統合失調症をはじめとして、精神障害では患者のQOLを考えた、
より副作用が少ない薬物の選択が行われるようになり、これまでの多剤併用療法の弊害を避け、
単剤治療が常識となりつつあり、奏効しているように思える。
最近の報告では、投与される平均薬剤数に加え、等価換算した投与量も減ってきているようである。
適正な薬物使用が行われるようになってきているのは、精神薬理学の啓発が進んできているものと考えられ、喜ばしいことである。
薬物療法では、同じ薬物を投与しているにもかかわらず、治療を受ける患者によって、
効果においても副作用においても、非常に個人差が大きいことがよく知られている。
この個人差には、体内での薬物動態(pharmacokinetics)、
脳血液関門の通過(blood brain barrierでのactive transport)、標的臓器での反応性(pharmacodynamics)が主に関わる。
向精神薬は、様々な経路で投与されたのち、吸収され、血液を循環する。
多くの薬物は肝臓で代謝され、それぞれ固有の半減期に従って定常状態となる。
薬物には腎臓排泄型もあり、代謝には腎臓も大きな役割を果たす。
そして、向精神薬そのもの、もしくは活性代謝産物の一部が脳血液関門を通過し、
標的臓器である中枢神経系で作用する。わかりきったことではあるが、
向精神薬の評価を行うに当たって、この薬物輸送は常に考えておく必要がある。
向精神薬の投与により、精神症状が改善した場合には問題となりにくいものの、
効果が乏しかった場合や副作用を示した場合には、
標的臓器である中枢神経系の反応性以外の機序の関与についても検討し、
より適切な薬物療法を選択する必要があろう。向精神薬の投与において、
身体疾患のために向精神薬以外の薬物投与を受けている場合、
薬物相互作用を検討するべきで、消化管での吸収障害や肝障害、
腎障害があれば、体内での薬物動態が変わっていることも意識する必要がある。
脳血液関門では、いくつかの輸送系が働いているが、
これらには薬物や個人間での差が認められる。
脳血管障害などでは脳血液関門が破壊され、
通常とは異なった反応が出現する可能性も考えなければならない。
そして、最後に患者個々の向精神薬の中枢神経系での反応性をみることとなる。最近、向精神薬に限らず、
十分な説明により同意のもとでの薬物療法、すなわち、
アドヒアランスの重要性が取り上げられているが、
患者が向精神薬を服用するかどうかは薬物療法での大きな問題で、
それには向精神薬の服用回数や飲み心地も関係しよう。
作用が十分あり、一方で副作用の少ない新規向精神薬が多く誕生してきている現在、
我々は、どうしても向精神薬の効果を、
中枢神経系の受容体やトランスポーターとの結合の結果として評価しがちであるが、
脳にたどり着くまでの向精神薬の動きについても、いまさらながらではあるが、考えておく必要がある。













