公益社団法人 日本精神神経学会

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医学生・研修医の方へ|for Residents and Medical Students

精神科医のキャリアパス

更新日時:2019年1月4日
岡田 剛史 先生
自治医科大学精神医学教室
※所属は掲載日のものです
 
 
「消化器外科から精神科へ転科。『人間の幸せに直結する仕事をしてみたい』と考えていた中で、『患者さんの人生全体を診る』ものであることに感銘を受け、精神科医になることを決意しました。」(掲載日:2019年1月4日)

岡田先生が精神科医を志した理由を教えてください。

  私は初期臨床研修終了後、すぐ外科(消化器外科)に入局しましたが、あまりに手術が下手だったために、他科への転科を考える様になりました。初期研修で精神科をローテーション時の指導医(その先生も産婦人科から転科された先生でした)が、「精神科は他科で身につけた技能が活かせる」と話していたことを思い出しました。また、当時は主に膵臓チームとして活動していましたが、膵臓癌は予後が悪く、必然的に終末期医療に接することが多くなる中で、「人間の幸せに直結する仕事をしてみたい」と漠然と考えてもおりました。その様な中で、精神医学の書籍を読み漁り、自治科大学の精神科の見学を行い、精神科がまさに「患者さんの人生全体を診る」ものであることに感銘を受け、精神科医になることを決意いたしました。とはいえ、当時は精神科に対する漠然としたイメージしかなく、本当の魅力がわかるようになったのは実際に精神科診療に従事してからというのが正直なところです。

 

現在はどのような働き方をされていますか?また、なぜ今の働き方を選んだのか、理由を教えてください。

 現在は医者10年目、精神科医としては5年目となります。これまでは県立病院での精神科スーパー救急医療にも従事してきました。主に自治医科大学付属病院で臨床をしておりますが、週に一回、県立病院で外来および精神科救急業務に従事するとともに、身体管理能力を維持したいという気持ちから、他院で外科系当直を継続しています。また、社会人大学院生として臨床業務の傍ら動物実験をしています。

 当院では受け持てる症例の数や種類が豊富であり、臨床業務の中で日々新しい発見があり、それを元に臨床研究につなげたりもしています。臨床研究を比較的自由に立ち上げられる医局の雰囲気や、当学の研究への手厚いサポート体制があってのものだと思います。また、精神科医になってから、総合病院精神医学領域、特に移植に関わる分野に魅力を感じていることから、大学病院での勤務を継続しております。

 

精神科を選んで良かったことは何だと思いますか?

 精神医学は他科に比べると未だ未解明な部分が多く、臨床に取り組む上で、科学的な視点を持ち、フラットな視点で物事を判断する必要があると思います。一方で、医療者個人の価値観、物の考え方が診療に非常に大きな影響を与える診療科であるのも事実です。精神科臨床は医師のみでは決して成り立ちません。患者さんの回復過程では、患者さん本人、ご家族、医師、コメディカルなどが有機的に反応して行く事があります。その中で、もちろん患者さんの回復は何より嬉しい事ですが、自分自身が変化し、医師としても人間としても成長して行く事が感じられるのも精神科ならではないかと思います。患者さんのカルテを数年後に見返す事があるのですが、その患者さんに対する自分の捉え方が全く変わっていている事があります。自分の変化に気づいて驚くのも、楽しいものですよ。

 また、比較的、時間的な余裕があるのも魅力です。呼び出しもほとんどありませんから、休日は存分にプライベートを楽しむ事ができます。私も子供が2人おり、休日はほとんどレジャーに出かけておりますが、他の診療科ではこうはいかなかったでしょう。最初は休日に仕事をしないことに罪悪感を感じていたのですが、今では十分なリフレッシュも診療を充実させる、仕事のうちであると考えております。

 

最後に、医学生、研修医の方へのメッセージをお願いします。

 精神科に対してはっきりしたイメージが湧かず、不安に思っている方もいるかもしれません。しかし、それはある意味当然です。精神科と言っても、脳科学、薬理学などの生物学的分野や、精神病理学、哲学、などという人文系分野、さらには、コンサルテーション・リエゾン、司法・行政、産業医学など様々なジャンルがあるからです。これらのうち、何を得意として、どの様に組み合わせて診療を行うかは、本当に皆それぞれです。既に好きなジャンルがある人はもちろんそれを大切にするべきですし、まだ見当がつかない人も実際に診療を始めたらきっと自分の肌に合うものが見つかると思います。勇気を持って精神科への一歩を踏み出していただけたらと思います。

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