「不眠障害(不眠症)」の治療を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A

Q21 「不眠障害(不眠症)」の治療を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A

  • 21-1 もともと不眠障害(不眠症)なのですが、妊娠するとより眠れなくなったりしますか?

    21-1 妊娠中に不眠症状が強くなることはありえますが、対策もあります。

    アドバイス

    • 処方されている薬の調整の他、生活習慣の見直しなどで改善が期待できます。(Q21-6もご覧下さい)

    説明

    • 妊娠中には、誰しも身体の変化に合わせて、不眠の症状が出やすくなります。(Q1-2もご覧下さい)
    • もともとあった不眠の症状が強まることもありえます。
    • 不眠障害(不眠症)の治療薬を調整するほか、生活習慣を工夫するといった対応方法があります。(Q21-6もご覧下さい)
  • 21-2 不眠障害(不眠症)でもともと睡眠薬などを飲んでいますが、このまま妊娠しても問題ありませんか?

    21-2 通常の量であれば問題ありません。

    アドバイス

    • 可能であれば、より安全な睡眠薬に変えたり、量を減らしたりするとよいでしょう。
    • 睡眠薬の変更などは精神科医と相談しながらにしましょう。
    • リスクは低いですが、睡眠薬が原因で赤ちゃんに先天性異常が出るのを防ぐために、葉酸(1日0.4mg)を飲むとよいでしょう。
    • 睡眠時無呼吸症候群がある方は、よく治療医と相談されて下さい。

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    説明

    • 不眠障害(不眠症)治療に使われる薬のほとんどは、通常の使用量の範囲なら、妊娠中も授乳中も赤ちゃんにさほど影響しないと考えられています。(Q3-6もご覧下さい)
    • 最近は、より安全と考えられる薬も出てきています。(Q21-5もご覧下さい)
  • 21-3 妊娠中に睡眠薬を飲み続ける場合、注意することは何ですか?

    21-3 薬以外の対策を合わせて行い、薬の見直しも続けていくことです。

    アドバイス

    • 薬以外の治療と、薬の治療をバランスよく考えていきましょう。(Q21-6もご覧下さい)
    • どんな睡眠薬をどれくらいの量で使用しているか、産科医に伝えましょう。
    • リスクは低いですが、睡眠薬が原因で赤ちゃんに先天性異常が出るのを防ぐために、葉酸(1日0.4mg)を飲むとよいでしょう。

    説明

    • 妊産婦さんに限らず、睡眠薬だけで睡眠を確保しようとするよりも、睡眠薬以外の不眠治療も合わせて行い、なるべく睡眠薬の量を減らし、できれば睡眠薬を使わなくても睡眠がとれるよう工夫していくのが望ましいところです。
    • 妊娠末期に睡眠薬を飲んでいると、出産直後の赤ちゃんに元気がなくなったりすることがあります。産科医に前もって伝えておいて下さい。(Q3-6もご覧下さい)。
  • 21-4 不眠障害(不眠症)の治療を受けていますが、妊娠やお産の後に気をつけることがありますか?

    21-4 夜間の授乳の負担を減らすことが望まれます。また、うつ病などが出ないか注意しましょう。

    アドバイス

    • 授乳中の赤ちゃんに眠気などの影響が出ることはまれですが、念のために小児科医の確認を受けるとよいでしょう。
    • 夜間の授乳は周囲の方にも分担してもらうとよいでしょう。
    • 母乳には利点もいろいろありますが、人工乳での育児でも特に問題はありません。

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    説明

    • 産後は誰でも、うつ病の症状(抑うつ状態)や双極性障害(双極症)の症状(躁状態・軽躁状態)が出やすくなります。
    • 産後に不眠の症状が強まったような時には、精神科医と相談して産後うつ病ではないかどうか確認することが望まれます。
    • 不眠障害(不眠症)の治療薬の多くは、母乳を通じて赤ちゃんに影響を与えることはほとんどないと考えられています。
    • ちなみに、現在の人工乳は、母乳に引けを取らない栄養を含んでいますので、人工乳による育児でも問題はないと考えられています。(Q3-7Q3-8もご覧下さい)

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  • 21-5 睡眠薬にはどのようなものがありますか?

    21-5 従来よく使われてきて、効果・副作用などが十分明らかになっているタイプのものや、副作用はより少ないと考えられているものの、発売になってから日の浅いものなど、様々な種類があります。

    アドバイス

    • どの薬を使うか、どう変えていくかなどはかかりつけ医師とご相談下さい。

    説明

    主なものは以下のとおりです。

    表 睡眠薬の種類や特徴

    種類 短所 妊娠・出産・授乳 薬の例
    バルビツール酸系 依存・耐性強い 勧められない ラボナ、イソミタール など
    ブロモバレリル尿素系 依存・耐性強い 勧められない ブロバリン
    ベンゾジアゼピン系睡眠薬 依存・耐性がある
    薬によっては転倒しやすい
    一時的に脳の情報処理に支障をきたすことがある
    なるべく少量にする
    無理のない範囲で非薬物療法にするか、他の薬への変更も考える
    授乳に関しての危険度は低い
    ブロチゾラム(レンドルミン)、トリアゾラム(ハルシオン)など
    非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 依存・耐性がある
    ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べると転倒しにくい
    なるべく少量にする
    無理がなければ非薬物療法に切り替える
    授乳のリスクは低い
    エスゾピクロン(ルネスタ)、ゾルピデム(マイスリー)
    オレキシン受容体遮断薬 悪い夢を見ることがある 比較的安全と考えられているが確定はされていない スボレキサント(ベルソムラ)、レンボレキサント(デエビゴ)
    メラトニン受容体作動薬 比較的安全と考えられているが確定はされていない ラメルテオン(ロゼレム)
  • 21-6 睡眠薬を飲む以外の治療について教えて下さい。

    21-6 生活習慣を見直すこともひとつの方法です。

    アドバイス

    • 以下のようなことを心がけるとよいでしょう。
      • 起床時刻を毎日一定にする。
      • カフェイン飲料を避ける。
      • 日中に運動する(無理は禁物です)。
      • ふとんの中でスマートフォン操作・読書・テレビ視聴などをしない。
      • 眠くなってからふとんに入る。
      • 昼寝は午後3時より前の30分以内にして、日中ごろごろしない。

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    説明

    • 不眠の原因には以下のようなものがあります。
      • 生活習慣
      • ストレス
      • アルコール(寝つけても睡眠の質が悪くなる)、カフェイン、タバコなど
      • テレビ、インターネットなど(特にブルーライト)
      • 悩み、痛み、病気など
      • 眠ろうとしすぎる(睡眠時間を気にする、時計ばかり気にする)
      • 起きる時間が不規則
      • 食事や運動が不規則
      • 騒音、不適切な温度や湿度、寝具があわない、悪臭、部屋が暗くならない

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