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兼本浩祐先生に「てんかん」を訊く

兼本 浩祐 先生
愛知医科大学
※所属は掲載日のものです
てんかんとはどのような病気か、どのような治療法があるのか、そして周囲の人々はどのようにサポートすればよいのかをお伺いしました。(掲載日:2016年5月10日)

①てんかんとはどのような病気ですか?

生き物の脳は、電気を使ったネットワークとして動いていますが、てんかんとは、このネットワークのリズムが部分的であれ、全体的であれ同じリズムで動きすぎる状態を発作的に起こす状態をいいます。具体的にはてんかんを疑われて来院される人達には4つの大きな区分とてんかんに似て非なる心因性非てんかん性発作というものがあり、4つの大きなファミリーのどれに当たるか、それとも心因性非てんかん発作とか失神ではないかというのが具体的な診断の手順になります。

具体的なファミリー名は、図1を参照してください。(灰色部分は難治てんかんです)。


年齢依存性焦点性てんかんでは、思春期までにほぼ100%治癒し、多くの特発性全般てんかんでは、バルプロ酸を中心とした処方で発作は完全に寛解状態となるか、あるいは少なくとも日常生活に支障がない程度にまでは改善します。これに対して、年齢非依存性焦点性てんかんに関しては、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチアセタムが第一選択薬であり、寛解率は6~7割程に下がります。レノックス症候群を代表とするてんかん性脳症においては、てんかん発作そのものは投薬によって完全に抑制できないことが多く、さらに知能の低下も起こり、てんかん発作が実質的に生活上の重圧となることが多く見られます。てんかん発作をどのくらい止めることができる可能性があるかは4大ファミリーで全く異なることを考えると、これに心因性非てんかん性発作を加えた5つを正確に診断することが、成人てんかんの治療戦略のための基本的な枠組みとなります。

詳しくは下記リンクも参照ください。
https://medicalnote.jp/contents/151201-000035-LHOPXB
 

②どういった症状になるのでしょうか?

成人でのてんかんを問題とする限り、初診で診断の対象となるのは主に特発性全般てんかんの1つとなる若年ミオクロニーてんかんと年齢非依存性焦点性てんかんのグループです。というのは、年齢依存性焦点性てんかんのグループは既にそのほとんどが成人期までには治癒している一方で、てんかん性脳症の大部分は既に発症しており小児科医の治療を引き継ぐ形で診療が開始されるからです。さらに特発性全般てんかんを構成するもう1つの大きな類型である小児欠神てんかんは学童期に初発します。

年齢非依存性焦点性てんかんを診断する場合、意識消失発作に先行して明確な前兆があるか、発作後一過性の神経学的症状が出現する(具体的には半盲か片麻痺)という症候は、単純で誤解しにくく、診断根拠としては確実性が高いものです。ただし、ここで言う前兆とは、意識消失を伴う発作に数秒から数分間前に出現するもので、要素性幻視(キラキラ光るものや虹色の渦巻きなど)や上腹部から込み上げてくる違和感(時には吐き気・腹痛として訴えられることもある)、既知感、感覚性ジャクソン発作(手・顔面・足の一部から始まる痺れ)などがその代表で、発作の数時間前から出現するいらいら感や漠然とした違和感からなる前駆症状はこれには入りません。次いで、睡眠時にのみ発作が出現する場合も、他に根拠とできるデータが無ければ焦点性てんかんに準じて扱います。画像診断で局在所見がある場合、脳波上てんかん波が限られた場所を示す場合も年齢非依存性焦点性てんかんの可能性が高いですが、症状ほどの確実性はなく偶然の並存の可能性も考慮に入れておく必要があります。特に様々の非特異的な突発波には、診断価値が無いことは強く念頭に置いておく必要があります。

年齢非依存性焦点性てんかんの診断でもう一つ重要なのは、けいれんを伴わずに意識がなくなる複雑部分発作の把握です。複雑部分発作は頻度も高く、治療対象としては重要度の高い発作ですが、心因性発作や失神発作などとの鑑別が常に問題になりますし、また同じようにけいれんを伴わずに意識がなくなる発作である欠神発作との鑑別も念頭に置いておく必要があるため、誤診率が高い病態です。前兆がない複雑部分発作を単体でそれと疑うには病歴聴取をする際に一定の問診上の習熟を必要とします。第1相として、開始時の動作停止と凝視、第2相として、口部自動症(口をくちゃくちゃする、唇を突き出すなど)あるいは言語自動症(「当番きやはったどうしたらいいの」などいつも同じ言葉を反復したりする)その他の明確な自動症を伴う数分前後の深い意識消失発作の後に、第3相として、応答は回復しても見当識障害(自分が置かれている状況を正確に認識出来なくなる事)を含むとんちんかんなやり取りが観察される発作後もうろう状態が数分から十数分後続する発作の相構造が聴取されるのが側頭葉系の複雑部分発作の最も典型的なパターンです。こうした複雑部分発作の病歴を聴取できた場合、側頭葉てんかん(年齢非依存性焦点性てんかん)を疑う確度のかなり高い根拠の1つとなります。重要なのは一つの意識消失発作の内に質の異なった複数の相を聴取できることで、しかも、それが複数の発作において同じ順序で反復していることを確認することです。睡眠時に突然がばっと起き上って座位になり、ぐっとしかめ顔をしてからばたばたと激しく十数秒前後暴れまわる場合は、前頭葉系(帯状回・眼窩脳起源)(=脳の前方内側にある部分から発射する)複雑部分発作が疑われます。週に数回以上の頻度で短い発作が頻繁に出現し、しかも意識の減損が中途半端なのも特徴です。

思春期発症のてんかんで、鑑別診断として特に重要なのは、若年ミオクロニーてんかんと覚醒時大発作てんかんである。若年性ミオクロ-ヌスてんかんの診断については表3にまとめましたが、思春期前後に覚醒後数時間以内に両上肢の比較的大きなビクつきが他覚的・自覚的に確認される場合、鑑別診断の第一の候補になると考えられます。ただし、多棘徐波(=尖った鋭い波が複数個と丸くゆっくりの波の組み合わせ)などの脳波上の特異的なてんかん波は必ずしも全例で確認できるわけではありません。また、上肢のピクつきは時にかなり非対称で、患者・家族は一側のピクつきとして訴える場合があり、ジャクソン発作と誤診しないように注意を要する場合があります。

覚醒時大発作てんかんは、若年ミオクロニーてんかんをその中核群に含んでいるが、それよりも広い症候群であると考えることができます。てんかん大発作が覚醒後数時間以内に集積して出現するのがその特徴です。他にデータがない場合には、とりあえずは若年ニオクロニーてんかんに準じた治療を行います。ただし、断薬後の発作再燃率は若年ミオクロニーてんかんほどではありません。

詳しくは下記リンクも参照ください。
https://medicalnote.jp/contents/151201-000036-BDCIIN
 

③どのような治療があるのでしょうか?

特発性全般てんかんの場合は、第一選択薬はバルプロ酸ですが、妊娠可能な女性の場合、レベチラセタムを投薬する場合もあります。しかし、レベチラセタムではミオクロニー発作は抑制されないことも多く、さらに難治度が高い場合、バルプロ酸が入っていないと大発作も止まらない場合もあり、当該女性のライフスタイルや希望にあわせて投薬を行うべきです。妊娠時にバルプロ酸を服用していなければ胎児に奇形を生じる危険はない。このグループの場合、日常生活に支障があるような発作は、多くの場合、投薬で抑制されると期待することができます。

年齢非依存性焦点性てんかんのグループでは、第一選択薬は本邦では、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタムから選択する場合が多いです。カルバマゼピンは切れは良いが、必ず100mg程度の少量から始め、漸増する必要があります。そうでないと初日には肝臓で薬剤を十分に消化できず大きくふらつき、時には吐き気が出てくる場合もあるからです。カルバマゼピンとラモトリギンを服用する場合、服用開始から3か月以内では重症薬疹の出現に注意が必要です。薬疹様の症状の過半は実際には薬疹ではないが、即座に皮膚科専門医を受診し診断を仰がねばなりません。このグループの場合、最初の薬剤が奏功する確率はほぼ5~6割なので、その場合は2番目の薬剤を追加する必要があります。候補としては、ナトリウムチャンネルブロッカー+広域スペクトラムの薬剤が最近は好まれます。具体的にはナトリウムチャンネルブロッカーとは、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインであり、広域スペクトラムの薬剤とは、レベチラセタム、ゾニサミド、トピラマートです。後者にはクロバザムと加えることもできます。あるいはラモトリギン+バルプロ酸の組み合わせは、ラモトリギンの血中濃度を十分に上げるという点ではもう一つ有力な併用療法の候補です。

年齢依存性焦点性てんかんで、3剤効きそうな薬剤をトライして発作が止まらない場合には、てんかん外科手術を一考する必要があります。

心因性非てんかん性発作は、幼少時からの両親や兄弟との確執を背景として出現するフロイト型と、知的障害や発達障害を背景として起こるクレッチマー型があり、前者では認知行動療法や精神分析的精神療法が、後者ではケースワーカーや作業療法士による環境整備、ジョブコーチなどが治療の主体となる。

詳しくは下記リンクも参照ください。
https://medicalnote.jp/contents/151201-000038-OLYGBS
 

④周囲の人はどのようにサポートすればいいでしょうか?

まず重要なのは、てんかんを複数形で考えることです。「てんかん」と言っても、4大ファミリーのどれにあてはまるかで全く別の疾患であって、何を覚悟し、どのようなリスクがあるかは全く異なっています。偏見の多くは物事の個別性を見失うことに由来しており、まずは実際に何が起こっていて、今後その病態から何が予測されるかを十分に知ることから出発する必要があります。詳細を知ることで不必要にドラマチックな覚悟を持って周囲の人がてんかんを持つ人に接する必要はなくなるし、必要のない就労差別なども無くなることになります。さらには心因性非てんかん性発作のグループの人はそもそもてんかんに見えてもてんかんではありません。

相対的に難しい年齢非依存性焦点性てんかんのグループでも、少なくとも7割程度の人たちは薬を服用しなければならない点を除いては、何の支障もなく日常生活を送り、就労し、結婚し、子供をつくることができます。この点は是非とも意識しておくべき点でしょう。

詳しくは下記リンクも参照ください。
https://medicalnote.jp/contents/151201-000039-RQOGVA

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