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精神科医のキャリアパス

更新日時:2024年3月1日

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谷野 亮一郎 先生
医療法人社団和敬会 谷野呉山病院 理事長・院長
(医師として四代目 精神科医として三代目)

「最近は、精神科医が自分の天職だと思うようにしています。実際、こんな面白くてやりがいのある仕事は他に思いつきません。
そう思える根拠ですよね。なんだろう・・・私の価値観の優先順位栄えある第1位は「笑い」なんです。自分も笑いたいし、相手を笑わせたい。自分の話術で相手を笑わせて自分も笑って、それが診療報酬で評価される(笑)こんないい仕事ありますか!」

(掲載日:2024年3月1日)※所属は掲載日のものです

谷野先生が精神科医を志した理由を教えてください。

「もしも、十年後、ノストラダムスの大予言がはずれて、明るい10年後がおとずれるのならば、ぼくは、できることなら家を継ぎたい。なんのせ、精神科は、手術しなくてよい。もつのもいやな注射器もあまりつかわなくてよい。医者になるのなら絶対、精神科がよい。
しかし、ぼくは、農家もすてがたい、となやんでいる。ぼくは、こう考える。これからの時代、医者は、どんどんふえるだろう。しかし、農家は、どんどんへっている。競争相手がへってきているのだ。成功しれば、きっともうかる。しかも、ぼくは、北海道にすみたい。富山もいいが、北海道にすみたい。北海道は、農業もさかんだ。北海道で農業をしれば、一石二鳥だ。
ということは、北海道で精神科の医者をしながら兼業農家というのは、どうだろう。これだと、一石三鳥じゃないか。しかし、これじゃつかれきって、若死にするのがおちだ。
とにかく、将来は、精神科の医者か、農家(成功することが条件)ができれば、幸いだ。ほとんど、十年後というよりは、わたしの将来といった感じだ。まだ、小さな、世間知らずの時は、大きな夢をもっていればいい。
さいごに、全国のあと継ぎがいなくて、こまっている農家の人々、私が継ぎましょう。」(原文ママ)

突然なんだ、と思われたことでしょう。これは、私が若かりし頃に学校で書いた作文です。この文章の中にどのような「志」が読み取れるでしょうか。


  〔谷野家家族写真:筆者一番左〕

現在はどのような働き方をされていますか?また、なぜ今の働き方を選んだのか、理由を教えてください。

 睡眠時間を除いた、いわゆる起きている時間を100とすると、私は、臨床業務に60、理事長・院長業務に40、日本精神科病院協会関係の業務に15、行政関係の業務に10、家庭に20、「リビドー」に基づく行為(私の場合、筋トレもこのカテゴリーに含まれます)に15費やしているという「破綻」した生活を送っています。私は6の倍数で人生の節目を考えているので、54歳まではこの「破綻」した生活を送るつもりです。
 「なぜ今の働き方を選んだのか」・・・そこは多分に成り行きによるところがありますので、「なぜ今の働き方を続けているのか」に勝手に問いを変えさせていただきまして、それは「何かを残したいから」です。私の好きな言葉に「人生の価値は何を得るかではなく何を残すかにある」というものがあります。私は本当に大した人間じゃないですよ。どうしようもない人間ですが、できることならば何か残して死にたいな、と。

精神科を選んで良かったことは何だと思いますか?

 最近は、精神科医が自分の天職だと思うようにしています。実際、こんな面白くてやりがいのある仕事は他に思いつきません。 
 そう思える根拠ですよね。なんだろう・・・私の価値観の優先順位栄えある第1位は「笑い」なんです。自分も笑いたいし、相手を笑わせたい。自分の話術で相手を笑わせて自分も笑って、それが診療報酬で評価される(笑)こんないい仕事ありますか!(笑) いや、なかなか笑わない方もおられます。でもいつの日か何とか笑わせてやろうと。その前に泣かせてあげなきゃ、って場合もありますが。
またしても問いの答えになってないですよね・・・とにかく私の「雑談力」だけはAIに取って代わられないぞ、ということで、精神科医を選んで良かったな、と(笑)

最後に、医学生、研修医の方へのメッセージをお願いします。

 日頃、若い先生方には「精神科は「飲む・打つ・買う」いずれも芸の肥やし、いや臨床の肥やしになるんだ」と精神科臨床の魅力を語っています。
 例えば、病院の理事長や院長といった立場となりますと、臨床業務以外にいわゆる「理事長・院長業務」が存在します。リーダーシップ、マネジメント、チームビルド、接遇、クレーム対応、病床利用率、新患率、診療報酬、人件費、流動資産、長期借入金、キャッシュフロー等々、「ムキーッ」となります。もう、頭の中が「ムキーッ」となるわけですが、そこで私が思うのは「どれも臨床の肥やし」ということです。そう、全てが臨床の肥やし。要するにいつまでも軸足は臨床から動かしたくない。私は「精神科医だもの」。
「飲む・打つ・買う」に関する体験談は、そのうち一緒に飲みながらでも。

 

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