「不安症・強迫症」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A
Q15 「不安症・強迫症」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A
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15-1 不安症とはどのような病気ですか?
15-1 不安がとても強く、あるいは繰り返し出るために、生活に支障をきたす病気です。
アドバイス
説明
- 不安は、私たちに生まれつき備わった自然な感覚です。しかし、その不安が過剰に大きくなったり、しつこく出てくるようになったりすると、生活に差しつかえるようになるので、不安症という病気と診断されます。主な不安症には以下のような種類があります。
- 特定のことに対する恐怖症:例として、高い場所にいることがこわい(高所恐怖)、閉ざされた空間にいることがこわい(閉所恐怖)、ペン先などの、とがったものがこわい(尖端恐怖)などがあります。
- 社交不安症:人と交流する場面、あるいは人から注目される場面をひどく恐れます。
- 全般不安症:特定のことではなく、いろいろなことに対して広く恐怖を感じます。
- パニック症:急に動悸・呼吸困難感・恐怖感が発生するパニック発作を起こします。パニック発作は何かをきっかけに起きることもあれば、特にきっかけがないこともあります。
- 不安は、私たちに生まれつき備わった自然な感覚です。しかし、その不安が過剰に大きくなったり、しつこく出てくるようになったりすると、生活に差しつかえるようになるので、不安症という病気と診断されます。主な不安症には以下のような種類があります。
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15-2 強迫症(強迫性障害、強迫性神経症)とはどのような病気ですか?
15-2 ある考えや行動を、やめたくても、なかなかやめられない病気です。
アドバイス
- 強迫症はその人の性格・努力・人間性の問題ではありません。
- 適切な治療と療養によって回復が十分期待できます。(Q15-4もご覧下さい)
説明
- 「強迫」とは、自分でも理由がない・不合理だと思うような考えや行動を、しないではいられない(つまり、そういった考えや行動が自分に「強く」「迫ってくる」)という現象です。たとえば、ガスの元栓やカギを閉めたかどうか気になることは、誰にでもありうることですが、そのために何度も確認するなどして、外出するのに非常に長い時間がかかるような場合には、それを病気と考え、その治療や回復方法を考えていくことになります。強迫症では以下のようなものがみられます。
- 強迫観念:不合理な内容のアイデア、言葉、文章などを、考えたくないと思っても考えずにいられないこと。たとえば、特定の名前や言葉を思い浮かべずにはいられないなど。
- 強迫行為:ある行動にかりたてられて、なかなかやめることができないこと。たとえば、手が汚れた気がして何度も洗い直す(洗浄強迫)、ガス栓や戸締まりを何度も繰り返し確かめる(確認強迫)などがあります。
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15-3 不安症・強迫症にかかっていても出産・子育ては可能ですか?
15-3 はい、可能です。
アドバイス
- 出産、子育ての不安を前向きに支えてくれる周囲の方や医師、助産師、看護師などを見つけるとよいでしょう。(Q2-1もご覧下さい)
- 不意の妊娠でもあわてず、産科医、精神科医に相談するとよいでしょう。(Q3-6、Q15-5もご覧下さい)
- 周囲の方に加え、妊娠後は産科医にも病気のことを理解してもらうとよいでしょう(当ガイドを利用して下さい)。
- かかっている精神科医が出産に協力的であれば、妊娠前から一緒に準備をすることが理想です。(Q2-6もご覧下さい)
- 「お母さんの体とこころに、少しでも余裕のある方が、赤ちゃんにとってもよい」と考え、利用できる応援や制度は全部活用するくらいの気持ちでいるとよいでしょう。(Q1-5、Q2-5、Q4-5もご覧下さい)
- 遺伝に関しては、Q2-3をご覧下さい。
説明
- 不安症・強迫症の方で、出産・子育てをしている方はたくさんいます。
- 可能な場合は、妊娠前から症状をなるべく少なく小さくしておくことが望ましいといえます。(Q2-1もご覧下さい)
- 「病気の治療」と「妊娠・出産・育児」はどちらも大変手のかかる作業です。援助を求めることも重要です。
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15-4 妊産婦の不安症・強迫症の治療はどのように行われるのですか?
15-4 「薬による治療」と「それ以外の方法による治療」があります。
アドバイス
- 実際に、どのような治療を行うのかについては、現在かかっている精神科医、カウンセラーなどに相談するとよいでしょう。
- 一般的には、薬による治療とそれ以外の方法による治療をバランスよく受けていくのがよいとされています。
説明
- 薬を用いる以外の治療では、まず不安症状や強迫症状を減らすための生活習慣作りをします。例をあげます。(Q2-6もご覧下さい)
- 呼吸法(例:1分間に10回程度、息をゆっくりおなかから、しっかり吐き切る)
- ストレッチング
- 不安症状・強迫症状にとらわれにくくするための生活習慣作り
- 生活リズムを規則正しくする(起床時刻を一定にするなど)
- カフェイン・アルコールをとらない、たばこをやめる
- 医師やカウンセラーなどの指導を受けながら行う認知行動療法などの治療もあります。
- 薬としては、「抗うつ薬」(うつ病の治療にも使う薬)などを用います。
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15-5 不安症・強迫症の薬を飲んでいても妊娠・出産・授乳はできますか?
15-5 はい、できます。
アドバイス
- 計画的に妊娠する場合は、事前に必要最小限の種類と量の薬へ調整しておくとよいでしょう。(Q2-2もご覧下さい)
- 事前準備ができていない場合でも、精神科医などに相談するとよいでしょう。
- ほとんどの薬は、妊娠中・産後も飲み続けられるので、過剰に心配しないことも大切です。(Q3-2もご覧下さい)
- 薬を飲んでいることを産科医にも伝えるとよいでしょう。(Q2-9もご覧下さい)
説明
- 精神科の治療薬は一部のものを除き、妊娠・出産・授乳に大きな問題を起こさないと考えられています。
- 場合によっては、精神科医師と相談しながら、薬を減らしたり、やめたりしていくことも可能です。
- 症状があると、妊産婦さんと赤ちゃんに悪い影響が出る可能性もありますので、逆に薬を飲み続けたり、場合によっては増やしたりした方がよいこともあります。