出産後に「赤ちゃんがかわいいと思えない」「赤ちゃんとの絆が築けない」と感じる方のためのQ&A
Q11 出産後に「赤ちゃんがかわいいと思えない」「赤ちゃんとの絆が築けない」と感じる方のためのQ&A
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11-1 ボンディングとは何ですか?
11-1 ボンディングとは、親から子どもへの気持ちの絆のことを指します。
説明
- ボンディングとは、親から子どもへの、気持ちの部分における絆のことを指します。そこには、子どもに対する「愛おしさ」、「守りたい」、「親密さ」などの肯定的な感情が含まれます。
- ボンディングは、妊娠中からできてきて、胎動の実感とともに成長します。
- ボンディングが、形作られていくタイミングには個人差があります。たとえば、赤ちゃんが入院して、触れ合う時間が短くなると、ボンディングの形成が遅れることがあります。
- 中には、赤ちゃんに対して親密な絆の気持ちが持てず、「自分の子どもであると感じられない」「 赤ん坊を見ると腹立たしくなる」「 こんな子でなかったらと思う」「子どもと一緒にいたくない」などという怒りや拒絶の感情がみられることがあり、これを「ボンディングの形成不全」といいます。
- ボンディングがうまく作られないと(ボンディングの形成不全が生じると)、子どもの授乳や抱っこ、スキンシップなどを、お母さんがつらく感じたり、赤ちゃんを避けたい気持ちになったりすることもあります。
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11-2 赤ちゃんへの気持ちの絆(ボンディング)を、うまく築けているかどうか知る方法はありますか?
11-2 子どもをかわいいと思えない、イライラしやすいという場合には、何らかの理由で気持ちの絆がうまく築けていない可能性があります。
アドバイス
- ボンディング(Q11-1もご覧下さい)は大切ですが、過度にとらわれないようにすることも大切です。誰にでも、子どもに対する否定的な気持ちが出てくることがあります。
- 子どもに対する否定的な気持ちは、打ち明けにくいものですが、一人で抱えずに、信頼できる周囲の方に相談するとよいでしょう。
- 子どもへの気持ちの絆がうまく築けているかどうかは、自分では判断が難しく、周囲の方にも聞きづらいことです。保健師や産科医、小児科医などに相談するとよいでしょう。
説明
- 産後は、授乳やおむつ替え等、しなければいけないことがたくさんあり、子どもをかわいいと思う余裕もなく過ぎていくことが、しばしば起こります。
- 自分が、子どものことをあまりかわいく思えていない、育児が楽しく感じられないということで悩んでいる方は大勢いらっしゃいます。または、周りの方からみて、そのような様子が心配されることも珍しくありません。
- 子どもへの気持ちの状態をみる『赤ちゃんへの気持ち質問票』があります。子どもへの親密な気持ちがあるかどうか、子どもに対してネガティブな気持ちが出ているかどうかを知ることができます。
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11-3 赤ちゃんがかわいいと思えない時、誰に相談したらいいですか?
11-3 保健センターの保健師などに相談するとよいでしょう。
アドバイス
- いつも赤ちゃんに全力で向き合い愛情深く接することができるような「完璧な親」である必要はありませんが、「自分は赤ちゃんのことを可愛いと思えない」と悩むようでしたら、一人で抱え込まずに、まずは保健師に相談してみるとよいでしょう。
- 保健師以外にも、相談機関(精神科や心療内科、母子の相談を行っているカウンセリングルームなど)に相談してみるとよいでしょう。
- 専門家と一緒に、どうして「赤ちゃんが可愛いと思えない」のか考えてみるとよいでしょう。
- お母さん自身に抑うつ感や不安が強い場合には、精神科あるいは心療内科に相談するとよいでしょう。(Q4-1もご覧下さい)
説明
- 産後は、ホルモンバランスの乱れや不眠などで、どんな人でも心身の不調をきたしやすい時期です。
- 心身の不調をきたしている時には、誰でも赤ちゃんに向き合う余裕がなくなります。
- 「赤ちゃんが可愛いと思えない」背景には、いろいろな理由があります。相談機関で話すことは、心を整理する第一歩になります。
- 「赤ちゃんが可愛いと思えない」気持ちを相談することについて、「秘密を保持してもらえるか」が心配になってためらわれるかもしれません。医療・保健・福祉などの相談機関には守秘義務があります。お話しになった内容が外部に漏れることは一切ありませんので、安心して相談して下さい。
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11-4 ボンディング形成不全(お母さんが子どもとの絆を築けない)を解決する方法はありますか?
11-4 周囲の手助けを受けること、公的サービスを利用することなどを通じて、お母さんが余裕をもって赤ちゃんと接触できる時間を増やすことは、ひとつの解決方法です。
アドバイス
- ボンディング(Q11-1もご覧下さい)は個人差がとても大きいので、ボンディングが少ないと感じたとしても、まずは、今あるボンディング(子どもとの絆)を大切にするとよいでしょう。
- 夜泣き、ぐずり、病気などは、子どもに対する否定的な気持ちを引き起こします。否定的な気持ちに気がついたら、周囲の方の手を借りるようにしましょう。保健師などに相談し、公的サービスを利用するのもよいでしょう。(Q1-5、Q4-5もご覧下さい)
- お母さん(養育者)が、たとえ小さくても、悩みを打ち明けられるように、周囲の方もよく話を聞いてあげて下さい(医学用語で傾聴といいます)。
- 赤ちゃんに否定的な感情がわく具体的な理由が思いつく場合、仮にそれが、望まない妊娠、パートナーからの暴力、幼少期のトラウマ(心的外傷)体験などの重いものであっても、それを受け止め寄り添ってくれる人は必ずいますから、勇気をもって打ち明けてみるとよいでしょう。そのことを、信頼できる周囲の方、保健師、保健センターなどの相談機関の人、精神科医などに伝えるとよいでしょう。(Q4-1もご覧下さい)
説明
- ボンディング形成不全は、お母さん、子ども、環境、その他の様々なことが複雑に絡んで生じるので、原因をひとつの理由に絞ることはなかなかできません。
- ボンディングは比較的新しい概念で、まだよくわかっていないこともあります。保健師や治療者なども手探りの面がありますが、よく話し合うことが解決の糸口になることは確かでしょう。