「アルコール使用症または薬物使用症」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A

Q17 「アルコール使用症または薬物使用症」の診断を受けている方の妊娠・出産・子育てに関してのQ&A

  • 17-1 アルコール使用症または薬物使用症と診断されていますが、出産・子育ては可能ですか?

    17-1 可能です。しかし、アルコール使用症または薬物使用症は病気です。積極的に治療を受けるとよいでしょう。

    アドバイス

    • 治療を継続(中断している人は再開)すれば、出産・子育てにもよい影響が出ます。積極的に治療を受けましょう。(Q2-8Q17-3もご覧下さい)
    • 実際に「使用をやめる」までには大変長い時間がかかることが珍しくありません。本人もくじけず、周囲の方もあせらず見放さず冷静に見守り続けるとよいでしょう。
    • 妊娠した場合、産科医や助産師、その他のスタッフに依存症(使用症)の状況を伝えて下さい。(Q2-9もご覧下さい)
    • 出産・子育てへの影響を防ぐために、妊娠中から地域の保健師に依存症(使用症)の状況を把握しておいてもらい、必要に応じて地域の支援を行ってもらうとよいでしょう。
    • 遺伝に関しては、Q2-3をご覧下さい。

    説明

    • アルコール使用症または薬物使用症は、しばしば「否認の病」ともいわれています。使用症と診断されていても、自分が依存症(使用症)という病気であると認めるのが難しいためです。病気ですから、糖尿病や高血圧などと変わりはありません。否認を克服して病気を受け入れていくことが、依存症(使用症)の回復のプロセスそのものともいえます。
    • 本人が、自身の病気を認めるのが非常に難しい病気ですが、反対に、自覚を持つと回復につながります。しかし、そのために自覚を強要するのは逆効果になります。周囲の方も温かく見守り続けてほしいと思います。

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  • 17-2 妊娠中・出産後にアルコール・違法薬物を使用すると、子どもにどのような影響がありますか?

    17-2 お子さんの発達に深刻な影響を及ぼすことがあります。

    アドバイス

    • 妊娠中・出産後には、アルコール・違法薬物の使用は、(やめるのが難しいと感じても)一切やめるべきです。(Q2-1もご覧下さい)

    説明

    • 妊娠中・出産後にアルコール・違法薬物を摂取すると、流産や死産、お母さんの身体には高血圧や胎盤剥離など、赤ちゃんには様々な形態異常や神経発達の障害などを引き起こすことがあります。
    • 妊娠中・出産後に、アルコールや違法薬物を摂取すると、お子さんが成人した後も精神障害を持つリスクが上昇するなどの影響がありえます。
    • アルコールや他の薬物への依存は、子育てだけではなく、家庭内の人間関係にも悪い影響を及ぼし、また、家庭内暴力の引き金となることもあります。(Q4-5もご覧下さい)
  • 17-3 妊娠前~妊娠中・出産後に、アルコールや薬物の使用をやめられない時は、どうしたらよいですか?

    17-3 「アルコールや薬物の使用をやめる」ことをサポートする治療プログラムがあります。精神科に相談してみて下さい。

    アドバイス

    • アルコールや薬物は、一人ではなかなかやめられません。それは、決して本人の意志が弱いからではありません。そのことを本人や周囲の方が理解し、誰かが専門家に相談することが重要です。
    • アルコールや薬物の使用をやめたい(やめさせたい)と思ったら、地域のアルコール相談や専門治療機関(保健所などに問い合わせて下さい)に相談するとよいでしょう。以下のサイトもご覧下さい。
      全国の相談窓口・医療機関を探す - 依存症対策全国センター (ncasa-japan.jp)

    説明

    • アルコールや薬物の使用をやめられないのは、「依存症(使用症)」だからです。依存症(使用症)は体質(病気)であり、自分の意志でコントロールすることはとても困難です。
    • 依存症の方は、誰でも「自分自身ではアルコール(薬物)をコントロールできない」のです。そのことを否定せずに受け入れ、「やめたい」という意志を持つことがとても重要です。
    • 依存症(使用症)の治療を、本人のやる気だけに任せるのは失敗のもとです。依存症(使用症)は病気であって、医療機関で治療すべきものです。
    • やめられない状態にあっても、本人のみならず周囲の方さえ「いつでもやめられる」「病気ではない」と考えてしまいがちです。しかし、「病気であると認めること」は回復にとても大切です。

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  • 17-4 アルコールや薬物をやめられない妊産婦の周囲のものは、どのように関わればよいですか?

    17-4 まずは、周囲の方が専門機関に相談して、適切な対応を知ることから始めるとよいでしょう。

    アドバイス

    • アルコール(薬物)を周囲の方たちだけで何とかやめさせようと思わずに、専門機関に相談して適切な対応を知ることから始めましょう。以下のサイトもご覧下さい。
      全国の相談窓口・医療機関を探す - 依存症対策全国センター (ncasa-japan.jp)
    • アルコール(薬物)が原因で、何らかの問題が生じた時にも、身内で解決しようとはせず、依存症(使用症)の専門家に相談するとよいでしょう。
    • 地域の精神保健福祉センターや専門医療機関で行っている家族教室などに参加するのもよいでしょう。

    説明

    • 本人が支援につながり回復するまでには、時間がかかったり、途中で挫折したりすることが珍しくありません。
    • 依存症(使用症)の治療を本人の意志だけに任せたり、逆に、周囲の方が無理やり「やめさせよう」としたりしても、失敗に終わることがほとんどです。かえって人間関係がこじれてしまい、問題を長引かせてしまいます。
    • アルコール(薬物)が原因で、何らかの問題が生じた時に、周囲の方がその尻拭いしてしまうと、本人は自分で責任を取らずにアルコールや薬物を摂取し続けることができてしまい、問題をこじらせてしまうことがあります。
    • 専門機関での家族教室や個別相談で、「依存症(使用症)」という病気についての知識、本人への対応の仕方を学ぶと、それによって、周囲の方のみならず本人の精神的負担も軽くなることが期待できます。

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  • 17-5 妊娠中・出産後にアルコールや薬物の使用をやめられない時、どのような治療がありますか?

    17-5 酒害教育、個人精神療法、集団精神療法、自助グループへの参加などがあり、心理社会的治療が主となります。

    アドバイス

    説明

    • アルコールの治療プログラムは、アルコールの害に関しての教育、病気の理解、断酒への取り組み、起きている問題への解決のサポート、家族へのサポート、再飲酒時の対処法と予防、社会生活の安定化、自助グループへの参加などが行われます。
    • 薬物依存症(薬物使用症)の治療は、基本的に外来で行います。治療は、心理療法、薬物療法、作業療法、生活環境調整を個人の状況に応じて組み合わせて行います。使用をやめられない時は、心理療法が治療の中心になります。

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