「摂食障害(摂食症)」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A
Q16 「摂食障害(摂食症)」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A
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16-1 摂食障害(摂食症)のある私が、赤ちゃんを生んだり育てたりできますか?
16-1 可能です。
アドバイス
- 前もって妊娠を希望することを、精神科の担当医と相談するとよいでしょう(妊娠が判明してからでもけっこうです)。(Q2-1もご覧下さい)
- 精神科の担当医が妊娠に否定的な場合は、理解のある他の精神科医を探すのもひとつの方法です。産科のある病院の精神科に紹介してもらうという方法もあります。(Q2-8、Q4-3もご覧下さい)
- 誰にとっても妊娠出産は大変なことです。何でも完璧にこなそうとはせず、また完璧にできないことを「それでもよい」と受け入れながら妊娠、出産、子育てをしていくとよいでしょう。
- 遺伝に関しては、Q2-3をご覧下さい。
説明
- 摂食障害(摂食症)の方で、子育てをしている方は少なくありません。医師の間では、妊娠中に食べられないこと、食べ過ぎることは以前ほど大きな問題ではないと考えられています。
- 妊娠から子育てまでを支援する仕組みもあります。
「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会(座長:五十嵐隆)編授乳・離乳の支援ガイド(2019 年改訂版) - 摂食障害(摂食症)は大きく3 つ(神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害)に分類されます。それぞれによって妊娠中に注意することが異なります。細かいことは精神科の担当医や摂食障害(摂食症)に理解のある栄養士、看護師、臨床心理士、助産師などと相談されるとよいでしょう。
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16-2 摂食障害(摂食症)があるので、妊娠中や出産後の体重の変化が気になります。教えてもらえますか?
16-2 あまり数字を気にしない方がよいでしょう。
アドバイス
- お母さんにとっても赤ちゃんにとっても、体重より食事の内容(たとえば妊娠中は糖質)が重要です。摂食障害(摂食症)に理解のある栄養士などに相談するとよいでしょう。
- 体重などに関して、産科医や助産師などの指導に完璧に応えようと、がんばりすぎないことも大切です。個人差がありますので、うまくいかないことも受け入れていくとよいでしょう。
- 妊娠中は、ホルモンの影響で体重が減ったり増えたり、吐き気がしやすい時期もあります。体調や体重の変化は様々ありますが、あまり惑わされないようにするとよいでしょう。(Q1-1、Q1-2もご覧下さい)
説明
- 妊娠してから7~8ヶ月後に体重がピークになります。赤ちゃんが大きくなるにつれ、赤ちゃんの体重が増え、それにつれて胎盤も成長しますので、その分体重が増えます。
- 妊娠中は、自然な経過として体重が減る時期もあります。
- 妊娠中は、赤ちゃんを守るために、時期によって様々なホルモンがお母さんの身体の中で作られます。ホルモンは体重にも影響しますし、中には吐き気の原因になるものもあります。
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16-3 摂食障害(摂食症)がありますが、妊娠中に体重が安定しています。気をつけることはありますか?
16-3 妊娠中は、おなかの赤ちゃんに糖分が行くことが重要です。
アドバイス
- 糖質(お米やパン、麺類など)を適度にとることを心がけるとよいでしょう。
- 妊娠すると、誰でも妊娠に適したダイエットや運動を指導されますので、それを参考にするとよいでしょう。
- 必要に応じて、産科と精神科の担当医の間で話し合ったり、紹介状(診療情報提供書)のやりとりをしてもらったりするとよいでしょう。看護師や助産師に間に入ってもらってもよいでしょう。(Q4-4もご覧下さい)
説明
- 必要に応じて、産科と精神科の担当医の間で話し合ったり、紹介状(診療情報提供書)のやりとりをしてもらったりするとよいでしょう。看護師や助産師に間に入ってもらってもよいでしょう。(Q4-4もご覧下さい)
- 極端に食べ過ぎると、妊娠糖尿病になる可能性があります。
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16-4 妊娠中の摂食障害(摂食症)の治療はどのように行われますか?
16-4 特に普段と変わりませんが、赤ちゃんのためのアドバイスがあります。
アドバイス
- 赤ちゃんに必要な糖質(お米やパン、麺類など)や栄養のバランスについて、栄養士、医師、看護師などにアドバイスを受けるとよいでしょう。
- できるだけ早く産科と精神科の担当医同士で連絡を取り合ってもらうとよいでしょう。(Q4-4もご覧下さい)
- それまで飲んでいた薬を、自己判断で急にやめないで下さい。処方している医師や薬剤師に相談するとよいでしょう。(Q3-5もご覧下さい)
- 妊婦健診を積極的に受けるとよいでしょう。その時に、助産師、保健師、精神保健福祉士などに悩みごとを相談してみて下さい。
説明
- 妊娠中の体重は極端に低くない限り、赤ちゃんの健康に重大な影響はないと考えられています。ただし、ある程度の糖質や栄養のバランスは必要になります。
- ほとんどの精神科の薬は、妊娠中に問題なく続けることができますし、授乳にも大きな問題はありません。急に薬をやめることはかえって危険です。睡眠薬、安定剤(抗不安薬)、炭酸リチウム(リーマス、炭酸リチウムなど)、バルプロ酸(デパケン、セレニカ、バルプロ酸など)、カルバマゼピン(テグレトール、テレスミン、レキシンなど)を飲まれている方は、早めに精神科の担当医に相談して下さい。(Q3-1もご覧下さい)
- マグネシウムの含まれる下剤(酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、レーマグ、カマグ、マグミット、マグラック、他多数あります)は、通常の限度を超える量を使用した場合、赤ちゃんに影響が出る可能性があります。
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16-5 摂食障害(摂食症)の症状が、妊娠やお産で悪くなることはありますか?
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16-6 摂食障害(摂食症)がありますが、妊娠や出産でパートナーとの関係が悪くならないか心配です。
16-6 誰でも、産後はパートナーとの関係が微妙に変化します。
アドバイス
- 出産や育児は幸せなこと、という理想像にとらわれすぎることもよくありません。出産や育児は、あなたと同様にパートナーにとってもストレスです。お互いを一層思いやるようにするとよいでしょう。
- 周囲の方に助けてもらうとよいでしょう。とりわけパートナーから心理的あるいは身体的な暴力(DV)を受けた時には、ただちに助けを求めましょう。暴力の相談窓口は警察、女性センター、婦人相談所、電話相談など多数あります。
相談機関一覧 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp) - 妊婦健診や診察などに、なるべくパートナー同伴で出かけるとよいでしょう。
- 地域の支援について、市区町村の保健センター、身近な医師、看護師、相談員(ソーシャルワーカー)などにおたずね下さい。(Q4-5もご覧下さい)
説明
- 出産は、パートナーにとっても、うれしい半面、社会的責任が生じ、赤ちゃんの扱いにとまどうなどストレスを伴います。そのため、パートナーも産後うつ病にかかる可能性があります。
- パートナーによっては、とりわけ予想せずに妊娠した場合、心構えを作るのが間に合わない場合もあります。
- パートナーの中には、妊娠や出産を機に暴力をふるうようになる人もいます。摂食障害(摂食症)をお持ちの方は、そうでない人に比べて、身体的あるいは心理的暴力を受けやすいという報告があります。そのような場合は、ためらわず上記相談場所に相談して下さい。
参考
専門家向けには以下のサイトがあります。
精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド各論5 摂食障害 -
16-7 摂食障害(摂食症)が、赤ちゃんに影響することはありますか?
16-7 摂食障害そのものの影響はそれほど大きくありません。
アドバイス
- 産科や小児科の担当医にも、お母さんの摂食障害(摂食症)について伝えておくとよいでしょう。(Q2-9もご覧下さい)
- 妊娠中は、少しずつ回数を増やして食べる方法もあります。
- 妊娠中は、適度な糖質と栄養のバランスを心がけるとよいでしょう。
- 妊娠中は、下剤などの乱用回数を減らし、アルコールやたばこはやめるとよいでしょう。(Q2-1、Q2-6、Q16-4もご覧下さい)
- 産後の赤ちゃんについて心配な場合は、小児科の担当医や保健センターの保健師などに相談してみるとよいでしょう。(Q1-5、Q2-5、Q4-5もご覧下さい)
- 産後は、赤ちゃんに、必要な量のミルクなどを与えるように心がけるとよいでしょう。
- 授乳は人工乳でも問題ないので、夜間の授乳は周囲の方にも手伝ってもらい、睡眠が足りなくならないようにする工夫も大切です。(Q3-8もご覧下さい)
説明
- 極端に食事量を少なくしたり、極端な過食でお母さんが糖尿病になったりすることで赤ちゃんに影響が出る可能性はあります。
- 摂食障害(摂食症)のお母さんは、赤ちゃんのおなかが空いていることに気づきにくい可能性があります。逆に栄養を与えすぎてしまうこともあります。
参考
専門家向けには以下のサイトがあります。
精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド各論5 摂食障害 -
16-8 摂食障害(摂食症)を持っている私が、妊娠や出産後のことを相談できるところはありますか?
16-8 精神科、産科、保健センター、当事者会などがあります。
アドバイス
- 精神科の担当医以外にも、産科や小児科の担当医や看護師、助産師、市区町村の保健センターの保健師、相談員(ソーシャルワーカー)などに相談するとよいでしょう。(Q4-1もご覧下さい)
- 地域によっては、当事者会がありますので、参加してみるのもよいでしょう。
- 日本摂食障害学会の案内を参考にするのもよいでしょう。
診療連携・相談窓口 | 摂食障害情報 ポータルサイト(一般の方) (edportal.jp)
説明