公益社団法人 日本精神神経学会

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精神科医のキャリアパス

更新日時:2018年3月12日

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影山 祐紀 先生
大阪市立大学大学院 医学研究科

「精神科は文系と理系の両側面を持っています。多様性を受け入れてくれるおおらかな科の雰囲気は精神科の特長だと思います」

(掲載日:2018年3月12日)※所属は掲載日のものです

影山先生が精神科医を志した理由を教えてください。

 小説が好きで、小学校の頃からよく読んでいました。文庫本のそでに載っている作家の顔写真は憂鬱そうで、その表情がなぜかかっこよく感じられました。憂鬱を文学的なものと勝手に結び付けていただけなのですが、抗うつ薬がメランコリーな気分を改善させることを知り、高尚なものだと思っていた情動が薬によって影響を受けることに最初は反感を覚えました。しかし、次第になぜ抗うつ薬は気分を変えられるのか、そもそも憂鬱な気分はどのように生じるのかに興味を持つようになりました。薬学部に進学しようと思ったのですが、高校時代の友人から医学部の方が後の選択肢が多いとアドバイスを受け医学部に進学しました。

 卒業後、研修医として働き出すと循環器内科や神経内科など他の科が面白く感じられるようになり、進路をどうするか迷うようになりました。研修医2年目に精神科を回り、実際の診療に関わらせていただき、精神科の先生方に進路相談に乗っていただく中で、気分障害について研究したいと思うようになり精神科を志しました。

現在はどのような働き方をされていますか?また、なぜ今の働き方を選んだのか、理由を教えてください。

 現在は医者10年目で、大学院生の4年目になります。週のうち2日は精神科単科病院での外勤、1日は大学で外来業務、残り2日は気分障害に関する研究時間として自由に過ごしています。

 初期研修後すぐに大学院に行かず、今の働き方を選んだ理由ですが、まずは精神科の実臨床を経験してから研究に関わりたいと考えたからです。初期研修後、大阪府の阪南病院で3年間お世話になった後、大学医局に入局しました。1年間大学病院での勤務中に精神保健指定医と精神科専門医を取得したのちに大学院へ進学し、双極性障害の研究で高名な理化学研究所の加藤忠史先生のラボへ出向しました。平日の5日間は研究室で過ごし、土曜日は都内の精神科クリニックで臨床業務の機会を得られました。研究室ではマウスの扱いや分子生物学の実験など初めてのことばかりでしたが、研究室の方々皆様から本当に親切にご指導いただき、楽しく3年間を過ごすことができました。
 

精神科を選んで良かったことは何だと思いますか?

 精神科病院の日常業務は概ね定時に終わり、時間外に呼び出されることが少ないと思います。そのため自分のプライベートな時間を持ちやすいことが何よりのメリットだと感じています。現在の勤務時間は毎日9時から17時までで、残業もなく、5歳の子供を幼稚園へ送迎できるので助かっています。

 また、患者さんの治療にあたる際にチーム医療を強く実感できるところもメリットだと考えています。処遇困難な患者さんに対して、精神保健福祉士、看護師、臨床心理士、薬剤師、作業療法士、役所の担当者といった多職種の方と連携して協議対応し、皆で日常生活を支えていくところに精神科の醍醐味を感じます。

 他科からの転科という観点からも、精神科はいい選択肢だと思います。これまでの経歴や経験は精神科の診療の中で役に立ちます。当大学ではこれまで麻酔科、耳鼻科、小児科、呼吸器内科、消化器内科、消化器外科、泌尿器科、産婦人科から転科された先生がおられますが、皆様これまでに得た知識や持ち味を生かして活躍されています。
 

最後に、医学生、研修医の方へのメッセージをお願いします。

 精神科は文系と理系の両側面を持っています。それもあってか精神科を選択する理由や興味の矛先は先生方によって様々ですが、そんな多様性を受け入れてくれるおおらかな科の雰囲気は精神科の特長だと思います。

 精神科には児童精神学、老年精神医学、睡眠精神医学、リエゾン精神医学、犯罪精神医学、産業精神医学、精神病理学など様々な領域があり選択肢が多いことも魅力です。また、治療法の1つである精神療法だけに焦点あてても大変奥が深く飽きることがありません。

 精神科に対してあいまいでよく分からないといったイメージをもたれているかもしれません。その通りだと思います。現状では、分からないまま受け入れることも大事なことかもしれません。今後はこれまで不明瞭であった精神疾患の機序が明らかになることで、もう少し見通しのいい理解ができるようになるのではと思っています。精神科の臨床をする中で、病気のメカニズムなどに興味を持たれた際には基礎的な研究に触れてみることも選択肢の一つとして考えていただければ幸いです。
 

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