まず、ぜひ理解していただきたいのは、うつ状態とうつ病の違いです。
簡単に申しますと、うつ状態は病気ではなく広く心の状態を示す言葉で、その範囲は正常から異常まであるのに対し、
うつ病は病名、つまり病気を意味します。いい換えると、病的なうつ状態で、しかも重症のものだけがうつ病なのです。
では、正常なうつ状態とは何なのでしょうか。例えば、配偶者や親戚、あるいは非常に親密にされていた方が亡くなった時の心の状態を想像してみて下さい。
当然、気分は落ち込み、最悪で、希望の明かりなどなく、生きる気力もなくし、将来の事など考えられない、典型的なうつ状態となるでしょう。
逆に、平然としていられる方はほとんどいないはずです。
このうつ状態は「死別反応(=愛する人を亡くした後の反応)」といって、人間であれば誰にでも起こる通常の“悲嘆反応”です。
このように過度のストレス状況下でほとんどの方に生じるうつ状態は、病気ではありません。
ただし、「死別反応」が2か月以上続いている場合にはうつ病への移行も考えて専門医の診察が必要です。
次に、病的なうつ状態はどういうものでしょうか。その代表であるうつ病は専門医の間では「大うつ病性障害」といいます。
その診断基準を短くまとめますと、まず、①抑うつ気分(悲しい、淋しい)や、②興味または喜びの喪失(通常楽しめていたものが楽しめない)の少なくとも1つを認めること、
そして、③食欲や体重変化(減少または増加)、④睡眠障害(不眠・過眠)、⑤焦燥(イライラ)または制止(考えや動作が停滞してしまう)、⑥
疲労感や気力減退(やる気が出ない)、⑦無価値観や過剰な罪責感(すべて自分が悪い)、⑧思考力・集中力の低下、⑨
自殺念慮(死にたいという強い気持ち)や自殺企図(自殺未遂行動)の全9項目のうち、
5つ以上が2週間以上、ほとんど1日中、ほとんど毎日みられることが必要で、
さらにこれらの症状によって社会的あるいは職業的な機能が持続的に著しく障害される
ことが証明されなければなりません。したがって、平日は憂うつで会社に行けないが休日には友人と気晴らしができる若者は、
大うつ病性障害ではありません。では、病的なうつ状態がうつ病よりも軽いが2週間以上ずっと継続し、
社会的な機能障害が著しいケースはどうでしょうか。これは「小うつ病性障害」といいます。
本格的なうつ病に移行する場合もあるので治療は必要です。また、「適応障害」という病名があります。
これは、明確なストレス因子(失職、離婚、過重労働など)に反応して、
その始まりから3か月以内に情緒面または行動面の様々な症状が出現し、そのストレス因子がなくなると症状が必ず消失するものです。
例えば、情緒面でうつ状態を呈すれば、「適応障害、抑うつ気分を伴うもの」と診断されます。
そして、この時の病的なうつ状態はうつ病の基準を満たすほど重症ではないことがうつ病との鑑別点です。
以上のように、『うつ状態=うつ病』ではないということが重要です。













