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コラム 精神科医が考えていること

『研修医教育から思うこと』

京都第二赤十字病院
多賀 千明

 平成16年4月に始まった医師の新臨床研修制度に基づき,これまで120人以上の研修医教育に携わってきました。 しかし当院は精神科以外の科に進んだ研修医がほとんどで,6年間で精神科の道を選んだのは4人しかいません。 これは,救命救急センターを抱え,急性期病院としての役割があり,精神科は外来のみという, 本院の特性を理解した研修医が集結した結果かもしれません。 そのなかで,研修2年目の1ヶ月間,精神科研修を行ってきました。2週間は当院内で, 午前中は外来研修を,午後は病棟でコンサルテーション・リエゾンという他科入院中の患者さんの精神科的治療を行います。 また2週間は,単科精神科病院での研修を行ないます。 高齢化が進んだことや,がん治療成績が少しずつ進歩していることもあり, 認知症やせん妄への対応,精神療法的アプローチへの依頼は,各科からあります。多様化した精神科医療を, 研修医が総合病院と単科精神科病院で経験する意義は大きいと考えています。 実際,精神科研修過程を経た医師の精神疾患患者さんに対する対応は,以前の研修を経なかった医師と違い, 随所にその成果が感じられます。例えば,救命救急センター医師や当直医師は,精神疾患患者さんが来られたときに適切な対応をしてくれます。  また,病棟では高齢者や術後せん妄状態に対し,処方内容や看護師への指示が以前より適切に成されるようになり,知識の向上を痛感しています。
自殺者数が年間3万人以上という日本の現状から,すべての医師が自殺防止に努めなければなりません。 そのために精神疾患は頻度の高い疾患であるという認識を持たねばならず,研修医時代に精神科の履修をすることは必須であると考えています。
 平成22年度採用研修医から,精神科は必修科目ではなく選択必修科目となりました。 しかし、6年間にわたる私の研修医教育経験から,これは決して日本の将来のためにならず, またよく言われるように、「希望する科でもない精神科を回ること」は決して無駄な時間ではないと考えています。 特に将来開業医を目指すものは,精神疾患の鑑別や即座の対応のための知識が不可欠です。
 さらに精神科医のいない病院や地域で働く場合には,精神科履修の重要性がますます強調されると思います。 精神科の知識や考え方は,どの科の医師にも欠かせません。何十年以上にも及ぶ長い医師生活のなかで, 精神科を研修できるのは研修医時代しかなく,それを経たものは医師として大きな財産となるはずです。 (自身を含めた)精神科指導医の質向上や,指導医が研修医に行う教育時間確保などの問題があるとは言え, (私見ですが)精神科を必修科目に戻すことが,臨床研修制度の当初の基本的な考え方であった 「医師としての人格の涵養,プライマリー・ケアへの基本的な診療能力の修得」につながると信じています。