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精神科医のキャリアパス

更新日時:2019年11月11日

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岡山 達志 先生
国立精神・神経医療研究センター 精神医療政策研究部

「精神科は一般科とは違い、その人の人生の障害を綺麗に取り除くことが困難である場面に多々遭遇するため、患者さんに別の道を示し、その道に行く手助けをする役割がとても重要になってきます。その道案内が上手にいった時は、本当にこの仕事を選んでよかったと感じます。」

(掲載日:2019年11月11日)※所属は掲載日のものです

岡山先生が精神科医を志した理由を教えてください。

 幼少期の頃より親から医者になってほしいという思いを感じ、それに反抗する形で中学生の頃は漠然と教師や農業関係の仕事がしたいなと考えていました。しかし、周囲に精神疾患で苦しむ人や巻き込まれる家族等がいて、高校生になる頃には精神科医になるために医学部に入学すると決めていました。ただ、その時は精神科医という仕事がどんなものかも知らず、世間知らずもいいところだったと思います。

 実際に医学部に入学し、臨床実習で諸先輩方から話を聞いたり、研修医時代に精神科をローテートしたことで、精神科医療の面白さ・魅力に本当の意味で気づき、自分の選択が間違っていなかったことを確信しました。研修医時代は救命救急科も面白いと思っていましたが、やはり自分が医師を目指すきっかけとなった出来事を思い返し精神科医を志すことに決めました。

 

現在はどのような働き方をされていますか?また、なぜ今の働き方を選んだのか、理由を教えてください。

 現在は国立精神・神経医療研究センターで精神医療政策の仕事に従事しています。具体的には、今後の精神医療がどのような道を進むのかということを勉強しながら、精神保健福祉資料の作成や今後の臨床現場での活用を目指した指標の策定などを行っています。

 なぜこのような働き方を選んだかというと、マクロな視点から精神医療の勉強をするためです。初期研修医が修了すると、どうせ長い間精神科で働くんだからと考え、短期間だけ救命救急科で後期研修を行いました。その後、大学病院の精神科に入局し、都心部・地域の両方の関連病院で臨床医として働き、職場にも恵まれとても充実した日々を送れていたのですが、将来病院の経営に携わることを考えると何を勉強したらいいか分からず不安になっていました。その時に、現在所属している精神医療政策部の講演を聞き、今後の精神医療の地図を描いているところで働きたいという思いを抱き、現在に至ります。2019年3月まで臨床現場と少しの遺伝子研究の事しか知らなかったので、今でも厚労省や有識者の先生方との会議等では困ることが多々ありますが、周囲の方々に助けられながら何とか目の前の仕事をこなしている毎日を送っています。

 

精神科を選んで良かったと思うことは何だと思いますか?

 臨床目線になってしまいますが、精神科は他のどの科よりも長期的なチーム医療が必要だと考えています。そのため、他職種との関りも深く、患者様に密に長期に関わっていくため、患者様の人生により深く寄り添うことができます。

 一般科では、その人の人生の障害(身体疾患)を綺麗に取り除くことを目標にしていると思います。ただ精神科は一般科とは違い、そういった障害(精神疾患)を綺麗に取り除くことが困難である場面に多々遭遇します。そのため、精神科では患者さんに別の道を示し、その道に行く手助けをする役割がとても重要になってきます。その道案内が上手にいった時は、本当にこの仕事を選んでよかったと感じます。

 あと、これは私事ですが、妻との向き合い方や育児のことなど普段の生活でも、精神科医でよかったと思えることがよくあります。

 

最後に、医学生、研修医の方へのメッセージをお願いします。

 どの科に行っても、良い点と悪い点があると思います。ただ、どの科にすすもうが、どんな仕事をしようが、どんな事でも一生懸命取り組むと、とても面白い仕事になると思います。

 精神科を考えている先生方の中には、精神科を選ぶことで周囲から批判されたり、「精神」という言葉に漠然とした不安を抱くこともあるかと思います。ただ、精神科では実生活そのものが勉強になります。自身が抱く不安や葛藤はもちろん、食事や運動、音楽、映画、読書といった趣味までが実臨床に役立つので飽きることがありません。

 また、自身のライフワークにも様々な視点から影響を与えてくれるので、悩みながらもやりがいのある仕事です。若い先生方には、多くのことを吸収しながら治療に幅や深みを持ち、多様な患者様に対して、その人に合った治療法を模索していただけたら幸いです。

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