公益社団法人 日本精神神経学会

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医学生・研修医の方へ|for Residents and Medical Students

5. 心のサイエンスが花開こうとしている

更新日時:2015年1月28日

近年、神経科学の基礎研究者の間で、精神疾患に対する関心が高まっていることをご存じであろうか。実際、ネイチャー、サイエンスといった一流紙には、次々と精神疾患に関する動物実験による基礎研究の知見が掲載されているのである。その背景として、この10~20年の間に、脳と心についての研究が飛躍的に進歩したことが挙げられる。脳の発生に関する分子生物学的研究や、記憶・学習の基盤となるシナプス可塑性に関する分子生物学的な基盤の理解が進む一方、ファンクショナルMRIを用いた単純な心理課題を用いた研究から、次第に、人と人とがコミュニケーションしている際の心の働きを含め、社会的文脈における心の動きの脳基盤にまで研究が進んできた。さらに、特定の神経回路の活動を人為的に操作したり、観察したりすることで、神経ネットワークの活動と行動との対応関係についての詳細な研究が可能となりつつある。そんな中で、大きく進歩した脳科学の知識を元に、精神疾患という、過去100年原因が解明されなかった困難な疾患の原因に迫ろうという動きが盛んになりつつあるのである。操作的診断に基づくエビデンス精神医療の推進の中では、脳や分子の登場する場が見当たらないことも事実であるが、こうした現在の医療に盲目的に追随するだけでは、未来の精神医学はない。精神疾患の原因を明らかにし、疾患概念を再定義し、根本治療を目指すという、未来の精神医学の実現のために、研究の道に進む若い精神科医が求められている。

(理化学研究所 加藤忠史)

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