数年前より児童外来を担当するようになり、こどもの発達障害の診療にあたる機会が増えました。
特に、広汎性発達障害と呼ばれる社会性、コミュニケーション能力、興味・活動の拡がり、
などに一定の困難をきたすこども達の場合、本人の適応の苦労もさることながら親御さん達の不安も大変なものがあります。
今でこそ、中核的なアスペルガー症候群に光が当てられるようになり、発達障害者支援法が制定され、特別支援教育が推進され始めましたが、学校を含めた社会的環境において、
かれらを支えるサポート・システムが十分に制度に追いついている現状とはいえません。
それでも、マスメディアの情報提供や本障害への一般的関心の高まりにより、比較的はっきりした病像を呈する場合には低年齢で受診できるケースも多くなってきました。
一方、発達障害が軽度にとどまり知的水準が高い場合には、発達障害の問題が隠れてしまい、
遅ればせながら高校・大学の在学中や社会人になった後に、同世代との対人関係形成の困難さや学校・職場への不適応に直面して、
医療保健機関を訪れる方々も増えています。また、精神科・心療内科外来でよくみられる不安障害やうつ病の中で、
通常の治療がうまくいかない症例の中には、あらためて発達障害の視点を持って生活歴の再聴取や認知・
行動パターンを見直すと、度重なる適応への挫折が連続する理由が見えてくることも少なくありません。
しかしながら、発達障害を有する成人症例の相談や治療に応じて、
具体的な対応を提供できる医療保健機関は決して多くはなく、成人の発達障害外来を掲げる専門機関も限られています。
私事で恐縮ですが、こどもの発達障害を見慣れてから、ようやく成人の発達障害に対するアンテナができた自身の経験を踏まえますと、
この分野は医療保健の専門家といえども、一定の症例を引き続いてフォローアップする機会に恵まれないと、
隠れた発達障害を見逃したり、他の併存障害に目を奪われてしまいやすいと、つくづく考えさせられます。
しかも、「診断はできても対応はできない」と、診断だけでおしまいになってしまえば、
当事者の方々にも判然としない気持ちだけが残ることでしょう。濃淡の差はあれ、決して有病率の低くない発達障害は、
第3の「ありふれた障害」として、精神科医が必須で対応すべき疾患になってきたというのが最近の印象です。
当事者の方々にとって、第1段階で障害の特性を理解・受容する過程が不可欠としても、
かれらが切実に求めていることは、不適応事態に遭遇して認知を修正したり内省を深めたりすることよりも、
周囲の反応状況を適切に解釈してもらい、具体的な適応的対応を指示してもらうことであるような気がします。
実際に望ましい行動をアドバイスされ、それに基づいた経験を積み重ねていくうちに、少しずつ適応感や自信を深めていくかれらをみていると、
やはり一定の期間かれらとともに伴走できるサポーターが必要であると実感します。その実践のためのノウハウが蓄積されるとともに、
非医療関係者にも理解・対応ができる層が拡大していくことを願ってやみません。













