ホーム >  コラム >  教育学部に異動して・・

コラム 精神科医が考えていること

『教育学部に異動して・・』

島根大学教育学部心理・発達臨床講座
稲垣 卓司

個人的なことであるが、私は一昨年の秋から大学内で医学部(精神医学講座)から教育学部 (心理・発達臨床講座(特別支援教育専攻))に異動した。 大学の精神科で臨床や教育に携わっていた経験とは全く違う経験をし、戸惑いながらも1年が経過した。 大学に所属する精神科医としての立場でその体験談(感想)を記してみたい。
まずは講義が違った。医学部ではチュートリアル教育で前任の精神科では3週間の間に講義をまとめてしていた (5 年生対象:症例を中心に関連した内容)。私の場合、3-4コマの担当であった。 一方、教育学部では一つの科目を15 回(コマ)に渡って毎週90 分ずつ講義する。 担当する科目は複数あるが、例えば私が担当の「病弱児心理・病理研究」 という科目について、それに関連する内容をひとつひとつ講義する。病弱をきたす疾患、 病弱児の心理、学校保健、医療との連携などである。学生が1 クラス30 人程度なので、 直接質問したり、板書させたり、講義についてのレポートを提出させたり双方向でやり取りができる。 医学部の時の講義は私の場合、どちらかといえば一方向であったように思う。
次に実習の違い。 もちろんめざす職業が違うので内容は異なるのだが、教育実習では事前の協議、授業実践計画と振り返りなど、 教職への自覚とスキルアップを目指していくため、個別に担当の教官が指導する体制である。 医学部では、自分の臨床も忙しく、ポリクリ学生の実習について私自身、個別に時間をかけての十分な指導はできなかったと思う。
次に「ゼミ」といわれるもの。医学部教育にはない教育方法と思う。 初め「ゼミ」って何をすればよいのか戸惑った。 特別支援教育専攻の学生3人が3年生後半から私の「ゼミ」に配属になった。 主として卒業論文を完成させることを念頭においての「教育システム」のようである。 要は何をしてもよい。担当教官にまかされている。 学生と一緒に実験したり、フィールドワークをしたり、文献読んだり、その学生が研究テーマを深めるものであればよいのである。 よって、学生は担当教官の研究室にしょっちゅう出入りすることになる。 そのため、ある意味その教官の色に「染まる」ものだと思った。 私も学生3人と自分たちがどんなことを考えていたり、 どのような進路を目指しているのか、ある程度個人的なことも話せる仲になる感じであった。 先日卒業していったが、どんな「色」に染まったことやらと思う。
最後に就職のこと。 医学部のときは「卒業・国家試験に合格、即就職」の構図であったので、 正直のところ医学部生の就職について心配することはなかった。 むしろ地元大学に残りできれば精神科に入局して欲しいことが第一に考えることであったと思う。 しかし、教育学部の学生の場合、全国的に教員採用枠が少なく、卒業して1年目に採用される学生は半分にも満たない。 たいていは講師をしながら教員採用試験に再度挑戦していく。 また教育学部を卒業しても教員にならずに一般企業や公務員に就職を希望する学生もいる。 教育実習をしながら企業訪問したり、採用試験を受ける。 就職の厳しさを実感した次第である。
以上、感想を記した。私自身、医学部から離れてみて、医学部の時より学生との距離感が近くなり、関わりも深くなった印象である。 こうしてみると、医学部の学生にももう少し関われたかなと思うところである。