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コラム 精神科医が考えていること

『納得のいく医療』

医療法人 優なぎ会 雁の巣病院
理事長・院長  熊谷 雅之

 昭和31年開設の当院の理念は、『納得のいく医療 患者・家族の皆様、 そして私たちが納得のいく医療の実践に努めます』というものである。 この理念を掲げたのは、開設50周年を迎え、先代の父から私が継承したときであった。 実は、この順番に私はこだわっている。 私は、内科を6年間研修後、精神科に転向したが、内科に限らず、 精神科でも同様の思いをいつも持っていた。それは、医療の『主体』は、一体、 誰なのだろうということである。私が約20数年間見てきた医療は、どう考えても、 主体は、患者本人ではなかったように思えて仕方がない。 私は、まずは患者本人が納得のいく医療、そして家族が納得のいく医療、 最後に我々医療スタッフが納得のいく医療の順番でありたいと願っている。 そして、我々スタッフが行う医療が最高水準であれば、申し分ないのではないだろうか。 なぜ敢えて今ここで、このような話をするのか?  それは、数年前から積極的に精神科救急医療に関わるようになって、さらにこの思いを強めたからである。
福岡県では、輪番制精神科救急システムを構築し、 福岡県精神科病院協会(以下、福精協)に業務委託している。 福精協は47都道府県の中で最大規模の精神科病院協会だが、 残念なことに行っている精神科救急医療は、お粗末なものである。 このようなことを申し上げると諸先輩方から厳しくお叱りを受けるかもしれないが、 どこの馬の骨かもわからない薄学無知の若輩者が、のたまっていると笑っていただいても結構である。
その当県の救急システムは、『精神疾患の急発・急変により速やかな医療を必要とする者に対し、 迅速かつ適切な医療及び保護を行うことを目的とし、対象者は、 精神障害のために自傷他害の虞があると推定される者と自傷他害の虞はないが、速やかな精神科受診が必要とされる者』というものである。
最近、精神科救急入院料(いわゆるスーパー救急)が創設され、いくつかの精神科病院がその認可を受けている。 当院もその一つだが、これを維持するためにはハードルがあり、 そのために措置、緊急措置、応急入院なら受けるが、その他のポイントにならない入院形態はお断りだとか、 受診前3ヶ月以内に他の精神科病院に入院歴がある患者はポイントとならないためにお断りというようなことを 平気で行っている病院があるように聞いている。病院経営上の理由だということは、 理解できないことはないが、医療に関わる者として、恥ずかしい、 悲しいことであると憂慮するのは、私だけだろうか? 患者・家族は入院形態に関係なく、 困っているから、苦しいから、助けを求めて医療機関に頼るのではないだろうか?  もし、自院で対応できないのであれば、少なくとも、 相談に乗りどこかを紹介してあげるくらいの思いやりがあってもいいのではないかと腹立たしく思ってしまう。

『納得のいく医療』に向かって、これからも誠心誠意、邁進したい。