公益社団法人 日本精神神経学会

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10. 内科・外科に次いで最も歴史のある臨床科

更新日時:2015年1月28日

精神医学の歴史として、古いところでは紀元前1400年頃の古代ギリシアで、メランプスという予言者が狂気に陥った人間を薬と浄めで治したという記述が残っています。これを信じるならば、こころを癒す実践の学としての精神医学は気が遠くなるほど長い歴史を持っていることになります。しかしその後、こころの癒しという呼び方で一括される行為と理論は多種多様な文化的ヴァリエーションを持つことになり、時の流れとともに変遷を繰り返しました。これは概念的な混乱であると同時に、方法論の広がりを示すものであり、進歩・発展ととらえ得るものでもありました。

おそらく常識的には、今日われわれが精神医学と考えているものが確立したのは、1800年頃というのが妥当な見解でしょう。理由はフランス語圏の学者たちが述べているように、この時期、「精神医学」という言葉と「精神科医」という専門職が登場し、「精神医療施設」の再編が起こったからとされています。わが国の精神医学もこうした欧米の潮流に準拠するかたちで形成されていったのは周知の事実です。

何を精神医学と呼ぶかによってその歴史は変わります。しかし、一つだけ確かなことは、苦悩や逸脱を治そうとする意図こそが精神医学の原点であるという点です。これを重視するならば、われわれは精神医学を少なくとも3400年前から続いている営みとして規定することができるのです。

(岩手医科大学 酒井明夫)

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