ホーム >  コラム >  今日のNPO(非営利活動)の隆盛について

コラム 精神科医が考えていること

『今日のNPO(非営利活動)の隆盛について』

医療法人 優なぎ会 雁の巣病院
笠原 洋勇

 半世紀ぐらい前であったころ、筆者はある雑誌の記事にでくわした。 米国で癌治療を受けた日本人の病院退院後の米国の自宅での療養生活についての記事であった。 米国の自宅での療養生活を続けた際に、身の周りを手助けするボランティアが次々に現れ、 会ったこともない人が時間を追って付き添ってくれたとのことであり、ボランティアとして訪問してくれる人は、 仕事を持っているにもかかわらず、その傍ら、付き添って手助けをしてくれたとのことであった。 米国社会のこの当時の地域での共助行動の実践を知ることができ、筆者にはおおきな驚きであった。 わが国においてもボランティア活動については、欧米とは異なる方法で行われてきた、 つまり地縁、血縁の協力であり、見ず知らずの人が訪問することはなかった。
 今日は時代も変わり手法も変わり、公助、自助ではかなわぬ部分を、NPO活動が網羅するようになり、かなり盛んになった。 筆者の知る範囲では、各施設に相当数の利用者がおり、利用者のために役立っており、 実際に救われている利用者も少なくない。電話による相談で救われる人もいれば、定期的に通うことによって、 心の支えを得ている人も、また社会復帰に成功する人も少なくない。 自宅のなかで解決できない問題を、経験豊かな関係者が中心となり、利用者の悩みを解決する環境は貴重である。 就労にあたっての人間関係や不安を支援し、自信のぐらつきを支えてくれる環境は大きい役割を持っている。 また生活のために経済的負担、育児負担、育児不安、家事負担、家事不安などの生活支援をいかに行うかが重要である。 就労にエネルギーが奪われ、家庭を守れない人への支援も、忘れてはならない問題である。 助成金の種類や援助の受け方に精通した人が相談役になり、経済的不安を持つ人の相談に乗りそれを考え、 助成の仕組みの利用方法を共に検討することができれば、重要な地域支援となる。 そしてこれらの支援を生かすために個々のケースの特徴にあわせて上記の方法を組み合わせて対応ができれば真の支援といえる。 上述した米国におけるボランティア活動は、歴史的にみれば過渡期であったが、 最もボランティア活動が盛んな時期であり、NPO活動の盛んになった今日から見ればまだまだ未熟な段階であるが、 今日のNPO活動の根底にあるものは、ボランティア活動精神が出発であるのは間違いない。 上述した米国のボランティア活動は、今日では進歩発展しNPO・NGOとして支援環境が変わり社会に定着をみている。 このように仕組みは変ったといっても形態の変化であって、その本態はボランティア活動である。 わが国の組織としてはNPOとして位置付けられているが、基本はボランティア精神である。 ボランティア行為は、人間的行為であり、人を思い、人を大切にする行為であり、 人間愛に基づく行為であることをわすれてはならない。ボランティアに要求されるものは、 自発性、主体性、利他性、公共性、公益性、連帯性、社会性、継続性、福祉性であるが、本当に必要なものは利用者への心からの愛情であり、信頼である。