公益社団法人 日本精神神経学会

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医学生・研修医の方へ|for Residents and Medical Students

精神科医のキャリアパス

更新日時:2018年5月16日
髙貝 就 先生
浜松医科大学児童青年期精神医学講座
※所属は掲載日のものです
 
 
「他職種の人達との対話を通じてお互いの立場を理解しようと努めるプロセスが、患児の症状改善や保護者の安心に結びついていくことを実感したときの充実感は、児童精神科ならではだと思います。」(掲載日:2018年5月16日)

髙貝先生が精神科医を志した理由を教えてください。

 まず、医師を目指した理由からお話します。小さい頃より対人援助に関心があり、医師という職業に憧れを抱いていました。しかし、理科系の勉強が苦手で手先も不器用であったため自分には手が届かない世界だと思っていました。実家から遠く離れた中学校に入学し寮生活を送っていたのですが、受験のタガが緩み勉強に身が入りませんでした。他の何かに打ち込むこともせず、振り返ればヘッセの「車輪の下」のハンス少年のような状態でした。中学・高校と低空飛行が続きましたがその反面で見栄だけは強く、実力にそぐわない大学を何度か目指しましたが力及ばず、第一志望ではなかった大学にやっと入学しました。しかし、そこでの学生生活に馴染むことができず、悶々としていました。そこに至って、これまで小さい頃から医師に憧れを抱いていたのに失敗を恐れて封じ込め、このまま目標のない怠惰な生活を一生送っていてもいいのかと自問自答を重ね、結局その大学を中退し医学部を再受験することにしました。目標が明確になると勉強にも身が入るもので、翌年の春に運良く医学部に入学することができました。学生生活では良い友人たちにも恵まれ、それなりに青春を謳歌していました。私は1996年の卒業ですが、当時はストレート研修が一般的であり、どの科を選ぶか卒業の直前まで随分と迷いました。最終的には医学部の中でも文系的な要素が多いところに親和性を感じて精神科を選び、実家から近い浜松医大に入局しました。

現在はどのような働き方をされていますか?また、なぜ今の働き方を選んだのか、理由を教えてください。

 臨床では浜松医大病院や静岡県内の関連病院で児童と思春期の症例を診ています。また、所属している講座が静岡県からの寄附講座であることから、静岡県内の自立支援施設や心理治療施設に入所している児童の診察や施設職員へのスーパーバイズを行っています。浜松医科大学および連合大学院の講義も担当しています。

 これまでも自分の働き方は、自分の意思を強く主張して進むというよりも地域や職場環境における需要に応えるという形で決まってきたように感じています。主体性に欠けるとお叱りを受けるかも知れません。浜松医大精神科に入局してからは大学病院や関連病院で満遍なくあらゆる領域の臨床を経験してきました。現在の児童臨床に舵を切ったきっかけは、浜松市内の総合病院で児童精神科の専門病棟が開設されることになったことでした。病棟の設置要件を満たすための指定医が不足していたため、当時は大学病院で病棟医長を担当していた私に赴任の話が降ってきました。突然の話でしたが、総合病院精神科で初代科長として新規に立ち上げた経験もあったので、これも何かの縁、児童の勉強をする良い機会だ、と思いお話を受けました。児童精神科病棟が立ち上がったところで後任の先生に部長職をバトンタッチし大学に戻りました。その後も児童の臨床を続け現在に至っています。
 

精神科を選んで良かったことは何だと思いますか?

 精神科医は家族や医療職だけではなく、様々な職種の人たちと協同することが案外多いです。例えば、不登校の子どもに対する支援について、学校の先生にこちらの意図が最初はうまく伝わらないこともありますが、話し合いを重ねることで、それぞれの立ち位置の違いと、子どもの成長を支援したいという気持ちは共通していることを実感できる場面を体験できることがあります。このような場面を一山越えると、その後の連携と治療がとても順調に進むことがあります。このように、他職種の人達との対話を通じてお互いの立場を理解しようと努めるプロセスが、患児の症状改善や保護者の安心に結びついていくことを実感したときの充実感は精神科ならではだと思います。これは成人のケースでも同様だと思います。

 

最後に、医学生、研修医の方へのメッセージをお願いします。

 精神科の臨床や研究の領域は生物学的な事柄から心理・社会的な事柄まで多岐に亘っており、興味の持てる領域がきっと見つけられると思います。もし、最初から興味を絞ることができなくても、きっと後から偶然が必然だったと思えるような出会いがあるでしょう。これを読んでいる研修医や学生の皆さんの中には、精神科に興味がありながらためらいつつ「チラ見」している方もいるのではないかと思います。チラ見のままで終わらず、思い切って精神科の海に漕ぎ出してみてください。面白い航海が待っていますよ。

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