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コラム 精神科医が考えていること

『立場が替われば』

横浜市こころの健康相談センター
白川 教人

 横浜市役所という行政の一部門である精神保健福祉センターの精神科医になって早6年半が過ぎました。病院勤めのうちは、一人ひとりの患者さんに誠実に向き合って臨床をしていればよかったし、組織なら病院のことを考えて仕事をすればよかったのです。臨床から離れ横浜市に入職したら個別に患者さんと向き合うことは、ほとんどなくなり、相手は365万人を超える横浜市民のための精神保健福祉施策を進める立場に変わりました。ご承知のこととは思いますが、精神保健福祉センターは、住民の心の健康の保持増進及び精神障害者の福祉の推進という2つの大きな役割を持っています。精神疾患が5大疾病に入ろうとする今、保健所と協力する形で益々センターの役割は重要になっていくことと思われます。
 こんなことを書いていると臨床とかけ離れた別の世界と思われがちですが、臨床の先生方のご協力を頂いてうつ病対策など様々な普及啓発活動も行っています。また、濃厚な接点もあります。市民の精神保健福祉手帳の診断書は、全て目を通し判定しています。自立支援医療の診断書も同様です。これらのものを見ていると、臨床をしている精神科医等の好ましくない診療姿勢や、時にはうそではと思える抗不安薬の多量多剤の処方を見受けたりもします。診断書に不備・理解できない記載があれば是正をお願いすることもありますし、多量多剤で問題が聞こえれば当然、法に準じて先生方にお会いすることもあります。
 また市役所の精神保健福祉担当部門に協力し精神科病院実地指導・審査にも出向きます。病院勤務の先生方とお会いし、精神保健福祉法の遵守の観点から必要に応じて指導をすることになります。臨床をしていたころは当然のごとく指導される立場であり年に1度の実地指導はうっとうしいなと思いながら対応していました。今は、市民の方々に精神保健福祉法が遵守された精神医療が提供され、人権が守られた精神科医療、また、安全安心な精神科医療が提供されるように市内31病院の監査に当たっています。こんな役割をする精神科医も必要だよねと思いながら憎まれ役をかうかたちで仕事をしています。
 話は、変わりますが、自殺対策や今年の東日本大震災の災害派遣を経験して、行政と精神科臨床医の協力体制はこれまで以上に強い連携をもって広い視点での対策を実施して行くことが必要不可欠であると感じる今日この頃です。行政は多様なシステムづくりをしていきますので、みなさま方のご協力をお願いいたします。