医学生・研修医の方へfor Residents and Medical Students

精神科医を志す若人へのメッセージ

理事長 武田雅俊

日本精神神経学会は、精神医学に関わる大学・病院・診療所などと連携して、精神医学を専門とする若人を育成し、良質の精神科医療を提供できる体制を整えたいと思っています。 現在、我が国の医師数は約27万人ですが、精神科を標榜している医師は1.4万人(5%)です。 このような医師数に対して精神科病院数は1100か所(全病院の10%)、病床数は35万床(全病床の20%)であり、良質の精神科医療を実現するためには精神科を専門とする医師の増加が必要と考えているからです。

増大する精神医療へのニーズ

精神疾患の患者数は年々増加しており、平成20(2008)年には323万人になりました。 精神疾患の患者数は第2番目の糖尿病(237万人)より多く、ガン患者数(152万人)の2倍以上を数えます。 このような状況から、2012年7月に策定された「5疾病5事業」の地域医療計画において、精神疾患は国がその対策を講ずべき重要な疾患と位置づけられました。 精神疾患の患者数は、これからも社会の複雑化・高齢化とともに増加していくものと考えられています。

精神科医の必要性

精神科医療は多職種にわたるチーム医療でありますが、その中心的役割を担うのは精神科医師です。 わが国の精神科医数は人口10万人当たり約10人ですが、欧米諸国と比較するとまだ少ないのが実情であり、今後の患者数増加と精神医療の充実を考えると、これから専門科目を決めようとしている一人でも多く若い医師に精神科医療に参画してほしいと願っています。

学会専門医制度の確立

精神神経学会は日本医学会を構成する基幹18学会の中では、一番新しく専門医制度をスタートしました。 それだけに、充分に検討された研修プログラムと認定試験を実施していると思っています。 始まったばかりの認定制度でありますが、専門医認定機構との連絡を密にして、社会に役立つ専門医制度が始まりましたので、学会としてはこの制度のもとに良質な精神科医師を提供することに努力していきたいと思っています。

サイエンスとしての将来性

2010年最初のNature誌はA Decade for Psychiatric Disorders と題したエディトリアルを掲載し、この十年は精神疾患の科学的解明が最も期待されると謳いあげました(Nature 463,9(7Jan 2010)。 今や精神疾患は研究の射程範囲に入ってきています。世界では、多くの神経科学・脳科学の研究者が精神疾患をターゲットとして、その解明に挑戦しています。 米国ではMD, PhDプログラムに入学する優秀な医学部学生の多くは精神科を志望するとも聞いています(T. Insel; NIMH Director’s Blog, April 20 2012)。 細胞生物学・分子遺伝学・脳機能イメージングなどのデータをバイオインフォマティクスの手法により解析・統合した新知見は、精神機能という人を人足らしめている重要な脳機能の解析を可能としつつあり、ようやく精神疾患の解明がなされるようになりました。

精神医学の間口の広さ

人は行動を通過として社会生活を営みます。 精神医学は人の行動異常を対象とした学問領域ですので、他の身体医学よりも心理・社会的な側面が強く、それだけ社会と密接にかかわっています。精神科医の活動は医療の枠に留まらず、行政・福祉・司法・教育などの幅広い分野での役割が期待されています。 純粋な自然科学の枠を超えた社会科学・人文科学の中での幅広い活躍が期待されているともいえます。

これからの精神科医療の発展に若い皆さんの力添えを頂けることを楽しみにしています。

参考

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