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コラム 精神科医が考えていること

『一精神科医が考えていること
-心の老化を防ぐには-』

評議員
山口 成良

 過日、地域の高齢学級と、市民の健康教室から「前向きに生きるために―心の老化を防ぐには―」という主旨で講演して欲しいとの話しがあった。講演のあと、役にたったとの好評をいただいた。自画自賛する訳ではないが、その時の講演のエッセンスを述べて、ご批判をいただきたい。

 年齢の増加に伴う変化は加齢といわれ、老年期以後の状態は老化といわれる。ストレーラーによると、老化現象に共通するものとして1)普遍性―生あるものすべてに起こる、2)内在性―誕生・成長・死と同様に個体に内在する、3)進行性―老化は変化して行く過程としてとらえられる、4)有害性―老化の結果、機能の低下がある。結論として、このような生理的な老化現象を防ぐことは出来ない。
では心の老化はあるのだろうか。ニューヨーク大学医学部神経学教授のゴールドバーグは「老いて賢くなる脳」という本の中で、経験による判断力が蓄積されるので、老いるにつれて知恵ある賢者に一歩近づくことが可能だ、と述べている。また、ジョージ・ワシントン大学のコーヘン教授は「創造的な年齢―人生の後半における人間の可能性を目覚めさせよう」という本をあらわして、その中に世界的に優れた業績をのこした人達の多くが人生の後半から仕事にとりかかれたことを多くの例をあげて説明している。浦澤喜一は、心の老いを防ぐには、①体の健康を維持する、②夫婦ともどもに生きる、③おおぜいで生活する、④自分の貯蓄を持つ、⑤社会活動を続ける、⑥学習を続ける、⑦趣味を持つ、⑧社会奉仕を心がける、ことが大事だという。体の健康を維持するには、ベロックとブレスロウのいう7つの生活習慣を守ることが必要である。すなわち、①適正な睡眠時間(7~8時間)をとる、②喫煙しない、③適正体重を維持する、④過度の飲酒をしない、⑤定期的に運動をする、⑥朝食を毎日食べる、⑦間食をしない、ことである。
では、次に前向きに生きるためには、1)生きているしあわせを感ずる、2)生きているはりあいがあることが大事であろう。例えば高山に登った朝、御来光を見た時又、夕暮れ時、海岸で水平線にしずむ太陽を見た時、その美しさに生きていてよかったという感じを誰でもするのではないだろうか。また、生きているはりあいをもつには①自分の生存はだれのために必要であるか、②自分の固有の目標を持って生きて行くことが必要ではなかろうか。その良い例はアウシュヴィッツ強制収容所から生還した精神科医フランクルの書いた「死と愛」の中に、明日にもガス室の中に送りこまれる人達に「生きがい」を与えている例がいくつか書かれている。
私は今も精神科病院で後期高齢者であるにもかかわらず、月曜日から土曜日まで毎日外来診察にあたっているが、私が若い医師とともに仕事をする心がけとして、1.自分使いになるべし、2.年の功だけの気配りをすべし、3.人一倍の努力をすべし、4.現役の時と変わらないリズムの生活をすべし、5.新しい事に挑戦すべし と心がけている。

 以上の話が読者に少しでも参考になれば非常に幸いだと思います。