資料

本ガイド作成に至った経緯

2021年10月2日、日本産科婦人科学会・日本精神神経学会「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド(以後、専門家向けガイドとよぶ)」第17 回作成委員会(最終委員会)にて尾崎紀夫委員より「専門家向けガイドは一般公開されるとはいえ、当事者などには難解である。当事者の中には、病気になったことで妊娠をあきらめたという方もいるため、正しい知識の啓発となる当事者・一般向けのガイドが必要であると考える」との発言があり、検討の結果、一般向けのガイドを作成することが決定された。

日本産科婦人科学会、日本精神神経学会の承認を受け、正式に当事者・一般向けガイドの作成が開始となった。

本ガイドの基本理念

公益財団法人日本医療機能評価機構 EBM 普及推進事業 (Minds) には、患者・市民専門部会が設置されており、同部会による「診療ガイドライン作成への患者市民の参加の基本的な考え方」によると、「多様な患者・市民の価値観・希望をどのように推定するかが、推奨の作成、特にその強さの決定に際して重要な情報になる」ということが強調されている(「診療ガイドライン作成への患者・市民の参加」の基本的な考え方 | Minds ガイドラインライブラリ (jc Q hc.or.jp))。

そのため、本ガイドでは、日本精神神経学会から本ガイドに関して期待することについて、Google フォームを用いて無記名のコメントを収集した。その結果「周囲の方から妊娠に反対された」「遺伝が心配で妊娠がこわい」「出産後にうつ病になったが、どこに相談すればよいのかわからなかった」などのコメントが多数寄せられた。これらは、間違った知識やスティグマに基づいていると考えられたため、当事者のみならず一般市民が手軽に読んで理解しやすく、当事者が読んで、妊娠・出産・子育てに前向きになれるガイドにすることを原則とした。

本ガイドの作成構成員

本ガイドの基本理念を実現すべく、以下の組織を作った(イメージ図)。

本ガイドの基本理念を実現すべく、以下の組織を作った(イメージ図)

本ガイドの作成方法・手順

本ガイドは、前述のMindsが推奨する「患者市民の参加の基本的な考え方」を念頭に置きつつ作成した。具体的には以下のとおりである。

  • 専門家向けガイド作成時にも議論されたが、精神疾患を合併した、あるいは合併の可能性のある妊産婦の診療に関してのエビデンスは限定的であり、それゆえ専門家向けガイドもガイドラインとはせずに「ガイド」とした。本ガイドもそれを踏襲した。
  • 医学的妥当性を担保するために、その内容については専門家向けガイドに沿ったものにすることとした。ただし、当事者・一般の方の知りたい情報の中には、専門家向けガイドに含まれていないものが一部あり、その中には、ほとんどエビデンスのないものも少なくなかった。そのような場合は、作成委員のコンセンサスを記載した。
  • 形式は、当事者の疑問に委員が回答するクエスチョンとアンサー(Q&A)方式とした。
  • 当事者の意見により、ひとつのQ&Aは原則1ページ以内に留めることとし、一番重要なAをひとつの文章で表現し、次に重要なAをアドバイスとし、さらに情報を求める方のための説明と一部には参考資料という構成とした。
  • 作成委員間でスコープ(参考資料)を作成した。詳細は、各タイトルの目的、トピック、想定される利用者・利用施設、既存のガイドとの関係(前述のとおり、すべて専門家向けガイドに準ずる)、重要臨床課題、ガイドのカバーする範囲、Qのリストであり、作成委員の間でメール審議しながら決定した。
  • 各Q&Aは、担当作成委員と関連する当事者の作成協力メンバーとで議論を重ねながら作成した。この議論のやりとりの最も多かったQ&Aは、スコープ7(妊産婦と向精神薬)(後述)に関してで、延べ25人の当事者の作成協力メンバーから意見をいただき、それに基づく校正は計11回行われた。

具体的な手順・日程は以下のとおりである。

  • 日本産科婦人科学会・日本精神神経学会「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」第17回作成委員会(最終委員会)にて今後の展開として当事者・一般向けのガイドを作成する案が採択(2021/10/2)
  • ガイド作成準備委員会発足準備
  • 活動内容に関して両学会の承認、倫理審査などの検討(~2021/12/20)
  • 当事者・一般向けのガイド作成委員会(作成委員会)発足(2021/12/20)
  • 日本精神神経学会から当事者への「妊娠・出産に関しての悩み・悩んだこと、周産期の当事者・一般向けガイドに関して期待することについて、Googleフォームを用いて無記名のコメントを収集(2021/12/24~2022/2/28)
  • 第1回作成委員会にて上記で得られたコメント、今後の方針について検討(2022/1/30)
  • 委員間でメール審議を行いながら、当事者(患者本人、家族、支援者等)の中から同じ疾患の方などの意見を代表することのできる協力者(以下当事者という)の候補者選びと依頼など(2022/2/28までに終了)
  • 第1回当事者の意見を聞く会開催(2022/3/6)
  • 第1回作成委員会、第1回当事者の意見を聞く会を参考に、委員間でメール審議を重ね、スコープ案・クエスチョン案(第1案)を確定(2022/5/10)
  • 第2回作成委員会にてスコープ案・クエスチョン案(第1案)などについて検討(2022/5/21)
  • 第2回作成委員会の審議を基に、委員間で審議を重ねスコープ案・クエスチョン案(第2案)を決定(2022/6/20)
  • 第2回当事者の意見を聞く会にてスコープ案・クエスチョン案(第2案)について検討し、スコープ・クエスチョンを決定(ただし今後アンサー案を作成する中で修正することもありえるとした)。(2022/7/2)
  • アンサー案(第1案)を決定(2022/9/8)
  • アンサー案作成中に生じた用語などへの疑問について当事者へのアンケートを行った(2022/9/22~2022/10/11)
  • 第3回作成委員会にてアンサー案の検討(2022/10/1)
  • 当事者と作成委員の間でメール審議しながらアンサー案(第2案)を決定(2022/11/23)
  • 当事者の意見を聞く会(第3回)・作成委員会(第4回)を開催(2022/11/23)
  • 当事者の作成協力メンバー全員に全体の原稿をレビューしていただいた(2022/11/23~)
  • 当事者と作成委員の間でメール審議をしながらアンサー案(第3案)を確定(2023/1/24)
  • さらに、当事者の意見を伺いアンサー案(第4案)を確定(2023/2/1)
  • イラストに関しての話し合いを行い(2023/1/31)、制作(2023/1/31~2023/10/4)
  • 日本産科婦人科学会周産期委員会にて審議(2023/2/15~2/20)を受け、ご意見を踏まえ第一修正案作成(2023/2/20)
  • 第一修正案を日本精神神経学会ガイドライン検討委員会にて確認、ご意見を踏まえ第二修正案作成
  • 第二修正案を、日本産科婦人科学会理事会(2023/3/4)、日本精神神経学会理事会(2023/3/3)に提出
  • 全学会員を対象にコメントを募集(2023/4/24~5/8)ただし5/8以降のコメントにも対応
  • 学会員からのコメントへの回答作成(2023/5/11)
  • 最終案作成(2023/5/19)
  • 日本精神神経学会理事会承認(2023/5/20)
  • 5/8以降に学会員から寄せられたコメントへの回答作成(2023/8/2)
  • 日本産科婦人科学会臨時理事会承認(2023/6/3)
  • イラスト作成~挿入、最終調整など(2023/5~9月)

用語について

用語については、当事者・一般向けであることから、なるべく難解なものを避けるようにした。当事者の作成協力メンバーにアンケートを取り、その結果を原則採用した。さらに、実際の作成段階で議論されてきた用語については、当時者の立場を尊重した選択を行った。たとえば「パートナー」「家族」などの言葉は、それらが存在しない方にとっては非常に傷つきやすい言葉であるという指摘があり、できるだけ「周囲の方」などの表現にした。

また、社会的にも偏見、差別、スティグマを助長してノーマライゼイションを阻害し、社会的な予後を不良なものにしている可能性のある医学用語(第1回「痴呆」に替わる用語に関する資料 (mhlw.go.jp))、に関しては代替え用語を検討した。その際、概念を変えないこと、疾病名、障害の種類のいずれとしても適切に通用すること、不快語、差別語でないこと、かつ、価値中立的に表現するものであることとした。(日本小児科学会より「奇形」を含む医学用語の置き換えの提案 (med.or.jp)

例えば、「奇形」という用語に関しては、原則以下のように書き換えた。原則というのは、上記原則の範囲で、当事者の作成協力メンバーの意見も取り入れ、より一般的な用語がふさわしいと考えられる個所に関しては、個々に検討した。

  • anomaly⇒先天異常、先天性○○異常、異常
  • deformity⇒変形
  • malformation⇒形態異常、形の異常
  • teratogen⇒胎児毒性因子、おなかの赤ちゃんへの影響因子
  • その他

参考資料:各章の執筆にあたり事前に作成したスコープ

スコープ1

(1)タイトル 当事者に知ってほしい妊娠・出産の知識
(2)目的 妊娠・出産・育児は、精神疾患をかかえている女性の心身に対して大きな負担となるライフイベントである。こころの問題をかかえている女性が、妊娠中に起こりうる心身の変化と、それに関連したマイナートラブルへの対処を知っておくことによって、妊娠中のこころの負担を軽減できることが期待できる。精神科と産科、および多職種を含めた連携の様子を具体的に知ることによって、妊娠・育児が支援されていることを感じることができる。また、妊娠から育児期に享受できるソーシャルサポートへのアプローチ法を知っておくことによって、育児に対する不安が軽減できる。
(3)トピック
  • 妊娠生活をできるだけ快適にすごしてもらえるよう、妊娠・産褥期のマイナートラブルに対する知見も集積されてきた。
  • 精神疾患合併妊娠に対する保険収載や助成のほとんどが多職種連携を条件としたものとなっており、連携の重要性は社会的にも認知されてきている。
  • 子育て世代包括支援センター・特定妊婦・産後ケア事業などの行政にかかわるキーワード
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。多職種連携については、日本産婦人科医会の周産期メンタルヘルスマニュアルを参考に作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 妊娠中に起こりうる心身の変化について知識をえる
重要臨床課題2 妊娠中に起こりうるマイナートラブルに対応できる
重要臨床課題3 妊娠・育児期に利用できるソーシャルサポートにスムーズにアプローチできる
重要臨床課題4 精神科施設と産科施設の連携について理解することで、スムーズに診療を受けられる
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 妊娠中、とくに妊娠初期に起こりうる心身の変化とマイナートラブルへの対応
  • 多職種連携について、助産師やMSW の役割について
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 妊娠中には、おなかが大きくなること以外にどんな体の変化がおこるか?
2 妊娠中には、どのような体のトラブルがおこりやすくなるか?
3 妊娠中に起こった体やこころのトラブルは誰にどのように相談すればよいか?
4 精神科と産婦人科はどのように連携しているのか?
5 公共の育児サービスなどはどうすれば利用手続きできるか?
6 母親が服用している薬の影響を児が受けやすい時期などはあるか?

スコープ2

(1)タイトル 将来の妊娠を考えた生活や精神疾患との向き合い方(プレコンセプションケア)
(2)目的 精神科に通院中あるいは現在は通院していないが治療経験のある女性が、将来的な妊娠を視野に入れた治療やアドバイスを必要としている。本人だけでなく、その配偶者、さらには家族も含めた周囲の方もともに知っておくべきことを、妊娠前に相談する機会がプレコンセプションケアとなる。また、診断はされていない女性も対象としており、計画的な妊娠のプランを立てる中で、自身でメンタルヘルスのチェックを行うことを推奨する。本スコープの目的は、日本では、まだ一般的ではないプレコンセプションケアの考え方を一般の方にも理解しやすいように紹介し、適切なケアへとつなげることである。
(3)トピック
  • 妊娠前からの健康管理が、次世代の健康状態および自身のその後の健康状態を改善するということが糖尿病などで示されている。
  • 妊娠可能年齢に達したすべての⼥性に、妊娠前から健康チェックおよび生活習慣の改善を含めた積極的介入を実施することが提唱されている。
  • わが国では、「妊娠前にメンタルヘルスを整える」、との意識は未だ浸透しておらず、すべての妊娠可能な年齢の女性とそのパートナーが妊娠前にメンタルヘルスチェックをうけ、必要に応じてケアやカウンセリングをうけられる体制を整備していく必要がある。
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 生活習慣の検討(禁煙、禁酒、食生活の改善など)
重要臨床課題2 妊娠にむけた薬の調整
重要臨床課題3 遺伝カウンセリングの検討
重要臨床課題4 出産・育児サポート体制の準備
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 精神疾患を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者およびその両親など
  • 上記に係る地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 妊娠前に精神科の薬を調整した方がよいか?
2 子どもに精神疾患が遺伝することはあるか?
3 精神科に通院している身内(子どもなど)が妊娠を希望している。親・養育者として何かできることはあるか?
4 精神症状を持ちながらの子育てに不安がある。両親にもサポートは頼みづらい状況。今後の出産・育児について、どんな準備をしたらよいか?
5 精神科通院中です。妊娠にむけて、自分の生活で気をつけたらいいことはありますか?
6 妊娠したら、近くの産科クリニックで出産しても大丈夫でしょうか?
7 自分の精神疾患のことを産科医にも伝えなくてはいけないのでしょうか?
8 妊娠することを精神科医に反対されるのではという不安があります。どうしたらいいか。
9 精神疾患の当事者が不妊治療を受ける場合に注意することはあるか?

スコープ3

(1)タイトル 妊娠中に出現・発覚した精神症状の対応(うつ状態)
(2)目的 周産期では産後うつをはじめ、妊産婦がうつ状態になることが多い。本スコープの目的は、うつ状態がどのような状態か、どのように対処すればよいかを一般の方にも理解しやすいように紹介し、本人・家族に役立つガイドを作成することである。
(3)トピック うつ状態の症状
治療(環境調整、薬物療法、精神療法・心理療法、セルフケア、その他の治療、家族の対応・ケア)
医療機関などの相談機関へのかかり方
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 うつ状態の時の症状
重要臨床課題2 うつ状態のときに気をつけたいこと
重要臨床課題3 うつ状態のときに家族が気をつけたいこと
重要臨床課題4 うつ状態のときの精神科受診の留意点
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 精神疾患を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 うつ状態とはどのようなものか?
2 妊娠中にうつ状態になったとき、妊産婦自身はどのようなことに気をつければよいか?
3 妊娠中うつ状態になったときに周囲の方たちが気をつけることはどんなことか?
4 妊娠中にうつ状態になったときには、精神科を受診したほうがよいか?
5 妊娠中にうつ状態になった時に、抗うつ薬を飲み始めてもよいか?
6 産後うつ病に早く気づける方法は何かあるか?

スコープ4

(1)タイトル 妊娠中に出現・発覚した精神症状の対応(躁状態と精神病症状)
(2)目的 周産期には、躁状態や精神病状態を呈することがありうる。本スコープの目的は、それらがどのような状態か、どのように対処すればよいかを一般の方にも理解しやすいように紹介し、本人・家族に役立つガイドを作成することである。
(3)トピック
  • 躁状態は、気分・思考・行動が高揚する
  • うつ状態と混じることがある
  • 精神病症状は、常識的生活とはかけ離れた非現実的な知覚・思考・行動が見られる状態
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 周産期には急性に躁症状を呈したり、双極性障害(双極症)の病勢増悪により躁状態が悪化したりすることがある。
重要臨床課題2 周産期には産褥精神病などの急性精神病症状を呈したり、もともとの統合失調症などの精神病症状が病勢増悪することがある。
重要臨床課題3 本人の治療コンプライアンスが悪いゆえに、周産期に躁状態や精神病床状態が悪化することがある。
重要臨床課題4 精神科既往のある妊産婦について、本人・家族の躁状態や精神病状態への心理教育は、症状悪化の早期の気づき・早期対応に重要である。
重要臨床課題5 一般の妊産婦やその家族に急性の躁状態や精神病状態のことを知っておいてもらうことは、早期発見・早期介入に重要である。
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 精神疾患を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など・精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 周産期におこる躁症状(気分の高揚、活動性の亢進、万能感など)について教えて下さい
2 周産期におこる精神病症状(著しい興奮、幻覚や妄想、漠然とした著しい不安など)について教えて下さい
3 妊娠中に躁状態になった時には、どのようなことに気をつければよいか?
4 妊娠中、精神病状態の時には、どのようなことに気をつければよいか?
5 妊娠中に躁状態、精神病状態になった時にはどのようなサポートを受けられるか?

スコープ5

(1)タイトル 妊娠中に出現・発覚した精神症状の対応(コミュニケーションが難しい)
(2)目的 もともとは発達障害(神経発達症)の一つと考えられている精神疾患の中には、人とのコミュニケーションや他人の感情を理解することに困難を抱えるものがある。しかし、一部の人たちは目立った問題を生じることなく成人するものの、妊娠を機に産科医や支援者たちとのコミュニケーションがうまくいかなくなり、妊娠・出産に大きな不安を抱えることになることもある。また、パーソナリティに障害を持つ方は臨床場面において混乱を招きやすい。妊娠中に、このような障害に気が付き、支援されるための解決策を提示するのが本項も項の目的である。
(3)トピック
  • 自閉スペクトラム症では、視線が合わず、会話が続かない。
  • 自閉スペクトラム症では自分の気持ちをうまく伝えられない。
  • 注意欠陥・多動性障害では、約束を忘れやすく、しゃべりすぎたり、だしぬけに答えたりする。
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 精神科医が産科医療機関とつながっていない
重要臨床課題2 精神科医が妊娠しているという理由で診察してくれない
重要臨床課題3 産科医に自分の思いを上手に伝えられない
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 精神疾患を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 自分の困りごとについて医師にどのように伝たらいいかわからず、説明も理解できない。どうしたらよいか?
2 コミュニケーションが難しいことについて産婦人科と精神科の医療機関はどのように連絡しあっているのか?
3 妊娠中にコミュニケーションが難しいことが分かった時に、どのようなサポートが受けられるか?
4 妊娠している本人が医師や助産師とコミュニケーションが取れないが、どうしたらよいか?

スコープ6

(1)タイトル 死にたい気持ちが強いとき
(2)目的 日本の周産期死亡の原因の第一位は自殺であることがわかっており、周産期の自殺の予防は母子保健において重要課題である。自殺を防ぐために、自殺念慮への対応が重要である。本スコープの目的は、自殺念慮とそれへの対応について一般の方にも理解しやすいように紹介し、医師や母子保健関係者とともに患者と家族がどのように対応方法を一緒に考えるのに役立つガイドを作成することである。
(3)トピック
  • 自殺念慮
  • 妊産婦自殺
  • 自殺予防
  • ケースマネージメント
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 妊産婦の自殺の危機対応
重要臨床課題2 妊産婦の自殺念慮についての心理教育
重要臨床課題3 自殺ハイリスクの妊産婦のケースマネージメント介入
重要臨床課題4 自ら語られない自殺念慮のあるとき
重要臨床課題5 非自殺性自傷
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 精神疾患を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 死にたい気持ちが強くなったときどうすればよいか?
2 本人が死にたい気持ちが強いとき、家族はどのように対応すればよいか?
3 子どもがおなかにいて本当に自殺などするか?
4 死にたい気持ちが強くなったときの相談先はどこか?
5 死にたくはないけれど自傷行為をしたくてしようがないときはどうすればよいか?
6 本人が自傷行為をしているとき、家族はどのように対応すればよいか?

スコープ7

(1)タイトル 妊産婦と向精神薬
(2)目的 日本の医薬品添付文書では精神疾患治療薬のほとんどが妊娠出産、及び授乳に関して要注意或いは禁忌となっているが、海外では一律禁止とはなっていない。一方で、必要な精神科治療薬を服用することは、母子の健康及び安全に寄与するというデータもある。しかし、妊娠、授乳中の服薬に関しては、児への影響が全くないとは言えないため、患者および配偶者、さらには家族も含めた周囲の方の意見が尊重されるべきである。本スコープの目的は、基礎医学的なデータも含め、一般の方にも理解しやすいように紹介し医師とともに患者と家族が服薬に関しての方針を決定するのに役立つガイドを作成することである。
(3)トピック
  • 抗精神病薬は、最近非定型抗精神病薬が一般に使用されるようになり、以前に比べて安全性が高くなっている。
  • 抗うつ薬は、様々な構造式を持つ薬が開発され、以前のものに比べると安全性が高くなっている
  • 以前は、炭酸リチウムの催奇形性が高いと言われていたが、最近は、以前の報告より低いことなどが報告されている。
  • 睡眠薬に関しては、最近新規の作用機序を持つものが出てきており、通常の安全性は高くなっているものの妊娠出産授乳に関してのデータはほとんどない
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 周産期に精神科治療薬を服用することのリスク・ベネフィット
重要臨床課題2 周産期に精神科治療薬を中止することのリスク・ベネフィット
重要臨床課題3 日本ではベンゾジアゼピン系薬剤の処方が多いが、周産期においてはどうであろうか?
重要臨床課題4 精神科治療薬の母児に対する安全性に関する臨床データは限られているので、それを補う意味で基礎的データが参考にされることがある。
重要臨床課題5 日本の医薬品添付文書では従来「やむを得ず投与する場合には授乳は避けること」とされてきたが、母乳のメリットが精神科治療薬のリスクを上回る可能性がある。
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 精神疾患を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 精神科治療薬を飲みながら妊娠できるか?
2 妊娠中にどのような抗精神病薬や抗うつ薬を服用すると胎児に影響が出やすいか?
3 妊娠したので、薬をやめたい(やめさせたい)のですが、大丈夫なのか?
4 いわゆる安定剤(抗不安薬)や睡眠薬を飲んでいますが、妊娠中に続けてもよいか?
5 抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬を飲みながら母乳を与えることはできるのか?
6 いわゆる安定剤(抗不安薬)や睡眠薬を飲みながら母乳を与えることはできるのか?

スコープ8

(1)タイトル 困ったときの相談機関について
(2)目的 母子保健における親子の支援は、一つの機関・一職種でできることに限界がある。一方で親子の支援において縦割り行政施策により施設間の連携が困難なことがある。また、当事者にとってもいろいろな機関のサービスを同時に使用することが多い。本スコープの目的は、医療・保健・福祉など様々な機関のリソースを有効に使えるように、一般の方にも理解しやすいように紹介し、医師や母子保健関係者とともに患者と家族がどのように対応すればよいか、一緒に考えるのに役立つガイドを作成することである。
(3)トピック
  • 医療・保健・福祉のサービス
  • 地域資源
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 周産期における、当事者参加を重視した医療・保健・福祉の連携したサポート
重要臨床課題2 妊産婦が自身のメンタルヘルスについて知り、必要な際には関係機関に相談できること
重要臨床課題3 産科に通院中であるメンタルヘルス不調の妊産婦が、産科医療機関を通して保健機関や精神科医療機関に適宜相談できること
重要臨床課題4 児童虐待や養育不全のある、またはそれらのリスクのある妊産婦やその家族が適切なケアを受けられること
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 精神疾患を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 妊娠中や産後に起きた精神的な不調や悩みなどはどこに相談すればよいか?
2 子育てで悩んだり、育てる自信がなくなったりしたとき、どこに相談すればよいか?
3 自分のこころの問題や育児の悩みなどについて、今相談している所とは別の所に相談したいとき、どのようにすればよいか?
4 産科と精神科で連携してもらうようにするにはどのように伝えればよいか?
5 妊娠中や出産後に利用できる社会資源には、どのようなものがあって、どのようなサービスが受けられるのか?
6 産前産後に、こころの不調を生じ精神科を受診したいのに予約がすぐ取れないとき、どのようにすればよいか?

スコープ9

(1)タイトル うつ病
(2)目的 もともと女性は男性に比べてうつ病にかかりやすい。さらに周産期には、そのリスクが増大する。周産期に発症する可能性の高い精神疾患としてうつ病はもっとも知られているものである一方、周囲は出産後や子育てで一時的に気分が落ち込んだり疲れやすくなったりするのは当然と考えて医療や支援に結びつきにくい側面もある。この項目では、過去にうつ病になったことのある人、現在うつ病の人が周産期をどのように切り抜けるべきか、周囲が、どのようにうつ病に気が付くべきかなどについての疑問に答える。
(3)トピック
  • 産後うつ病を含めた周産期うつ病の有病率は約15%と高い。
  • 多職種連携によって抑うつ症状は低下する
  • 抗うつ薬を安易に控えるべきではないとされている
  • 抗うつ薬を安易に中断すべきではない
  • パロキセチンには先天性心疾患のリスクが指摘されている。
  • 認知行動療法・対人関係療法の有効性が示されている
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 【うつ病合併妊娠】周産期に改めて当事者・家族にうつ病の疾患教育を行うことは重要であるが、十分にされていない
重要臨床課題2 【うつ病合併妊娠】妊娠することにより、主にアドヒアランスの低下により中等症以上のうつ病の再発リスクが増加する
重要臨床課題3 【うつ病合併妊娠】妊娠中に抗うつ薬の内服が可能であるということが当事者・家族に十分に知られていない
重要臨床課題4 【うつ病合併妊娠】産後に抗うつ薬を内服しながら授乳できるということも知られていない
重要臨床課題5 【産後うつ】産後うつについて正しい知識(症状や治療など)が十分に普及していない
重要臨床課題 6 【産後うつ】産後うつの相談先が十分に知られていない
重要臨床課題 7 【産後うつ】産後うつは家族も対応に困る
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • うつ病を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 うつ病とはどのような病気なのか?
2 妊娠中は、抗うつ薬を止めた方がよいか?
3 妊娠中に抗うつ薬を飲み続ける時、注意することは何か?
4 出産後、うつ病にならない、あるいはもともとのうつ病を悪くしないための工夫があるか?
5 うつ病にかかっていても出産・子育ては可能か?
6 産後うつとはどのような病気なのか?
7 産後うつになりやすい人はどのような人なのか?
8 産後うつかもしれないと思った時にどこに相談したらいいのか?
9 産後うつに対してはどのような治療をするのか?
10 産後うつに対して、周囲の方たちはどのような対応をしたらよいか?
11 産後うつはどのくらいで良くなるのか?
12 抗うつ薬を飲みながら、母乳をあげられるのか?
13 産後うつになっても子育ては可能なのか?

スコープ10

(1)タイトル 統合失調症
(2)目的 最近の治療の発達により、統合失調症患者の出産が増えてきている。一方で、児への影響を心配して服薬を中断する、妊婦健診を受診しないなどの問題も指摘されている。当事者とご家族などに出産への正しい知識を提供し、安全に治療を継続し、適切に支援を受けていただくために、心配事の疑問に答えるのが本項目の目的である。
(3)トピック
  • 統合失調症患者の出産の機会が増えている。
  • 妊娠後半に連れて、徐々に服薬を控えたり、妊婦健診の受診率が下がったりする。
  • 妊娠中は安易に他剤に変更しないのが原則である。
  • 妊娠中、授乳中の抗精神病薬服用にはリスクとベネフィットが知られている。
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 周産期に改めて当事者・家族に統合失調症の疾患教育を行うことは重要であるが、十分にされていない
重要臨床課題2 統合失調症の遺伝に関してはセンシティブな内容であるが、臨床でなかなかとりあげられない話題である
重要臨床課題3 統合失調症の特性により、妊娠すると妊婦健診にきちんと行けなかったり、セルフケアが十分にできないことにより分娩合併症の増加が危惧される
重要臨床課題4 妊娠することにより、主にアドヒアランスの低下により統合失調症の再発リスクが増加する
重要臨床課題5 妊娠中に抗精神病薬の内服が可能であるということが医療者・当事者・家族に十分に知られていない
重要臨床課題 6 産後に抗精神病薬を内服しながら授乳できるということも知られていない
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 統合失調症を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 統合失調症とはどのような病気なのか?
2 統合失調症の当事者や周囲の方たちが、妊娠する前に気をつけておくことがあるか?
3 子どもに統合失調症が遺伝することがあるか?
4 統合失調症の当事者や周囲の方たちが、妊娠した時や妊娠中に注意すべきことは何か?
5 妊娠中は、統合失調症の薬を止めた方がよいのか?
6 妊娠中に統合失調症の薬を飲み続ける時、注意することは何か?
7 母乳をあげたい。統合失調症の薬を止められるのか?
8 統合失調症の薬は、子どもの発達に影響があるのか?
9 出産した後、統合失調症を悪くしないための工夫があるのか?
10 統合失調症にかかっていても出産・子育ては可能か?

スコープ11

(1)タイトル 摂食障害(摂食症)
(2)目的 摂食障害(摂食症)は若年女性に有病率が高く、妊産婦にもしばしばみられる。精神科の併存症も多く産後の育児行動にも影響が見られることがある。しかし、一般的に治療に対して非協力的であったり、病気であることを隠していたりすることが多い。このような摂食障害の妊娠に関する注意点を本人と周囲がどのように理解し、母児の安全を保っていくのかについて知ってもらう。
(3)トピック
  • 摂食に問題のある妊産婦は、摂食障害(摂食症)の有病率よりも高い可能性がある。
  • 神経性やせ症の回復期、神経性過食症では妊娠の可能性がある
  • 神経性やせ症の患者では、自らの低体重を否認することが少なくなく、そのために精神科を受診すらしていない人がいる。
  • 神経性過食症は体重が正常のため外見からは診断できないが、嘔吐や下剤乱用による低カリウム血症などがある。
  • 摂食障害(摂食症)では月経不順を伴うこともあり、予定外の妊娠が多い
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 摂食障害(摂食症)患者も妊娠の可能性がある
重要臨床課題2 摂食障害(摂食症)は食行動が安定していても心理的特徴による辛さが残ることがある。また、他の精神疾患との併存率が高い疾患である。
重要臨床課題3 治療は生活の規則化、食の規則化が基本である
重要臨床課題4 妊娠中の症状の変化、パートナーからの暴力
重要臨床課題5 児への影響が懸念される
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 摂食障害(摂食症)を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 摂食障害(摂食症)があるが出産・子育てはできるか?
2 摂食障害(摂食症)があるので、妊娠・出産後の体重の変化が気になる。
3 摂食障害(摂食症)の方の体重が安定しているときに気をつけることがあるか?
4 妊娠中の摂食障害(摂食症)の治療はどのように行われるか?
5 妊娠中に食行動やパートナーとの係わりが変わることがあるのか?
6 摂食障害(摂食症)が児へ影響することはあるのか?
7 妊娠中・出産後の摂食障害(摂食症)に関連した悩みを相談できるところはあるのか?

スコープ12

(1)タイトル アルコールや薬物をやめられない
(2)目的 妊娠中の物質使⽤の予防を最優先とすること、予防や治療サービスへのアクセス、物質使⽤障害の複雑性や多⾯性に合った包括的なケア、患者の⾃主性の尊重や差別やスティグマへの対応などについて本スコープで扱い、当事者や家族に理解を促し、親子の心理社会的な問題の一次・二次・三次予防を図る。
(3)トピック
  • アルコール使用症または薬物使用症の症状
  • 妊娠中・授乳中のアルコールや薬物使用の影響
  • 周産期におけるアルコール使用症または薬物使用症の治療
  • 家族に知っておいてもらいたいこと
  • アルコールや薬物に暴露された胎児・乳児の発達への影響
  • 胎児・乳児への虐待であること(「虐待」という言葉は使わずに、本人を責める内容ではなく、児のためにも現状を自己認識し援助希求してもらえるように図ることを主旨とする)
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 物質使⽤障害を持つ妊産婦のケアについての包括的原則(予防の最優先、予防や治療サービスへのアクセスの確保、患者の自主性の尊重、包括的なケアの提供、差別やスティグマからの保護)
重要臨床課題2 妊娠中の危険/有害な物質使用へのスクリーニングと短期介入
重要臨床課題3 妊娠中の物質使用障害への心理社会的介入について
重要臨床課題4 妊娠中の解毒あるいは断酒・断薬プログラムについて
重要臨床課題5 物質依存のある妊産婦の維持/ 再発予防のための薬物療法
重要臨床課題6 アルコール依存や薬物依存の母体の授乳について
重要臨床課題7 アルコールに曝露された胎児・乳児の発達への影響
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • アルコール依存症(使用症)を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 周産期にアルコール・違法薬物を使用するとどどのような影響があるのか?
2 周産期にアルコールや薬物の使用をやめられないときどうしたらよいか?
3 周産期にアルコールや薬物の使用をやめられないとき、どのような治療があるか?
4 アルコールや薬物をやめられない妊産婦の周囲の方たち、はどのように本人に対応すればよいか?
5 アルコールや薬物の使用障害と診断されていて、出産・子育ては可能なのか?

スコープ13

(1)タイトル パーソナリティ症
(2)目的 パーソナリティに障害を持つ方は臨床場面において対立や混乱を招くことが多い。
(3)トピック
  • 精神疾患との併存率が高い。
  • 本人に病名が告知されていない場合が多い。
  • 周産期パーソナリティ症に対しては薬物療法に頼りすぎない
  • 自傷行為、激しい怒り、分離不安と関連している。
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 パーソナリティ症は、当事者本人は告知されていないことも多く、家族が対応に苦慮していることが多い
重要臨床課題2 特にボーダーパーソナリティ症の当事者は、対人関係の不安定さから、医療者、行政などと安定した関係を築きづらい。このため、ケアギバーになる人々が陰性感情を抱くこともままあり、適切な支援体制を構築することが困難である
(*上記を考慮すると、当事者向けというよりは、家族向けのCQにすることがよいのではないか?)
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • パーソナリティ症を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 パーソナリティ症と診断されている当事者および周囲の方たちが妊娠・出産・子育てで気をつけることは何か?
2 感情が不安定で激しい怒りが出てしまう。どうしたらいいか?
3 パーソナリティ症と診断されている方が「あの保健師は嫌いだ」という気持ちからどうしても連絡がとれない場合、どのようにしたらよいか?
4 パーソナリティ症を抱えていて、出産・子育ては可能か?
5 妊娠・出産・子育てをしている時の、パーソナリティ症の治療はどのように行われるのか?

スコープ14

(1)タイトル 発達障害(神経発達症)
(2)目的 発達障害( 神経発達症) は生活上の困難さを引き起こす原因となりうる。したがって、周産期にはさらなる困難に直面する可能性がある。
(3)トピック
  • 発達障害(神経発達症)の当事者は自己評価が低く長期間対人的困難を抱えていることが多く、育児困難に陥る可能性が高い。
  • 発達障害(神経発達症)の当事者はコミュニケーションに困難を抱えていたり、感覚に過敏であったりするために妊娠・子育てに大きなストレスを抱えやすい。
  • 発達障害(神経発達症)の当事者は決断することが苦手である。
  • 発達障害(神経発達症)の当事者は、衝動性を伴うことがあり虐待に配慮する必要があることがある。
  • 心理社会的介入、薬物療法などで対応する。
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 発達障害(神経発達症)は特性が育児の困難感に直結する
重要臨床課題2 抽象的概念の理解が困難のために具体的な指示が必要である
重要臨床課題3
重要臨床課題4
重要臨床課題5
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • 発達障害(神経発達症)を持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中に精神症状を呈した人と配偶者など
  • 精神疾患を合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 助産師さんからいろいろ指導されるが、全然頭に入ってこず、パニックになってしまう。
2 産後、やることがとてもたくさんあって何をすればいいのかわからない
3 赤ちゃんが泣いている理由がわからない
4 赤ちゃんにどのような言葉をかけたらよいかわからない
5 発達障害(神経発達症)の妊産婦を、周囲はどのように支えればよいか?
6 発達障害(神経発達症)があっても出産・子育ては可能か?

スコープ15

(1)タイトル てんかん
(2)目的 てんかん患者の妊娠・出産の支援は、正しい情報を提供して患者の不安を減らし、妊娠を考慮した最適な処方にすることが望まれる。本項目の目的は、正しい情報を一般の方に提供することである。
(3)トピック
  • てんかんであっても基本的に通常の妊娠・出産は可能である
  • てんかん患者の子がてんかんになる可能性はそれほど高くない。
  • 妊娠中の発作は胎児にリスクがある。
  • 抗てんかん薬は、可能な限り早期から調整することが望ましい。
  • 高用量のバルプロ酸は胎児にリスクがあるものの用量依存的であり、安全な薬もある。
  • 妊娠中は薬の濃度が低下することがある。
  • 分娩に関しては、参加と精神科の連携が好ましい。
  • 授乳に関しても日本の医薬品添付文書においては避けることと記載されているものの、医学的には原則可能である。
(4)想定される利用者、利用施設 ①患者、配偶者、家族、支援者
②コメディカルスタッフ、医療従事者など
(5)既存ガイドとの関係 本ガイドは、日本産科婦人科学会と日本精神神経学会が作成した「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」をもとに作成する。
(6)重要臨床課題 重要臨床課題1 てんかんという病気と妊娠・出産
重要臨床課題2 妊娠中のてんかん発作
重要臨床課題3 薬の影響
重要臨床課題4 妊娠する前の準備
重要臨床課題5 妊娠がわかったら
重要臨床課題6 授乳
重要臨床課題7 産後の育児について
(7)ガイドがカバーする範囲 カバーする範囲
  • てんかんを持ちながら妊娠を希望する人と配偶者など
  • 妊娠中にてんかん発作を呈した人と配偶者など
  • てんかんを合併しながら妊娠された人と配偶者など
  • てんかんを合併しながら産後の生活や育児をされている人と配偶者など
  • 上記に係るコメディカルスタッフ、地域の支援者など
(8)クエスチョン(Q)リスト 1 てんかんが子供に遺伝することはないか?
2 出産や子育ては可能か?
3 妊娠中に強いてんかん発作が起こるとどんな危険があるか?
4 妊娠中にてんかんの薬を飲むと、子どもにどんな影響があるのか?
5 妊娠中に服用する抗てんかん薬として、どういうものが適しているか?
6 妊娠に向けて抗てんかん薬の処方を変える場合、どのようにしたらよいか?
7 抗てんかん薬を服用しながら妊娠する場合、葉酸を一緒に服用した方がよいか?
8 産科の医師とてんかんの医師は、どのように連携するのか?
9 てんかんの薬を飲みながら母乳をあげられるか?
10 てんかんの当事者や周囲の方たちは、授乳、沐浴、抱っこするときなど、産後の生活でどんなことに注意すればよいか?

個人としての利益相反

「精神疾患を合併した、或いは合併の可能性のある妊産婦の診療ガイド」当事者・家族版作成委員会では、委員長・執筆者一覧掲載者と製薬企業との間の経済的関係につき、以下の基準で過去3年間の利益相反状況の申告を得た。
委員長・筆者一覧掲載者はすべて「こころの不調や病気と妊娠・出産のガイド(一般の方向け)」の内容に関して、関連疾患の医療・医学の専門家として、科学的および医学的公正さと妥当性を担保し、周産期メンタルヘルスの診療レベルの向上を旨として編集作業を行った。利益相反の扱いに関しては、日本医学会「診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス」に従った。
申告された企業は以下の通りである(対象期間は2021年1月1日~2023年12月31日)。企業名は2024年2月現在の名称とした。

委員 ①顧問 ②株保有・
利益
③特許
使用料
④講演料 ⑤原稿料 ⑥研究費 ⑦寄附金 ⑧寄附講座 ⑨その他
鈴木 映二 該当なし 該当なし 該当なし

エーザイ株式会社

大塚製薬株式会社

MSD株式会社

該当なし 該当なし

エーザイ株式会社

持田製薬株式会社

該当なし 該当なし
小谷 友美 すべて該当なし
佐藤 昌司 すべて該当なし
下屋 浩一郎 すべて該当なし
鈴木 俊治 すべて該当なし
小笠原 一能 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 大日本住友製薬株式会社
尾崎 紀夫 該当なし 該当なし

武田薬品工業株式会社

田辺三菱製薬株式会社

大塚製薬株式会社

エーザイ株式会社

EAファーマ株式会社

武田薬品工業株式会社

住友ファーマ株式会社

ヴィアトリス製薬株式会社

該当なし

エーザイ株式会社

大日本住友製薬株式会社

株式会社地球快適化インスティテュート

武田薬品工業株式会社

株式会社リコー

大塚製薬株式会社

住友ファーマ株式会社

大塚製薬株式会社

大日本住友製薬株式会社

株式会社地球快適化インスティテュート

エーザイ株式会社

住友ファーマ株式会社

田辺三菱製薬株式会社

該当なし 該当なし
加藤 昌明 すべて該当なし
菊地 紗耶 該当なし 該当なし 該当なし 住友ファーマ株式会社 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
立花 良之 すべて該当なし
根本 清貴 該当なし 該当なし 該当なし

大塚製薬株式会社

日本イーライリリー株式会社

該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
吉村 公雄 すべて該当なし
清水 杏里

株式会社ワーカーズドクターズ

株式会社メディカルリソース

該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
飯田 仁志 該当なし 該当なし 該当なし ヤンセンファーマ株式会社 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
福本 健太郎 すべて該当なし

申告事項

  1. 企業や営利を目的とした団体の役員、顧問職の有無と報酬額が年間100万円を超えている
  2. 株の保有と、その株式から得られる利益が年間100万円を超えている
  3. 企業や営利を目的とした団体から特許権使用料として支払われた報酬が年間100万円を超えている
  4. 1つの企業や営利を目的とした団体より、会議の出席や講演に対し支払われた報酬が年間50万円を超えている
  5. 1つの企業や営利を目的とした団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料が年間50万円を超えている
  6. 1つの企業や営利を目的とした団体が提供する研究費が年間100万円を超えている
  7. 1つの企業や営利を目的とした団体が提供する奨学(奨励)寄附金が年間100万円を超えている
  8. 企業などが提供する寄附講座に所属し、実際に割り当てられた寄付額が年間100万円を超えている
  9. その他の報酬(研究とは直接に関係しない旅行など)が年間5万円を超えている

組織としての利益相反

日本精神神経学会企業・法人組織、営利を目的とする団体からの資金提供状況
(対象期間は2021年1月1日~2023年12月31日)

1)日本精神神経学会への企業・法人組織、営利を目的とする団体からの資金提供状況

①学術総会 企業展示ブース利用料
エーザイ株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、MSD株式会社、大塚製薬株式会社、小野薬品工業株式会社、株式会社S'UIMIN、住友ファーマ株式会社、第一三共株式会社、大日本住友製薬株式会社、武田薬品工業株式会社、田辺三菱製薬株式会社、帝人ファーマ株式会社、東和薬品株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、Meiji Seikaファルマ株式会社、持田製薬株式会社、ヤンセンファーマ株式会社、ルンドベック・ジャパン株式会社

②学術総会 ブース利用料
株式会社明石書店、大井書店、株式会社ガリバー、株式会社紀伊國屋書店、株式会社九州神陵文庫、株式会社金剛出版、株式会社志学書店、株式会社星和書店、株式会社ニホン・ミック

③学術総会 広告料
株式会社医学書院、ヴィアトリス製薬株式会社、エーザイ株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、MSD株式会社、大塚製薬株式会社、OBELAB、有限会社科学評論社、科学評論社、株式会社三京房、塩野義製薬株式会社、株式会社スペクトラテック、住友ファーマ株式会社、大日本住友製薬株式会社、株式会社ツムラ、ドクターズ株式会社、株式会社中山書店、日本イーライリリー株式会社、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、Meiji Seikaファルマ株式会社、持田製薬株式会社、吉富薬品株式会社、ルンドベック・ジャパン株式会社

④学会誌 広告
株式会社医学書院、ヴィアトリス製薬株式会社、エーザイ株式会社、大塚製薬株式会社、シスメックス株式会社、住友ファーマ株式会社、大日本住友製薬株式会社、鳥居薬品株式会社、株式会社中山書店、日本イーライリリー株式会社、日本メジフィジックス株式会社、株式会社メディカル・サイエンス・インターナシ、持田製薬株式会社

2)「こころの不調や病気と妊娠・出産のガイド(一般の方向け)」作成に関連して、資金を提供した企業名

なし

日本産科婦人科学会企業・法人組織、営利を目的とする団体からの資金提供状況
(対象期間は2021年1月1日~2023年12月31日)

1)日本産科婦人科学会への企業・法人組織、営利を目的とする団体からの資金提供状況

なし

2)「こころの不調や病気と妊娠・出産のガイド(一般の方向け)」作成に関連して、資金を提供した企業名

なし