベタかまう」という「テンションの高い関わり」をしていると症状が不安定になりやすくなったり、再発しやすくなったりすることがわかっています。
- 「あなた」を主語にして話す(例・あなたのここが問題だ)と感情が高ぶりやすくなりますので、お互いに「私」を主語にして話す(例・私としてはこう思う)ようにするとよいです。
- もし症状が著しく悪化して、危険を感じるような際には、各都道府県の精神科救急システム(注1)を利用することも考えて下さい。
- 注1・かかりつけの精神科医療機関がない場合、あるいはそこで対応ができない場合などに利用するシステムです。平日・日中であれば保健所または保健センター、休日・夜間であれば地域の精神科救急情報センターの電話相談窓口に問い合わせて下さい。
また各都道府県・政令市に設けられている「精神保健福祉センター」も日中の相談窓口になります。
全国精神保健福祉センター一覧│全国精神保健福祉センター長会 (zmhwc.jp)