
妊娠や出産を考えるとき、こころの病気をお持ちの方にとっては、期待とともに大きな不安が生じることも少なくありません。妊娠中に服用する薬が赤ちゃんに影響しないだろうか、薬を飲みながら授乳できるのだろうか、自分の病状は妊娠出産の時にどうなるのだろうかという不安を抱きながら過ごす方も多いのが現状です。
日本精神神経学会と日本産科婦人科学会では、2020年5月に「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド:総論編」、2021年4月に「同上:各論編」を作成しました。これらは主に周産期メンタルへルスに関わる専門職向けのガイドですが、2024年には、これらを参考に、一般の方むけのガイドが作成されました。一般の向けガイドは、妊娠や出産に関わるさまざまな疑問に答えるものですが、一方で、同じような悩みや背景を持つ患者さんや家族が、どのような思いで妊娠・出産・育児を経験し、どのような工夫や支えを得て歩んできたのかを知ることは、患者さんの選択を考えるうえで大きな力になることがあります。
ここに掲載する体験談は、決して「こうすればうまくいく」という答えを示すものではありません。一人ひとり状況は異なり、歩む道もさまざまです。それでも、患者さんの率直な言葉や経験には、不安の中にいる方の心を少し軽くし、「自分だけではない」と感じていただける力があると私たちは考えています。
これらの体験談が、妊娠・出産について悩み、迷っている方にとって、希望や安心につながる一助となることを願っています。
なお、ご紹介する事例は個人が特定されないよう情報の改変および匿名にさせていただいており、掲載にあたってはご本人の同意を得ています。