公益社団法人 日本精神神経学会

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医学生・研修医の方へ|for Residents and Medical Students

8. これからの精神医学と女性医師の活躍の意義

更新日時:2015年1月28日

一般社会での精神医学へのニーズは多様化しており、最近のトピックスをみても、ニーズの多様化を反映したものになっています。医学の進歩は精神医学領域でもエビデンスを蓄積させ、これらが多様なニーズに専門的に応える原動力となっています。

これからの精神医学でさらなる充実が求められる内容の中に、発達障害と、女性のメンタルヘルスの障害の2つが含まれます。その理由に、これらの分野の研究が、統合失調症など他の障害分野の研究に比べてその歴史が短いこと、専門的に取り組む医師の数が少ないことがあります。

とりわけこれらの障害の原因、発症機序、診断評価、薬物療法については新たな知識を継続して取り入れていく必要があります。また、家族への心理教育や教育・福祉機関も含めた多領域にわたる処遇や治療では、精神科医師の力量が問われます。

特に女性医師はこれらの分野では研鑽をつみ、実力を発揮することができる立場にあります。研鑽を積むチャンスについては、最近女性医師に焦点をあて、より多くの研修の機会が与えられる仕組みを社会が作ったからです。たとえば育児期間など、どの時期でも女性が学び、パワーアップした形で職場に戻る、または新たな職場で能力を発揮できるような仕組みを予算付きで国が考えています。女性医師のクオリティーライフを損なわずに人材を有効に確保するためです。筆者の勤務する九州大学でも、きらめきプロジェクトと称する制度を通じて女性医師の研修をサポートしましたが、皆さま活き活きと学び、自然体で無理なく、しかし確実に実力をつけてその後の職場で活躍しておられます。また、治療面では、柔軟な対応が求められます。発達障害も女性のメンタルヘルス障害もライフサイクルを通しての視点を要する柔軟なアプローチが必要です。これには生活体験を通して磨いた感性も必要であり、この点、女性の職業人生は多様であるため有利です。女性精神医学は他の専門科目との協働も必要ですが、ちなみに若手産婦人科医師の過半数は女性医師となっていますし、ユーザーである女性患者さんも女性医師の診療を希望されることも多いのです。

これらを反映してか、ここで述べた分野は、国内外での関連学会でも女性医師の割合が多いのが印象的です。またこの分野で知り合った研究者、臨床家は長い間交流が続き、筆者もその恩恵を受けて楽しい経験と思い出を積んでいます。もちろん若手男性医師も昔と比べて職場の選択も働き方も多様化していますので、ここで述べたことがあてはまる方々も多いと思います。いずれにしてもキーワードは「しなやかな、そして粘り強い職業人生」です。この分野を多くの医師に経験していただきたいと考えております。

(九州大学 吉田敬子)

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