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和田健先生に「せん妄」を訊く

和田 健 先生
広島市立広島市民病院
※所属は掲載日のものです
せん妄とはどのような病気で、どのような症状が出るのか、またその治療法とは、さらにせん妄かもしれないと思ったらどうすれば良いのかをお伺いしました。(掲載日:2016年9月27日)

①「せん妄」とはどのような病気ですか?

精神疾患はWHO(世界保健機構)によるICD-10分類では、表1のように分類されます。「せん妄」はF0に含まれ、何らかの内科疾患や脳神経疾患の影響によって一定の精神症状を呈する場合に診断されます。「せん妄」は一般病院の入院患者さんでは10-30%程度に発症すると言われており、決して珍しい病気ではありません。典型的には、比較的高齢の患者さんが何らかの病気で入院したり、手術を受けた後に、急におかしなことを言い出したり、幻覚が見えたり、興奮したり、安静にできなくなってしまいます。よく見られる状態をまとめると表2のようになります。適切に診断や治療がなされないと点滴ラインやドレーンチューブなどを抜いてしまったり、ベッドから転落、転倒するなどして治療の大きな妨げになり、重症患者さんでは生命に関わる危険な事態になる場合もあります。また、最近の研究では、せん妄が起こると患者さんのその後の経過を悪化させたり、多額の医療費がかかることがわかってきています。

②「せん妄」ではどんな症状が出るのでしょうか?

表2にせん妄で見られる症状を記載しましたが、さらに 表3に米国精神医学会が発表している「せん妄」の診断基準を簡略にしたものを示します。最も中心になる症状は、注意力や自分を含めたその場の状況を理解する能力が低下することです。患者さんは一見起きていますが、ぼんやりして頭はちゃんと起きておらず、平気でおかしなことを言ったりします。さらにもう一点は、記憶が曖昧になったり、幻覚や錯覚、妄想を訴えたりして、正しい判断や行動をするための脳機能が低下します。これらふたつの症状が、短期間のうちに出現し、1日のうちでも変動します。「夜間せん妄」という言葉があるように、昼間は比較的しっかりしているのに夜間に症状が強く現れ、興奮したり、怒ったり豹変する患者さんもあります。

③「せん妄」にはどのような治療をするのでしょうか?

図1に「せん妄」がどのようにして起こるのかわかりやすく示しました。「せん妄」というたき火を消すには、火をつけている身体的な病気などに対して速やかに治療を行う必要があります。ほとんどの場合、該当する内科や外科、脳神経外科などの医師との協力、連携が必要です。並行して注がれている油を止めること、すなわち環境調整や苦痛緩和を積極的に行います。身体的な治療をスムーズに進めるためにも、患者さんが検査や治療の必要性を理解し、安心感を持ってもらえるような働きかけを継続することが重要です。海外では、表4のような定式化された看護ケアが有効とされています。

多くの患者さんでは、不眠や昼夜逆転、興奮、幻覚妄想などの症状をターゲットに薬物療法を行います。我が国では健康保険上「せん妄」に使用が認められている薬剤はチアプリド1剤のみ で、経験的に有効性が知られている抗精神病薬のいくつかが主に使用されます。
 

④「せん妄」かも知れないと思ったら、どこで診てもらえばよいのでしょうか?

一般の方が入院しているご家族に「せん妄」が起こっているのではないかと疑うことは、実はさほど難しくないかも知れません。比較的急にそれまでにはなかった精神症状がいくつも見られるからです。疑った場合には、入院であればまず看護師、担当医に伝えてください。必要に応じて一般病院に勤務する精神科医(リエゾン精神科医)が診察し、適切な治療を行います。在宅で生活している患者さんにも「せん妄」は起こることがあります。その際にはかかりつけ医にまず相談し、リエゾン精神科医の診察を受けられるように紹介をしてもらうことができます。

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