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コラム 精神科医が考えていること

『近頃のうつ病とリワーク』

医療法人社団ラルゴ 三木メンタルクリニック
理事長 三木 和平

 最近わが国では、長期休職者の半数以上がうつ病・うつ状態といわれており、直接・間接を含めた経済損失は莫大なものがある。うつ病の多様化等も言われてきているが、仕事は行けないけれど、遊びはできるという人を「新型うつ病」と言われるが、「それって本当に病気なの?」と思うのはむしろ当然な心理であろう。しかし長期休職となっている人や、復職してもすぐに休職を繰り返す人に対して何らかの手立てが必要なのもまた事実である。所謂「新型うつ病」は、従来のメランコリー型と異なり、人格的に未熟、社会人としての自覚に欠ける等の指摘があるが、ある意味では、彼らもまたゆとり教育の犠牲者と言えるかもしれない。彼らは頑張るな、無理するなと言われ続けて育ってきているのであるから、社会人となって現実とのギャップに直面して逃避していると言うこともできる。メランコリー型とは異なり、休養と投薬だけではしばしば症状の遷延化を引き起こす。彼らを見ていて感じるのは、コミュニケーション能力の低さ、問題解決技能の不足である。本来であれば家庭や学校で身につけるべき技能が不足している。職場のメンタルヘルス対策、特に一次予防が重要であるが、それ以前にコミュニケーションスキルのトレーニングが必要であろう。本来であれば家庭や学校で行われるべきであるが、新入社員の教育研修などでもSST(social skills training:社会技能訓練)等を導入して徹底して行う必要があるのではないだろうか。
 実際に長期に休んでしまっている人や、再発を繰り返す人に対しては、グループでのリワークが有効である。我々が実施しているリワークでは、少人数クローズドグループで行っており、症状チェックシートを用いた振り返り、認知行動療法、SST、リラクゼーション、心理教育、復職プラン等を行っている。まず生活リズムの立て直しを図り、グループの中で仲間意識が芽生えたり、自己開示が進み、受容感が得られてくる。心理教育では、うつ病の症状や治療、再発予防について学習する。認知の偏りやコミュニケーションスキルの不足には、CBT(cognitive behavior therapy:認知行動療法) やSSTを行い、考え方を修正したりスキルを獲得していく。復職が近づいて来た時の現実的不安に対してはアクションプランとしての復職プランや復職面接を想定したSSTが有効である。統合失調症主体のデイケアとは異なり、医療機関が行う、うつ病のリワークでは時に負荷をかけたり、ダイナミックなプログラムが要求され、当然スタッフに要求される水準も高いものとなる。
 時代や社会の変化とともに、うつ病の表現型も変化してきているのであろう。思えばメランコリー親和型性格も高度成長時代や、日本型の年功序列賃金や終身雇用制度に適合した性格であった。能力主義や成果主義、プロジェクト形式の導入等や、過酷なリストラの断行、非正規雇用の増加などによる雇用格差の拡大など社会は大きな変動を見せており、我々精神科医にも変化が求められているのだと思う。